12 『天の遺産』攻略戦1
「あたしもいますよ~」
今度はシリルが向かってきた。
ショートソードを構え、まっすぐに。
「なんだ……?」
スピード自体は、剣士としては中の上といったところだろうか。
まあ、動きにくそうなドレスを着ているせいもあるだろうが……。
見た感じ、それほど身体能力が高いようには見えない。
戦士じゃない俺よりは上かもしれないが、リリィやマルチナには比べるべくもないだろう。
彼女が向かう先は、リリィだった。
「接近戦でやり合うつもり? 舐めないで」
リリィが剣を構えた。
実際、この二人の接近戦ならおそらくリリィが圧勝だ。
と、
「ぴょーん」
おどけた言い回しとともに――シリルの姿が消えた。
「えっ!? きゃあっ……!」
次の瞬間、リリィの背後に現れたシリルが、ショートソードを振るう。
リリィは背中を大きく切り裂かれて倒れた。
「うう……」
血を流しながらうめくリリィ。
「痛そうだねー、ごめんなさいです」
シリルがペロリと舌を出した。
「リリィ先輩、俺が治癒魔法を――」
マーガレットが駆け寄る。
「ぴょーん」
ふたたびシリルが姿を消した。
今度はマーガレットの背後に移動する。
「こいつ――っ!?」
「えいっ」
蹴り飛ばされたマーガレットは、リリィから大きく離される。
「近づかせませんよ~」
と、笑うシリル。
さらに、
「私を忘れてもらっては困る――」
今度はディータが【万物破壊】の攻撃を放った。
俺はその攻撃に正面から突っこみ、なんとか攻撃の方向を逸らす。
ばきんっ。
予備の加護アイテムがいくつか砕け散った。
「ふん、まだアイテムを持っていたのか。だが、いつまで凌げるかな?」
ディータが俺をにらむ。
彼女が破壊力で正面から押し、神出鬼没のシリルが攪乱するって感じか。
このコンビ、厄介だぞ――。
「まさか、その二人だけが相手だと思っているわけじゃあるまいな?」
「我らもいることを忘れるな」
「光竜王様がいるところ、必ず我らがいる――」
えっ……!?
驚いて振り返ると、そこには三つのシルエット。
「まさか――」
光竜王の側近たち――残る三体の七竜騎までが、この場に現れたのだ。