14 混戦
「……ふん、多少傷ができたところで、完全破壊には至らぬ。我はこのままジワジワと攻めて、お前たちをいたぶり殺すのみ」
光竜王がうなった。
……なるほど、やはり『追加』はできないか。
俺の付与は強化された武器などを複数併用して攻撃することができる。
防御も同じ。
アイテムの数だけ攻撃力や防御力が上がる感じだ。
だけど、光竜王は違う。
あいつの『強化』は自分自身にしか作用しないんだ。
だから、奴の防御力がこれ以上アップすることはない。
もし防御力をさらに強化する方法があるなら、さっきの攻撃で傷を負った時点でしているはずだ。
それをしないということは、光竜王の防御力は現在の状態が上限で、それ以上アップさせる手段はないってことだろう。
つまり――。
「それを上回る攻撃ができれば、奴を倒せる」
力の上限が見えた相手なら、攻略は不可能じゃない――!
「俺たちの攻撃力が、奴の防御力を上回っている。集中して当てさえすれば、いずれ奴の防御を破れる」
俺は全員を見回して言った。
現在、リリィは傷を負って動けない。
それを回復しようとマーガレットが彼女に近づこうとするが、七竜騎に牽制されてなかなか距離を詰められない。
残ったメンバーが攻撃要員だ。
「総攻撃だ!」
俺、マルチナ、ヴィクターさん――四人の伝説級の剣がそれぞれ光竜王に斬撃波を飛ばす。
「させるか!」
七竜騎がマーガレットへの牽制のかたわら、妨害してくるが、
「このっ!」
マーガレットが逆に牽制の魔法を放って足止めした。
よし、このままジワジワと優勢に持ちこむぞ。
「なかなか粘るな」
「だけど、あたしたちもいるからね!」
ディータとシリルが加わり、俺たちはすぐに劣勢状態へと押し戻された。
強い――。
やはり『天の遺産』使いが三人いる敵の布陣は強力すぎる。
「相手の戦力が上なのか……! このまま押し切られるのか――!?」
いや、まだだ。
考えろ。
「俺の付与魔術を利用して、この場を打開する方法を――」
ぎりっと奥歯を噛み締める。
最後まで諦めてたまるか。
このまま黙ってやられてたまるか。
そのとき、突然辺りに緑色の輝きがあふれた。
「これは――!?」
驚いて周囲を見回す俺。
「なんだ、この光は――?」
ヴィクターさんが呆然とした顔をしていた。
手にした『翠風の爪』がまばゆい輝きを放っていた。