5 ミラベルの重大事態?
マーガレットと別れた俺は、予定通り露店巡りを始めた。
さまざまなお菓子や軽食を売っている店。
石や金属などの細工物を売っている店。
あるいは読み物や絵を売っている店。
様々な露店があって、見ているだけで飽きない。
気が向いた店でお菓子を買って食べたり、細工物もいくつか買ってみた。
こっちはギルドのみんなにお土産として渡そう。
「ニーナが喜びそうだな、これ」
可愛らしい犬の姿をしたペンダントだ。
そうやって店を巡って歩いていると、前方に小柄な女の子を発見した。
「あれ、ミラベルか……?」
大通りに面した露店に行列ができていて、そこに並んでいる。
「確かここって、王都でも人気の軽食店だったな」
テイクアウトできるサンドイッチが人気なんだとか。
と、彼女の順番が来たらしく、予想通りにサンドイッチを買った。
「やっと買えた……やったやった」
ホクホク顔で店を去る。
ベンチに座り、あーんと口を開けて食べ始める。
そこで俺と目が合った。
「あ、レイン」
サンドイッチを大事そうに持ちつつ、とてとてと歩み寄ってくるミラベル。
「重大事態」
「重大?」
まさか光竜王の残党でも現れたのか?
あるいはもっと別のトラブル……?
「このサンドイッチ、めちゃくちゃ美味しい」
幸せそうに頬張りながら告げるミラベル。
「そ、そうなんだ……よかったな」
「全部私の」
「別に食べさせてくれとは言わないよ」
苦笑する俺。
「じー」
「な、なんだ?」
「死守」
「言わないって」
「なら、いい」
微笑み、全部食べてしまうミラベル。
……と思ったら、最後のひとかけを差し出してきた。
「やっぱり、ちょっとだけ上げる」
「ん?」
「何かと世話になってる。ミラベルは義理堅いえらい」
「あ、ああ、ありがとう」
1センチ四方くらいしか残ってないけど、ありがたくもらっておいた。
……うん、こんなに小さな欠片でも美味しいな。
「重大事態」
またミラベルが言った。
今度はなんだ?
「報酬をもらい損ねた」
ミラベルが俺を見つめる。
「光竜王との戦いに同行した報酬。私もそれなりに活躍したはず」
「ああ、確かに……」
「報酬が少なかった。ほとんどレインばっかり」
「一応、俺は光竜王を倒してるし、まあ……」
「みんなの力で倒した。つまり、光竜王は私が倒したも同然」
「そ、それはちょっと飛躍した考えじゃないか?」
「つまり、光竜王討伐の報酬を、私はレインからせしめる必要あり」
「いや、ないだろ」
「レインの報酬は私の報酬」
「理論展開が、強引すぎる……」
「ほしいほしい」
理屈も何もないストレートな要求になったぞ……。







