6 チートVSチート1
「お前と同質の力だ、人間よ」
奴が見ているのは、俺だった。
「同質の力……?」
俺の付与魔術のことか。
それとも――。
そこまで考えて嫌な予感が広がった。
「まさか、こいつも――」
「ふん、感づいたか」
光竜王がニヤリと笑う。
その巨体から黄金のオーラが立ちのぼった。
「くおおおおお……『天の遺産』よ、我にさらなる力を貸せぇぇぇぇぇっ!」
叫ぶ光竜王。
「何……っ!?」
俺は驚きに目を見開いた。
やっぱり、こいつ――。
奴の全身から立ち上るオーラが、まばゆい輝きへと変化した。
同時に、光竜王の巨体を覆うように輝く装甲が出現する。
胸元には王冠のような形をした紋章が浮かんでいた。
「あれは――『天の遺産』の紋章!?」
「我の体は限りなく不可侵に近づいた。いかにお前の武具が超常の力を持っていても、これを打ち破ることは叶わん」
光竜王が言い放った。
「試してみるか、ん?」
「そうしよう」
俺は『燐光竜帝剣』を拾い上げた。
力を吸い取られた、といっても、それは『光竜王を封印するための力』のことだろう。
攻撃力が落ちたわけじゃない――はずだ。
少なくとも俺が付与した強化ポイントはそのままである。
「なら、いける! 付与魔術、第二術式起動──」
『マルチナ・ジーラの剣術スキル『ブラストブレード』を学習』
『強化ポイント「+3000」を消費し、スキルを強化したうえで、術者レイン・ガーランドに付与する』
「いっけぇぇぇぇっ、【ライトニング・ブラストブレード】!」
俺は渾身の力で『燐光竜帝剣』を振り下ろした。
破壊力に特化した剣術スキル【ブラストブレード】をさらに超強化した一撃。
閃光をまとった刃を、奴に叩きこむ。
がきぃっ……!
鈍い音を立てて、『燐光竜帝剣』が弾き返された。
「剣が……!」
先端部が折れ飛んでいる。
「どうした、付与魔術師? お前の剣は確かにすごい。だが、我にも同質の力があるのだ」
強化した剣が自らの攻撃力に耐えられずに砕けたり、消滅したことはある。
だけど相手の防御力の前に破損したのは初めてだった。
こいつ、やっぱり今までの敵とは違うぞ――。
俺は表情を険しくする。
「レイン様、どうしますか?」
リリィが近づいてきた。
「レイン様の強化武具でも通じないなんて……」
「なら、あたしたち三人で連携するのはどう?」
マルチナも近づいてきた。
「一人一人の攻撃力では通らなさそうだし、三人の攻撃を合わせて相乗効果で奴の防御を突破する――いける?」
「了解だ」
「分かりました」
俺たちはうなずき合い、散開した。
……俺には、さらに上の攻撃手段がある。
付与魔術、第三術式。
万単位の武具を召喚し、一斉に撃ちこむ超絶の攻撃。
だが、あれを使ってしまうと手持ちの強化ポイントはほぼ尽きてしまう。
もし第三術式を使っても奴を倒せなかった場合、完全に打つ手がなくなってしまう。
だから――あれは、最後の切り札だ。
まずは、他に打てる手を全部打っておかないと、な。