1 『星の心臓』への旅路
俺たちは『星の心臓』を目指して旅を続けていた。
具体的な場所は不明だけど、方角だけはローザの探索魔法で突き止めてあるから、まずその方向に進んでいる。
定期的にローザに探索魔法をかけ直してもらい、『星の心臓』が存在する地点の詳細が分かれば、道のりを修正する――という方針だ。
「まあ、方角さえあっていれば、いずれはたどり着くだろう」
ヴィクターさんが言った。
「私はいつもそうやって進んでいる」
そうやって進んで、いつも道に迷ってますよね、ヴィクターさん……。
「またこの前みたいな連中が襲ってきて戦闘になるの?」
たずねたのはミラベルだ。
「分からない。俺としては戦闘は避けたい。もともと戦いに行くわけじゃないからな」
首を左右に振る俺。
「けど降りかかる火の粉は払うしかないな」
「ですよね」
と、バーナードさんとラス。
「――その火の粉が来たみたいよ」
ローザが言った。
俺たちはハッとして足を止める。
また、この間みたいな『天の遺産』保持者の誰かなのか!?
身構えるが、前方から現れたのは予想外の存在だった。
「貴様がレイン・ガーランドか」
黒衣の、男。
ばさり、とその背から翼が生える。
人間じゃない。
こいつは――。
「魔族……?」
以前、俺はA級冒険者の昇格クエストで魔族と戦ったことがある。
それ以来、魔族と出会ったことはないんだけど――。
こいつからは似たような気配を感じる。
人間ではありえない、全身がどうしようもなくざわつくような禍々しい気配。
「お前たちの分類でいえば高位魔族、ということになるのかな? 俺の名はヅィレドゥルゾ」
「舌噛みそうな名前」
ミラベルがツッコミを入れた。
「き、貴様、誇り高き我が名を愚弄するか!」
怒りの声を上げる高位魔族ヅィレドゥルゾ。
……まあ、俺もミラベルと同じ感想を抱いたんだけど。
「その魔族が、何の用だ」
俺はヅィレドゥルゾを見据えた。
「『星の心臓』にたどり着いた者は大いなる力を得られる――魔界の古い伝説だ」
魔族が告げる。
こいつも『星の心臓』を目指している――?
「その力を得ることができれば――次期魔王は、この俺になるだろう」