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10 出発

 ――やはり、君も目指すのか。『星の心臓』を――




 ふいに、脳裏に声が響いた。


「えっ」


 俺は驚いて周囲を見回した。


『ならば、彼らとは敵同士になるだろう』


 初めて聞く声だ。

 頭の中に直接響くようなメッセージ。


『「天の遺産」を持つ者たちの戦いは、これから始まる――』

「なんだよ……誰なんだ、あんたは」

『いずれ……「星の心臓」で……たどり着けるのは、ただ一人……』


 俺の脳裏に、無数の映像が浮かび上がった。


 耀くオーラをまとった十数人の男女が戦っているようだ。


 ある者は剣で。

 ある者は魔法で。

 ある者は異能で。

 ある者は――。



 それぞれに異なる能力を操り、戦っている。



 その威力は壮絶の一言だった。

 彼らが攻撃を放つたびに大地が割れ、空間が裂ける。


「まさか、これは――」


『天の遺産』を持つ者たちの戦い、なのか。


 そして、もしかしたら。

 俺がこれから訪れる場所で、同じような戦いが起きる……?


「どうかしましたか、レインさん?」


 ラスが怪訝そうに俺を見た。


「レイン?」


 バーナードさんやミラベル、ローザも同じように俺を見つめる。


 ――いや、大丈夫だ。

 俺は戦うために旅立つんじゃない。

 それを回避するために動くんだ。


 ただ自分の状況を知るためにヴィクターさんを探し、『星の心臓』のことも知りたい。


 俺の中の何かが『星の心臓』に強烈に引きつけられている。


 その理由を。

 その真実を――。


「行こう」


 俺はみんなに言った。


 そして、不安を振り払い、一歩を踏み出した――。

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