3 新型防御アイテム
「出ろ、『ソフトバルーン』」
俺は懐から小さな風船を取り出した。
『ソフトバルーン』。
こいつはマジックアイテムだ。
名前の通り、風船型の防御アイテム。
ただし、その柔軟性に+3000程度の付与魔術を施してある。
ぼよんっ。
前方から迫る光球――【貫通弾】を風船で受け止める。
+3000の効果で異常な柔らかさを得ている風船は、貫通弾でも貫けない。
ばいーーーーーーーーーーーーーーーーんっ。
大きく跳ね返って、明後日の方向に飛んでいった。
「よし、上手くいったぞ」
「なるほど『付与』の力ですか」
「対象を圧倒的に強化できる力……厄介だぞ」
少年少女の二人組が俺を見ている。
「今のはお前たちの仕業か」
「あたしの術だぞ。名前は『魔弾』のリサ――よろしく」
リサと名乗った少女が一礼する。
「魔弾……?」
「お前が超越級の『付与』の力を持つように、あたしには超越級の『魔弾』があるんだぞ」
と、リサ。
「光竜王を打ち倒した勇者といえど、そう簡単に勝てるとは思わないことだね」
「『星の心臓』には僕らが到達する。他の能力者に道は譲らない」
今度は少年が言った。
「俺は別に、その『星の心臓』とやらのことは分からないし、目指してもいない。お前たちが一方的に襲ってきてるだけだろう」
俺は二人を油断なく見据える。
「この間のディータとシリルってやつも含めて――」
「『天の遺産』を持つ者たちは引かれ合い、戦う運命ってやつだね。こうして相まみえるのは必然だぞ」
リサが言った。
「じゃあ、お前たち同士でも戦うのか?」
「最後はそうなるだろうね。だけど、まずは『星の心臓』への行き方を見つけるために、共闘してるんだぞ。他の勢力をすべて退け、あたしたちが『星の心臓』に続く道を見出したなら、その後は――」
「僕らでの……仲間内での殺し合いになるだろうね。最後に残るのは、たった一人だ」
少年が笑う。
仲間内で殺し合うことになる、という言葉を楽しげに。
本当に楽しげに……笑う。
俺はゾッとした。
こいつは、どこか壊れている。
そんな雰囲気を、ふんだんに漂わせていた。
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