7 チートVSチート2
「どうして、お前がその力を使えるんだ……?」
俺は光竜王を見据えた。
「ふん、『天の遺産』のことか?」
光竜王が笑う。
「封印されていたときに、我が元を訪ねた者がいた。その者から分けてもらったのだ。この絶大なる力を!」
「分けてもらった……?」
「『強化』の『天の遺産』――おかげで我は以前の数倍以上の力を得た。今度はもう不覚はとらん」
光竜王の胸元……装甲に覆われた表面に輝く紋章が浮かび上がった。
「さあ、この力をもって、貴様らを灰と化してやろう!」
巨大な口が開く。
口の中が真っ赤に輝いた。
「【ドラゴニックバーストブレス】!」
そこから吐き出される灼熱の光線――。
竜の代名詞ともいえる最強の攻撃、ドラゴンブレスだ。
ごおおおおおおおっ……!
赤いブレスが俺たちに向かって突き進む。
「くっ……!」
俺はとっさに一番前まで躍り出た。
例によって+10000の布の服や加護アイテムの防御力でブレスをはじき返す作戦だ。
だけど、もしも――。
頭の片隅で『その可能性』を考えてしまう。
もしも、ブレスの攻撃力が俺の防御力を上回っていたら……?
間違いなく、俺は跡形もなく消し飛ばされる。
ゾッとした。
全身を押しつぶされるような恐怖がこみ上げる。
俺の付与魔術は規格外と言える領域に達しているが、チートなら相手も同じ。
なにせ『天の遺産』同士の戦いなのだから。
俺がチート付与魔術を手に入れて以来、初めてかもしれない。
生きるか死ぬかという極限の局面は――。
「……怖い」
恐怖感を、俺は唇をかみしめて必死で飲みこむ。
みんなを、守るんだ。
自分自身を奮い立たせる。
「おおおおおおおっ……!」
直後、ブレスが俺を直撃した。
バチッ、バチバチィッ!
ブレスは見えない壁にぶつかったように、俺の前方数十センチのところでせき止められている。
奴のブレスと、俺の加護アイテムや服――ともに『強化』された攻撃力と防御力のぶつかり合いだ。
じりじり、とブレスが俺に近づいてきた。
発生している防御フィールドが次第に弱まっているのを感じる。
「奴の攻撃の方が、上なのか!?」
このまま押し切られるのは、まずい――。
俺は背後のリリィやマルチナを見て、焦った。
彼女たちまでまとめて薙ぎ払われてしまう……!
「……いや、待てよ」
ふいに思いついたことがあった。
今のままで押しこまれるなら――。
「もう一手、加えればいいんだ……!」