15 覚醒
「感じるぞ……! 力が湧き上がってくるような、感覚――!」
ヴィクターさんが輝く剣を手に叫んだ。
「マーガレットさんと言ったか。今から私が道を切り開く。その間に傷を負った彼女を治癒してやってくれ」
「えっ?」
突然指名されたマーガレットが戸惑いの表情を浮かべる。
「けど、奴らに邪魔されてリリィ先輩には近づけねーし……」
「私がなんとかする」
言うなり、ヴィクターさんが歩き出した。
まっすぐに、七竜騎たちが変身した巨大な竜に向かって。
「正面から我らに向かってくるだと」
「ならば、焼き尽くすまで」
放たれる三つのドラゴンブレス。
ヴィクターさんは避けるそぶりもなくブレスの直撃を受け――。
跡形もなく、消滅した。
「なっ……!?」
俺は呆然と立ち尽くした。
「ヴィクターさん……!?」
まさか、なんの策もなく敵の前に立ち、消し飛ばされるなんて。
さすがに考えがなさすぎる。
だとすれば――もしかして。
「走れ、マーガレット!」
「分かってるさ!」
マーガレットも同じようなことを考えていたのか、すでに駆け出していた。
リリィの元までたどり着き、治癒呪文を唱えた。
「ちっ!」
七竜騎たちがいっせいにリリィ、マーガレットに向き直る。
「こっちだ」
と、その背後から声が聞こえた。
そこにはヴィクターさんの姿がある。
「なんだと!?」
「貴様、生きていたのか――」
「なら、もう一度消し飛ばすまで!」
ドラゴンブレスが再度放たれる。
ふたたび爆散するヴィクターさん。
だけど、次の瞬間には離れた場所に出現していた。
「おのれぇっ!」
意地になったようにブレスが次々に放たれるが、ヴィクターさんは吹き飛んでは再生し、また吹き飛んでは再生する。
「あれは――ヴィクターさんの剣の力か……!?」
いや、何か違うぞ。
背筋に直接響くような、この感じ。
この力の気配は――。
「まさか……」
ごくりと喉を鳴らしてヴィクターさんを見つめる。
「まさか、ヴィクターさんも――」
「『天の遺産』だったか?」
ヴィクターさんがニヤリと笑う。
「どうやら、私にも同じような力が宿ったらしい――」