9 チートVSチート4
ヴィクターさんは光竜王の額部分に腰辺りまでが埋まったような状態だった。
「ヴィクターさん、そこから脱出できませんか!」
俺は声を張り上げた。
「むっ……ぐぐぐっ……い、いや、体が光竜王の中に埋まっていて、外に出られない……っ」
ヴィクターさんは体をよじったり両腕を突っ張ったりしているが、下半身は埋まったまま。
あの周辺を斬り裂けば、脱出するスペースを作れないだろうか。
「なんとか、ヴィクターさんのところまで行ければ――」
俺が手持ちの武器で光竜王の額を斬り裂くんだが。
「あそこまで飛ばせばいいんだな?」
「えっ」
言ったのはマーガレットだ。
「俺が魔法を使って飛ばしてやる」
「マーガレットが?」
確かに、彼女は魔法剣士だ。
そういった種類の呪文を使えるのかもしれない。
「その代わり、必ず成功させろよ」
マーガレットが俺を見つめる。
「お前に頼るのは癪だが――お前なら何とかしてくれる、って信じてるからな」
そんなふうに言われたら、気持ちが自然と燃え上がる。
「ああ、約束する」
俺はマーガレットに力強くうなずいた。
彼女はニヤリと笑ってうなずき返し、
「飛んでいけ、レイン――【ワイドフラップ】!」
風系統の呪文を唱えた。
ごうっ!
強風を真下から受けて、俺は大きく飛び上がる。
というか、跳ね飛ばされた感じだ。
おかげで光竜王の額付近まで飛び上がることができた。
あとはヴィクターさんを助けるだけだ。
「今、助けます!」
ナイフを抜いて切りつけた。
もちろん、このナイフの強化ポイントを1000単位で付与してある。
ざしゅ、ざしゅっ……。
幸い、刃が通るようだ。
「貴様、何を――!」
光竜王が叫んだ。
体を揺らして、俺を振り落とそうとする。
「くっ……」
ナイフを突き刺し、慌てて落下を防ぐ俺。
「させない――!」
リリィが光竜王の足元を剣術スキルで斬りつけた。
「レインくん、あたしたちが援護を!」
マルチナも同じく斬りつけている。
「おのれ、貴様ら……」
バランスを崩し、俺を振り落とす動きに移れない光竜王。
その間に、俺はさらにナイフを振るった。
「あと少し――」
ヴィクターさんの周囲にかなりの数の切り込みを入れ終える。
俺はナイフを持つ手に力を込めた。
ヴィクターさんの体が埋まっている場所より少し遠くを切り裂いていく。
「おのれ、そいつは逃がさんぞ……!」
俺はなおもナイフを振るう。
もう少しだ――。