4 マーガレットの宣言
「よう、レイン・ガーランド」
その日の昼下がり、俺はマーガレットに会った。
場所は露店が集まった通りの入り口付近だ。
今日は予定が空いたので、ぶらりと露店巡りでもするつもりだったのだ。
「どうも」
「噂で聞いたぜ。お前、S級に推薦されそうなんだって?」
「えっ、まあ、いちおう……」
俺がS級冒険者だなんて、まったくピンとこない話だ。
ランクでいえば、リリィと同じになるのか……。
「ますますお前と差がついちまったな……」
マーガレットが俺をにらんだ。
「先輩に認めてもらうためには、お前に勝つのが一番手っ取り早いんだけど――うう」
「リリィはマーガレットのことを十分認めてるんじゃないか? この間の光竜王との戦いだって、同行を許可してくれてただろ」
「それくらいじゃダメだ。もっとこう――俺こそが先輩の唯一の相棒だ、くらいに認められたいんだよ」
熱弁するマーガレット。
「マーガレットって、本当にリリィのことを尊敬してるんだな……」
「当たり前だろ! 俺にとって、あの人は世界一の騎士で冒険者だ」
その両目に炎が灯って見えた。
「俺が別のギルドでくすぶっていたとき、共同クエストであの人に出会ったんだ。焦らずに自分なりに成長していけばいい、って導いてもらった。おかげで少しずつ実績が上がり始めたんだ」
マーガレットがさらに語る。
「で、十分に実績を積み重ねたところで、あの人と同じギルドに移籍した。ある程度のランクや実績がないと門前払いだからな、あのギルド」
「へえ、厳しいんだな」
と、俺。
「大陸最強ギルドの一つだからさ。冒険者なら誰でもいいってわけにはいかねーのよ」
「なるほど……『王獣の牙』はもうちょい色んな冒険者を受け入れてたけど、厳しいところもあるんだな」
そういえば、『王獣の牙』はどうしてるんだろう?
前にギルドランクSから陥落したり、その後も所属冒険者の流出が続いて苦しい、って噂を聞いた気がする。
「俺はもっと腕を上げて必ずS級に上がる。お前にもいつか勝ってみせるからな」
マーガレットが俺にびっと人差し指を突き付ける。
「ああ、がんばれよ」
まっすぐに努力してる人って、やっぱり応援したくなるよな。
「……ストレートに言われると、ちょっと照れるな。っていうか、俺はお前を倒すって言ってるんだけど、応援してくれるのか?」
「がんばってる人は応援したいよ。仲間ならなおさらだ」
「仲間……」
マーガレットがハッとした顔になった。
「なんだよ、冷たいな。仲間だろ?」
「そ、そうか……そうだな」
つぶやき、マーガレットは頬を赤く染めた。
照れてるらしい。
「……悪く、ないな。そういうの」
彼女の口元に小さな笑みが浮かんだ。
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