4 そのころ、『星帝の盾』で
SIDE リリィ
その日、冒険者ギルド『星帝の盾』を訪れたのは、ウラリス王国の貴族令嬢にして勇者候補――マルチナ・ジーラだった。
リリィは後輩のマーガレットとともに、彼女とロビーで話していた。
「あたしたちを訪ねてきたのは、どういう要件でしょうか」
リリィがまっすぐにマルチナを見つめる。
「俺たちだって暇じゃないんだぜ? それ相応の理由だよな」
勝気に告げるマーガレット。
「もちろん。君たち二人の力が必要だからよ」
マルチナが明るく笑った。
笑顔だが、目だけは笑っていない。
瞳に真剣な光が宿っていた。
「光竜王を倒して、世界には平和が戻ったはずです。この世界から脅威は去ったと……違いますか?」
「そうだね。光竜王の件は片付いた。けど――」
マルチナがリリィを見つめ返した。
「世界の脅威は……何も光竜王だけじゃないよ」
「……!」
リリィはハッとなった。
思い出していた。
かつて光竜王と戦った際に現れた二人組――ディータとシリルのことを。
マルチナが説明を始めた。
レインと同じく超常の力を持つ集団――。
ウラリス王国はディータとシリルの調査を行い、その集団の存在をつかんだのだという。
もっとも、その詳細などはいっさいの謎だそうだが。
「レイン様が大きな戦いに巻きこまれる……そういうことなんですね、マルチナさん?」
リリィは険しい表情でマルチナを見据えた。
「だね。心配でしょ?」
「あの方の強さは承知していますが……相手もまた超常の力を持っているなら」
リリィがごくりと喉を鳴らした。
「あたしも――力になりたいです」
「ま、いちおう戦友だしな。俺も力を貸すぜ」
と、マーガレット。
「何よりも、リリィ先輩がやる気になってるなら、俺も行かなきゃな」
「だね。あたしもだよ」
マルチナがうなずいた。
「レインくんと一緒に戦いたい。相手は世界の敵じゃないから、これは勇者としてじゃなく、マルチナ・ジーラ一個人として、だね」
「世界の敵じゃないから、か。だけど、もしかしたら――」
マルチナが何かを思いついたように言った。
「彼らこそが世界の敵、なのかもしれないね……」
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