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8 ギルド『王獣の牙』その末路2《追放者SIDE》

雷獣団(らいじゅうだん)』。


 それが売却先のギルドの名前だ。



 ランクはC。

 だが実績を積み上げて、近々Bランクギルドに昇格予定だという。


 そこでもっと大きな都市への本部移転を計画し、『王獣の牙』に目を付けたようだ。


「ここのギルドマスターはいるか!」


 バリオスは『雷獣団』に乗りこむなり、怒鳴りつけた。


「なんだ、おっさん?」

「うちのギルドマスターになんの用だ?」

「俺は大陸最強ギルド『王獣の牙』のギルドマスターだ。たかがランクCの貴様らが……口の利き方に気をつけろよ」


 じろりと周囲をにらみつける。


 冒険者たちは平然としていた。

 バリオスに対して恐れ入るどころか、奇異の目で見ているくらいだ。


「こいつら……」

「なんの用だ」


 奥から壮年の男が現れた。


 さらにその傍には――イルジナがいる。


「き、貴様――」


 バリオスは彼女を見て、カッと目を見開いた。


「き、き、きさ、きさ、まぁ……」


 怒りのあまり言葉が出てこない。


「なんだ、知り合いか? イルジナ」


 男が彼女を横抱きにしながら、耳元でささやく。


「いえ、存じ上げません」


 ふふっ、と笑いながら、イルジナは首を左右に振った。


 ギルドマスターの腕に抱き着き、豊かな胸を押し付けている。

 二人の雰囲気は、明らかに男女の関係があることを匂わせた。



(ふざけるなよ……イルジナは俺の女だぞ。ランクCごときのギルドマスターが……くそっ)


 バリオスは内心で怒りと嫉妬心を燃やす。


「イルジナ、少し大事な話をするかもしれん。お前は外してくれるか」

「分かりました。では、失礼いたしますね」


 言って、彼女は男の頬に軽くキスをした。


「っ……!」


 バリオスは怒りで目の前が真っ赤になるのを感じた。


(この女……やっぱり、俺を裏切って――)


 ちらりとバリオスを見たイルジナの目には侮蔑の色が浮かんでいた。


「俺のギルドをどうするつもりだ。とにかく、売却など絶対に認めん!」


 バリオスは強硬に言った。

 が、相手のギルドマスターは動じない。


「そうおっしゃいますが……私たちのもとに権利書はあり、こうして印もある。ギルドの権利はこちらに移ったものとみなしていますが?」

「そ、それは……俺があの女にだまされたんだ!」

「証拠はありますかな?」

「っ……!」


 バリオスは言葉を詰まらせる。


 すべては、イルジナとの口約束だった。

 考えてみれば、証拠に残るようなものが何もない。


 完全に信じ切っていた。

 完全に舞い上がっていた――。


「私たちはこの権利書をもとに、『王獣の牙』の売却を実行します。異議があるなら、裁判所にでもどうぞ。法の下で存分に戦いましょう」


 ギルドマスターは悠然と言い放った。


「うぐぐぐぐぐぐぐ……」


 バリオスは歯ぎしりしてうなるのが精いっぱいだ。

 何も言い返せない。


「馬鹿な……こんな馬鹿な……」


 バリオスはその場に崩れ落ちた。


 いよいよ『王獣の牙』と、そのギルドマスターであるバリオスの崩壊劇が始まろうとしていた――。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 騙し取られたと主張すれば、それを証明する証拠はありませんが、逆に権利書を「盗まれた」主張されれば、雷獣団側が合法的に権利書を入手した(盗んでない)ことを証明しないといけなくなるのでは……
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