3 敬意と感謝
「近々、あなたに勇者の称号が授与されそうです」
ウラリス王国のお偉いさん――内務大臣からそう告げられた。
「やっぱり……マルチナの言った通りか」
俺はなんとも言えない気持ちだった。
勇者なんて言われても、やっぱり実感が湧かなさすぎる。
それにそういう称号は、子どものころから剣に励み、勇者を目指していたらしいマルチナみたいな人間が受け取ったほうがいいんじゃないだろうか。
光竜王を倒して世界を救った、って言うなら、マルチナだって同じなんだし。
「おや、あまり嬉しそうな顔ではありませんね?」
大臣が怪訝そうな顔をする。
「いえ、その……私には分不相応な称号だと思いまして」
弁明する俺。
王様から直々に授与されるかもしれない称号に、嫌な顔をするのはさすがに不敬だしな。
「マルチナ様から聞いていますよ。あなたは富や名誉にはあまりこだわらない方だと……」
「えっ、マルチナから?」
「自分自身のためよりも、他者のために剣を振るう。大きな見返りを求めることなく、戦い続ける――真の勇者だと称えておりました」
「マルチナがそんなことを……」
本人がいないところで、そんなふうに褒められていたことを知らされると、めちゃくちゃ照れるな。
「ですから、あなたにとっては大きな喜びではないのかもしれません。それでも我々としてはレイン・ガーランドという偉大な戦士に敬意と感謝を示したいのです」
内務大臣が熱く語る。
俺を見つめる目がキラキラしていた。
単なるお世辞じゃなく、本当に俺を称えてくれているらしい。
「願わくば、我らからの称号授与を受け入れてくださるとありがたく」
「……分かりました。慎んでお受けします」
仰々しい称号はやっぱり苦手だけど――。
この人たちの想いはちゃんと受け取ろうと思った。
「それと――私は冒険者ギルドの支部長と懇意にしているのですが、どうやらあなたにS級認定を、という話が出ているようですよ」
「えっ、私がS級ですか!?」
俺は驚いて叫んでしまった。
ちょっと前までは『王獣の牙』の裏方に過ぎなかった俺が――。
すべての冒険者の頂点であるS級として認められようとしている……?
さすがに現実感が薄くて、どう反応していいか分からない。
まあ、俺がS級になれば所属している冒険者ギルドにも――『青の水晶』にもプラスになるだろうからな。
こっちも謹んで受け入れるとしよう。