6 通信、そして
「通信用の道具って持ってないのか」
俺は三人にたずねた。
「魔導通信機ならあるぞ」
差し出すジグ。
「こいつに強化ポイントを注げば性能がアップする。それを使って外界に呼び掛ける――っていうのは、どうだろう」
「なるほど、君の付与魔法か」
「ただ、俺が強化できるのは『性能』だけだ。『耐久性』まで強化できるわけじゃない。だから……最悪の場合、通信機は壊れるかもしれない」
俺が説明する。
「実際、銅の剣とかを強化したら、簡単に壊れちゃったからな」
「それって重大な弱点ですよね? 言っていいんですか」
と、フローラ。
「まずいのかもしれないけど、今は協力関係だ」
「……素直な人ですね」
言いながら、フローラは小さく笑った。
「でも、嫌いじゃありませんわ、あなたみたいな人」
「じゃあ、さっそく強化ポイントを付与するよ」
手始めに『+5000』ほど注いだ。
ジグに装置の使い方を教わり、作動させる。
「みんな、聞こえるか?」
装置に向かって呼びかけた。
しーん。
返答なし。
「駄目か」
よし、もっと強化していくぞ。
『+5000』ずつ強化ポイントを注ぎこみ、合計で『+20000』になったとき、
「……レイン? レインか!?」
バーナードさんの声が聞こえた。
――俺は現在の状況と作戦内容を伝えた。
「じゃあ、そっちから一斉に攻撃してもらえますか? 俺たちも内側から攻撃します」
言ったとたん、
ばきんっ……!
音を立てて装置が真っ二つに割れた。
「限界だったか……」
強化ポイントの量を増やしたため、耐久性の限界を迎えたのだ。
「僕の通信装置が……」
ジグは俺の方を恨みがましくにらんでいる。
「わ、悪い……」
「高かったんだぞ」
「そうなのか……」
「何言ってるの。レインのおかげで連絡が取れたんだし、ここから出られる可能性も生まれたんだぞ」
と、リサ。
「ちゃんとレインにお礼を言うべきだぞ。それとさっきの態度を謝罪した方がいい」
「ぼ、僕がこいつにか!?」
「できるよね、ジグ?」
「ぐぬぬぬ」
どうやらリサに言われると、かなり断りづらいらしい。
ジグはなおも葛藤していたようだが、
「助かった。それと態度が悪くて済まなかった」
案外素直な態度で礼と謝罪をしてきた。
「いや、いいんだ。こっちこそ装置を壊して悪かった」
「まあ、それは不可抗力だしな」
ふん、と鼻を鳴らすジグ。
ごうんっ!
その時、『強化防壁』がわずかに揺らいだ。
「外からの攻撃が始まったみたいですね」
フローラが言った。
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