2 脱出に向けて1
「あたくしとレインさんが同時に能力を解除すれば『防壁』――いえ、これは『強化防壁』と呼ぶべきですね――は消えるかもしれません」
「なるほど、やってみよう」
俺とフローラは顔を見合わせた。
精神を集中する。
「解除!」
そして、同時に叫んだ。
周囲の『強化防壁』が一瞬、大きく歪み――。
すぐに元に戻る。
「……駄目ですわね。上手くコントロールできない」
「俺も強化ポイントを回収しようとしたけど、いつもみたいに戻せないな。俺の意思とは無関係に強化ポイントが『強化防壁』に残留してる感じだ」
ため息をつく俺。
「けど、一瞬だけ強化ポイントを回収できたような気がするんだ。『強化防壁』自体も変化したように見えたし……その一瞬を狙って、リサが『魔弾』で攻撃したら壊せないかな、これ」
「やってみるぞ」
俺の提案にリサがうなずいた。
で、さっそく実行する。
俺とフローラがそれぞれ能力解除。
タイミングを合わせ、リサが『魔弾』を発射――。
「駄目だぞ」
リサが渋い顔をした。
「あたしが『魔弾』を撃つより早く、『強化防壁』が元に戻ってしまう」
「じゃあ、僕が『停止』させてみるか」
今度はジグが手を上げた。
「フローラとレインが能力解除、タイミングを合わせて僕が『停止』、さらにタイミングを合わせてリサが『魔弾』発射だ」
「全員の息がぴったりじゃないと難しそうだな、それ……」
俺は苦笑した。
「けど、やるしかないか」
というわけで実行。
すると――。
ばきんっ。
「おお、やった!」
『強化防壁』にわずかな亀裂が入った。
「よし、続けてみよう!」
俺は勢い込んで言った。
脱出の希望が見えてきたぞ――。
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