1 ヴィクターを求めて
俺はバーナードさん、ラス、ミラベル、ローザの四人とともに街道を進んでいた。
移動手段は馬車だ。
ローザの探索魔法でヴィクターさんがいる場所の『方角だけ』は把握したので、後はそこへ向かいながら、より詳細な位置を探る……という方針である。
馬車はそれなりの値段のものを用意して、揺れも少なく快適な車内だった。
そんな道中を一時間ほど続け――。
「なんだか浮かない顔だね、レインさん」
ローザが俺を見つめた。
「何かあった?」
「いや、まあ……」
俺は出発直前のことを思い返していた。
脳裏に浮かび上がったイメージ。
『星の心臓』を巡り、他の『天の遺産』保持者――超常の能力を持つ者たちと出会うことになる、と。
今まで、俺の付与魔術でいろいろな敵を打ち倒してきた。
そのほとんどは圧勝だった。
まったく苦戦せず、剣の一振りで敵を粉砕。
そんな戦いだった。
だけど、今回ばかりはわけが違う。
俺が超絶レベルの付与魔術を操るように、他の連中も独自の超絶能力を持っているんだろう。
そう、光竜王戦で対決したディータやシリルのように……。
「あくまでも目的はヴィクターさんを探すことだ。だけど……その過程で戦いに巻きこまれそうな気がするんだよな」
「へえ、どうして?」
「理由は――」
ローザの問いに俺は答えかけて、口をつぐんだ。
冷静に考えれば、俺は夢でそれを見ただけだ。
現実的な証拠など何一つない。
案外スムーズにヴィクターさんと再会できるかもしれない。
「だけど……」
『天の遺産』を持つ者たちとの戦いは避けられない。
そんな予感だけは、確信に近い状態で俺の中にある。
俺の中で、何かがそう告げているんだ。
あるいは、この『超絶付与魔術』の力が――俺に教えてくれているのか。
戦いの、予兆を。
「ま、あたしたちがついてるから一人で抱え込まないでよ」
ローザが俺の肩にポンと手を置いた。
「ローザ……」
「あたしは、レインに比べたらずっと弱いし、他の二人だって一緒だと思う。けど、まったく役に立てないわけじゃないからね」
「役に立たないなんて思ってないさ。心強いよ」
「ふふ、まだまだ足りない。もっとあたしたちを頼ってよ」
ローザが俺を見つめる。
「どうもレインは他人に頼るのが下手っぴな雰囲気あるからさ」
「……そう、かな」
俺は小さく苦笑する。
と、そのときだった。
「あ……」
ミラベルがいきなり声を上げ、前方を指さした。
「あの人かも」
「えっ」
俺は目を凝らした。
俺も彼女同様にアッとなった。
「ヴィクターさん!?」
いきなり発見できたらしい。
こいつはツイてるぞ……!
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