3 脱出に向けて2
さらに五度。
『強化防壁』の数か所に亀裂が入る。
が、全体から見ればわずかな傷にすぎない。
この方法で『強化防壁』に決定的なダメージを与え、壊すのは難しそうだった。
「内側からだけでは、こじ開けるのは難しいかもしれません」
フローラが周囲の壁をこんこんと叩いた。
「『防壁』は一方向からの攻撃には強いんですが、両面から攻撃を受けるとけっこう脆いんです」
「お、おい、自分の能力の弱点を話していいのか?」
ジグが戸惑いの声をもらした。
「レインは当然だけど、僕らだっていずれ君の敵になるんだぞ」
「今は脱出が最優先ですし」
フローラが微笑んだ。
「話を戻しますが……こういうものの定番として『内と外から同時に力を加えれば破壊できる』ケースかもしれませんね」
「内と外から……」
言われてハッと気づく。
「じゃあ、外にいる俺の仲間たちに連絡すれば、いけるかもしれないな」
「連絡できれば、だろ」
ツッコんだのはジグだ。
「外界にこっちの意思を伝える手段がない」
「何かそういう魔法とかスキルとか……持ってる人はいないのか? 俺は付与魔術師しか使えないから無理だ」
「自分の手の内を簡単にさらす気はないよ」
ジグがふんと鼻を鳴らした。
「君、僕らが敵同士だって分かってる? 『自分は付与魔術しか使えません』なんて情報、なんであっさりバラすかなぁ」
「いや、今は協力関係だし……」
俺は笑った。
「フローラだって自分の能力の弱点を話しただろ。なら俺だって」
「はは、フローラと同じでお人好しさんだ」
リサが微笑んだ。
「あたし、あんたのことは嫌いじゃないぞ」
「どうも」
「お、おい、リサ――」
「あれ、ヤキモチ焼いてる、ジグ?」
慌てたようなジグに、リサが笑みを深くした。
どこか小悪魔的な笑顔である。
「えっ、何、あの二人ってそういう関係なのか?」
「あたくしにはなんとも」
思わずたずねるとフローラが無表情に答えた。
「ただ、前々から怪しいとは思っていました」
その口元が緩んでいる。
「実は興味津々だったとか?」
「それは、まあ……コイバナとあらば」
フローラの目が輝いていた。
こういうキャラなのか。
戦っていたときは見えなかった一面がそれぞれ見えて、ほっこりするな。
……いや、ほっこりしている場合じゃないか。
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