2 襲撃
前方50メートルくらいの場所でヴィクターさんがたたずんでいる。
ここは街道から少し外れた地点。
周囲には荒野が広がっている。
そんな風景の中、歩くでもなく、その場に突っ立っているヴィクターさんは異様な感じだった。
「……っていうか、どこから出てきたんだろう」
神出鬼没な感じが、いかにもヴィクターさんって感じだった。
まあ、それはともかく、俺たちはいったん馬車を止めてもらい、ヴィクターさんの元へと歩み寄った。
「おーい、ヴィクターさん~!」
俺はその後ろ姿に向かって呼びかけた。
ヴィクターさんは振り返ろうともしない。
あれ、俺の声が聞こえないのかな?
「ヴィクターさん……?」
その後、いくら呼びかけても反応がない。
俺は不審に思って距離を詰めた。
みんなもそれに続く。
「えっ、これは――」
ヴィクターさんのすぐそばまでやって来たところで、俺は驚いて息を飲んだ。
「カチンコチン」
「あ、ああ……」
「固まってる」
「だな……」
俺とミラベルは顔を見合わせる。
彼女がツンツンとヴィクターさんの体をつついた。
微動だにしない。
そう、ミラベルの言う通り――。
ヴィクターさんはまるで彫像にでもなったかのように、いっさいの動きを止めている。
「し、死んでないよよな……?」
ラスがつぶやいた。
「よく見ろ。脈がある。顔に生気もある。生命活動は明らかに継続している」
と、バーナードさん。
さすがはベテラン冒険者、冷静だ。
正直、俺も内心ではけっこう動揺していた。
けど、バーナードさんの落ち着いた態度を見て、冷静さを取り戻すことができた。
「でも、誰の仕業なんだろうね~」
と、ローザ。
「そうだ、君の探索魔法で何か分からないか?」
「私のは、あくまでも『探索』で『索敵』じゃないのよ」
俺の問いにローザが答えた。
「たぶん探索魔法を使っても無理じゃないかな」
「敵……か」
だとしたら、これは――。
「まさか……」
俺はハッとなった。
『天の遺産』持ちの仕業か?
「『貫け』――【貫通弾】」
突然、声が響いた。
声からして、十代の少女だろう。
同時に、前方から光り輝く球体が飛んでくる。
「貫通弾、とか言ってたな……」
読んで字のごとし、貫き通す弾――。
「だとすると、ちょっとまずいか? 貫かれたら痛いし」
「レイン、呑気すぎ」
ミラベルが横から突っこみを入れた。
「そうですよ。レインさんのことは尊敬してますけど、あれに備えないと!」
剣を抜くラス。
「俺がレインさんを守ります!」
「いや、危ないから下がってよう」
俺はゆっくりと前に出た。
自分でも不思議なほど落ち着いている。
まあ、光弾がかなりスローに近づいてきていることもある。
けど、それだけじゃない。
不思議なほど、自信が湧いてくる。
あの光竜王との戦いを通して――。
俺は、俺の能力への自信と理解を深めた。
だから、
「こいつは、防げる」
俺は確信をもって告げる――。
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