5 総力戦
「さあ、我がもとに来たれ。『翠風の爪』の剣士よ」
光竜王が告げた。
その額から光線が伸び、ヴィクターさんを捉える。
「ヴィクターさん!」
その体が光線に導かれるように浮き上がり、光竜王の額へと吸いこまれた。
「ああっ……」
光竜王の額の部分にヴィクターさんの体が埋まっている。
手にした『翠風の爪』ともども。
「この剣には、三つの封印の剣――『燐光竜帝剣』、『紅鳳の剣』、『蒼天牙』の力を閉じこめてある。こうしておけば、お前たちに奪い返されることもあるまい」
光竜王が告げた。
「さらに人質の効果もある。お前たち人間は仲間とやらを大切にするからな。躊躇なく攻撃することはできまい?」
ニヤリと笑う光竜王。
確かに、奴を倒す前にヴィクターさんを救出する必要があるな。
「強化した武器を使って一撃で倒す、ってわけにはいかないか」
ヴィクターさんにまでダメージが及ぶ可能性がある。
そもそも、これだけの巨体だと――いくら強化した武器を使ったとしても、簡単に倒せるかどうか。
「今までの敵みたいに簡単じゃなさそうだ」
俺は唇をかみしめた。
「それでも――止める。そしてヴィクターさんを救い出す」
伝説の剣を失っても、俺にはこの付与魔術があるんだ。
「いくぞ、リリィ、マルチナ。それにミラベルとマーガレットも手を貸してくれ」
俺はみんなに呼びかけた。
「総力戦だ」
そして、戦いが始まった。
「くらえ!」
俺は+10000を付与した剣を振り下ろした。
額のヴィクターさんが巻き添えを食らわないよう、胴体部を狙う。
ただし全力で撃つとどれくらいのダメージを与えるか分からないから、かなり手加減していた。
小手調べ段階だ。
「無駄だ」
光竜王の巨体が薄く輝く膜に覆われる。
俺の放った剣圧は、その膜にあっさりはじき返された。
「何っ……!?」
いくら全力じゃないとはいえ、ここまで簡単に返されるとは――。
「あの膜――魔法障壁か?」
あるいはスキルによる効果なのか。
どちらにせよ、かなり頑強であることは確かだ。
「あたしたちだって! 【斬竜閃】!」
「【ブラストブレード】!」
リリィとマルチナが剣術スキルを放つ。
二人もヴィクターさんを巻きこまないよう、光竜王の足や尾の先端部を狙っていた。
「無駄だと言っている!」
二人の攻撃も、やはり魔法障壁に阻まれる。
「物理攻撃も弾くのか――」
「戸惑っているようだな。これはスキルでも魔法でもない」
光竜王が言った。
「お前と同質の力だ、人間よ」