1 異空間にて
俺たちの周囲をエネルギーでできた壁が取り囲んでいた。
上下左右、全方位――つまり、俺たちは巨大な玉の内部に入っているような状態だ。
「閉じこめられたらしいね」
ジグが周囲を見回してつぶやく。
「たぶんフローラの『防壁』の能力と君の『付与』が同時に暴走したんだ。そして生まれたのが――『付与』によって際限なく強化された『防壁』だ」
「えっ、それって――」
つまり、言葉通りの意味だろう。
俺の『付与』で強化された『防壁』なんて、ちょっとやそっとの頑丈さじゃないことは分かる。
「出られないのか、ここから?」
「さあね」
「……なんか怒ってない?」
「敵と仲良くする趣味はない」
ジグはツンとした態度を崩さない。
ま、それもそうか。
敵同士だもんな、俺たち……。
「でも、今は協力することも必要だと思うぞ」
とりなしたのは『魔弾』のリサだった。
「閉じこめられたのは確実。しかも、めちゃくちゃ厄介な『防壁』だ」
「あたくしも同意見です。簡単には脱出できませんよ、これ」
と、『防壁』のフローラ。
「決着をつけたい気持ちは多々ありますけれど……」
言って、俺をじろりとにらむ。
「まあ、なかなか友好的にはなれないよな」
俺は彼女に苦笑を返した。
「ただ、一番優先すべきことはみんなでここから出ることだろ? ここに閉じこめられたまま、っていうのは都合が悪い。お互いにな」
言いながら、ジグをちらっと見た。
「……ふん」
そっぽを向くジグ。
うーん、素直になってくれないなぁ。
しょうがないと言えば、しょうがないけれど。
「ここを脱出するってことで俺たちの利害は一致しているわけだ」
「言われなくても分かってるよ」
「分かってるなら協力してくれてもいいだろ?」
「……むむ」
「ジグは照れてるだけなんだぞ」
リサが微笑んだ。
「普段ツンツンしてるけど、人と打ち解けるのが照れ臭いから……超絶照れ屋さんだから」
「だ、誰が照れ屋だ!」
言いながら、ジグの顔が真っ赤になった。
「うう……」
俺を見ると、さらに真っ赤になって視線を逸らしてしまう。
「あれ、本当に照れてるだけなのか?」
なんで照れるのか、いまいち分からないけど――。
「て、照れてなんていないんだからなっ」
ジグが、めちゃくちゃ分かりやすい反応をした。
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