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1/3

最初の黒

初めての恋愛ものに挑戦しました。よかったら読んでください。


夕暮れの光を飲み込んだ旧校舎の教室は金色に輝いていた。

まるで陽だまりみたいなこの空間だけが僕を癒してくれる。

きっかけはイジメだったけど、見つけたここは僕の唯一の居場所になった。

旧校舎2階の角。ここには誰も来ない。彼女を除いては。

彼女と言っても、どこの誰かもわからない秘密の関係。

でも、僕はそれでもかまわない。いつものように黒板を確認する。

「え?」

そこにはただ一言


会いたいです


と書いてあった。12月も中ごろ。外は凍えるような雪。僕の心に春。


12/5

濡れた制服を洗って体操着に着替える。まさかトイレにいる時にバケツの水が降ってくるなんて思いもしなかった。

「ここまでやるかよ・・・今時アイスバケツチャレンジなんて流行らないだろ・・・」

死にたい。なんて言うときっとみんな、甘えるなとか頑張れよとか言うんだ。

イジメられてるなんて思いたくない。でももう認めるしかなった。

僕はイジメにあっている。

きっかけはなんだったかな。4月のクラス替えの自己紹介でドモったから?6月の林間学校でみんなに馴染めなかったから?それとも8月の体育祭のリレーで足を引っ張ったから?違う。イジメたいからイジメるんだろ?そこに善悪の判断なんてない。

誰が悪いわけじゃない。強いてて言えば弱い僕が悪い。小さい僕が悪い。あいつらに負けない力があれば。

いつもそう思いながら過ごす学生生活は地獄以外の何物でもなかった。


12月6日

弱い僕には自分を守るために逃げることしかできなかった。

もう昨日みたいな惨めな思いはしたくない。催した僕の足は自然と誰も入らない旧校舎に向いていた。上から水をかけられる事を思えば和式トイレで用を足すなんて何の苦にもならなかった。

「はぁ(*´Д`)」

誰にも邪魔されずにいられるこの空間は天国だった。手を洗ってトイレを出る。次の授業まで少し時間があるな。どうやって時間を潰そう。クラスに戻るギリギリまで時間を潰そうと考えていた僕の耳にピアノの調べが聞こえてきた。

「ラフマニノフ?なんて陰鬱な響きだ。今の僕の気持ちみたい」

でも誰だろう?こんなところに僕以外に来る人がいるなんて。

僕の足は自然と階段を上っていた。2階の角教室。音楽室と書いた古ぼけたプレートがぶら下がっている。。

ガラガラ

「誰かいるの?」

扉を開ける。中には誰もいなかった。

開けっ放しの窓に吹く風がカーテンを揺らしている。

さっきまで誰かがいたのは間違いない。ピアノの前の椅子が手前に引かれている。

「誰が弾いてたんだろう」

僕はもう何も感じない。そんな僕の心を動かす音色を届けてくれた人。

でもこれは感動じゃない。同情だ。だってあんなに悲しい・・・。

僕はなんとしてもピアノの奏者と話してみたくなった。

でもどうしたら。

「そうだ!」

ここには誰も来ない。消される心配もない。

僕は黒板にメッセージを残していくことにした。なんて書こうかな。

しばらく悩んだ結果僕が残したのは


あなたは幸せですか?


この一言だけった。


教室に戻ると教科書にラクガキが。バカとか死ねとか幼稚な言葉がたくさん。教師が止めもしないんだからやりたい放題だ。

でもそんなことは気にもならなかった。僕の頭はあのピアノ一色。

授業なんて頭に入らないぐらい僕の視線は右斜め上をぼーっと見つめていた。


キーンコーンカーンコーン。

気が付くと授業は全部終わっていた。こんなに集中して考え事をしたのは初めてだ。

こんなに早く返事が来るとは思えないけど、僕は気になってあの音楽室に黒板を確認しに行くことにした。

「ちょっとニコ!あんたそんな急いでどこ行くのよ?」

っち。目ざといな。

「お前に関係ないだろリム?幼馴染だからって僕に話しかけるなよ」

幼馴染のリム。この星ヶ丘高校、通称星高に通うまで幼稚園からずっと一緒の腐れ縁だ。

昔は一緒に遊んだりもした。でも中学に入ってお互い思春期を境にまったく喋らなくなった。よくある話だ。アニメやゲームにあるような毎朝起こしに来るヒロインなんてどこにもいない。それに、僕と喋ってたらリムまでイジメにあうかもしれない。誰かに迷惑をかけるのは嫌だ。

「何よそれっ?私は心配してるのに!」

リムの気持ちは素直に嬉しかった。でも、だからこそ

「はいはい。余計なお世話ですよー」

迷惑はかけたくない。僕は教室を飛び出した。

後ろでリムが何か叫んでいたけど無視した。


旧校舎の階段を上がる僕の足取りは軽かった。返事が来ているかなんてわからない。

でも、しばらく何の変化も希望もなかった僕の学園生活に差し込んだ一筋の光の前には些末な問題だった。

ガラガラ

勢いよく旧音楽室の扉を開ける。中には誰もいなかった。

黒板には


いいえ

何故そんなことを?


と書いてあった。

返事が来た。あのピアノの彼女から。僕の思った通りのきれいな字で。これで男なら詐欺だ。

僕の妄想は膨らむばかりだった。ピアニストとかバイオリニストって綺麗な人がおおいでしょ?そんなイメージ。

なんとしてもこの人と仲良くなりたい。あのピアノの理由を知りたい。

でもどうだろう?僕さえない男でチビでイジメられっ子ですなんて正直に伝えて興味を引けるわけもない。どうせ会うこともないんだ。僕はなりたい自分を描くことにした。


君のピアノが泣いていたから

もしよかったら涙の訳を聞かせてくれるかい?


我ながら気持ちわるい。でも、イケメンが言えばきっと許されるセリフなんだろう。

こうして不思議な文通が始まった。


12/7

朝のホームルームの前に僕は黒板を確認しに行くことにした。

少し本校舎から離れた旧校舎はグラウンドを超えたさらに先にある。

ちょうど陸上部の朝練の時間で、トラックでは短距離のエースであるリムが輝く汗を流していた。

小学生のころはよく一緒に走り回った。どうしてこんなに離れてしまったんだろう。

がらにもなく感傷に浸る自分が寒い。もうどうしようもないことなんだ。

そんなことより今大事なのは・・・

相変わらず階段を上る僕の足は軽やか。ガラガラと旧音楽室の扉を開ける。

黒板には


わたしには友達がいません

誰も本当の私を理解してくれない

寂しいです・・・


思ったより重症だなこれ・・・。でも、僕と同じだ。

僕と同じ痛みを共有できる存在。ますます彼女に興味がわいた。もしかしたら男かもしれないけど・・・。

僕はまたメッセージを残すことにした。


どうか泣かないで

俺がいるよ

俺じゃ君の力になれない?

友達になろう

俺なら本当の君を理解してあげられる


相変わらず寒い。でも、僕の理想のイケメンはこんな感じ。

僕みたいなチビが言ったら鼻で笑われる。でも、彼女の前ではカッコいい僕でいたかった。


キーンコーンカーンコーン

チャイムが僕を現実の世界に引き戻す。

「まずい!遅刻する」

なるべく目立つようなことはしたくない。

僕は走って教室に向かった。


ギリギリで教室に到着。そんな僕を呆れた顔で見ている前の席のリム。

「あんた何やってたのよ?」

相変わらず僕に突っかかってくる。

「関係ないだろ?ほらホームルーム始まるよ」

僕が冷たく突き放すとリムはつまらなそうな顔を浮かべて諦めて前を向いた。

リムを躱した僕に左横の窓際から鋭い視線。黒崎君。僕の天敵。


思った通り僕は呼び出しを食らった。

1限が始まる前の短い休み時間。場所は男子トイレ。

「てめぇ調子乗ってんなよチビがっ!」

ドンっ!黒崎君が壁を殴った。あれ、手痛くないのかな?

「別に」

僕はそっけなく答える。それが黒崎君をさらにイラつかせたみたい。

チビと言われるのはもう慣れた。高2にもなって身長が155しかない僕はイジメのターゲットにされがちだ。

「別にじゃねーよ!あんま調子乗ってっとまたシメんぞ?」

なんでこーいうステレオタイプの不良って会話が通じないんだろう。まだメダカとお話したほうが有意義だ。

「わかったよ。気を付ける」

僕はいつもの調子で謝る。これが一番早く終わるから。

キーンコーンカーンコーン

「っち!時間もねーからこんぐらいにしといてやる」

そう言って黒崎君は僕を突き飛ばした。彼の取り巻きの2人組が僕を笑った。

不良なのにまじめに授業は受ける黒崎君がなんだか不思議だった。


相変わらず授業なんて頭に入らない。

「じゃー次の問題を、じゃ12/7だからー、水島―。水島答えろ」

「ニコ!先生が呼んでる。ねぇニコ!」

リムが振り返って僕を見ている。何かあったんだろうか?

「おい、聞こえてるのか水島!水島笑ショウ!」

「はいっ!」

ぼーっとしていた僕は先生の怒鳴り声で慌てて立ち上がった。

「水島―ちゃんと授業を聞きなさい。P35を読め!」

「はいっ!喰らえぇ!これが俺の力だ!怒りを込めた勇者ガルダインの拳が魔王ルシファーの心臓を」

「何を言ってるんだお前は?今は英語の時間だ。そのラノベを早くしまいなさい!」

休み時間授業の準備もせずに、持ってきた勇者王ガルダインを読んでいた僕の机には当然それしかなかった。

「っぷ!」

僕の失態を見てリムがふきだした。

「すみません。気を付けます」

そう言って僕は静かに着席した。退屈な授業が続く。僕の頭はもう昼休みに行く旧音楽室に向かっていた。

黒崎君がまた僕を睨んでいいた。嫌な予感がする。


黒崎君からまた言われていた昼休み、僕は初めて呼び出しをブッチした。あんなつまらない連中に付き合ってる時間なんてないんだ。誰にも見つからないように旧音楽室に急ぐ。

黒板を確認すると新しいメッセージが。


ありがとう

私でよければ是非

ピアノお好きなんですか?



相変わらず綺麗な字だ。これだけで大和撫子を想像してしまう。

ピアノかぁ。僕が知ってるのは漫画の知識だけだからあんまり突っ込んだことは言えないよな。


たしなむ程度にね

あまり詳しくはないよ

でも君のピアノは僕の心に響いた

心が感じたままに動いた

だから君に出会えた


僕かっけぇ!たぶん僕が思うイケメンって、ガルダインなんだろうな。心が感じたままに。これは名台詞だ。ありきたりだけど体が熱くなるものがある。

黒板の君(彼女)にはきっと伝わるはずだ。なんたってガルダイン先生の名言なんだから。

メッセージを残し終えた僕が黒板を離れると、ピアノが目に入った。

よく使いこまれたグランドピアノ。でもしっかりと調律されている。埃も目につかない。

ピアノなんて小学生の時に親に無理やり通わされていたリトミック以来だ。でも、僕の指は自然とその美しい鍵盤をなぞっていた。

童謡 チューリップ 

僕が弾ける唯一の曲。我ながらダサいと思うけど、心は晴れやかだった。

このあと教室で黒崎君と顔を合わせることなんてこの時は気にもならなかった。


ギリギリセーフ。黒崎君は・・・窓の外を見つめていた。

僕のほうを振り返るけど特に何かを訴えていることもない。ほとぼりも冷めたのかもしれない。僕は安心して黒板の君に思いを馳せた。前の席で落ち込んでいるリムなんてこの時は視界にも入らなかった。


授業が終わるとまた僕は教室を飛び出して音楽室へ。

いつも僕を止めるリムも何故か何も言ってこなかった。うつ向いている。まぁいい好都合だ。2段飛ばしで階段を下りる。


ガルダインいいですよね

あと、ピアノ下手くそですね(笑)

でも、すごく優しい響きでした


黒板の前で茫然とする。ってか

「ガルダイン知ってんのかよ!?」

誰もいない教室に響き渡る僕の突っ込み。なんだか空しくなった。

なんだよ(笑)って。煽ってきやがった。僕の中で崩れ去る大和撫子のイメージ。

まずい、このまま流されると彼女の中の僕まで崩壊する。すでにガルダイン先生のせいでピンチだけど。そういえば聞いてなかったことがある。


よければ君の名前を聞かせて?

僕はニコだよ


誤魔化した。この名前で僕を呼ぶのは幼馴染のリムだけ。笑だからニコなんて安直だけど、この名前が僕は嫌いじゃない。さすがに本名を書く気にはならなかった。想像の中の僕が崩れ去ってしまうから。僕はそれだけ書き残すと音楽室を後にした。


学校から僕の家までは歩いて15分ぐらい。とくに苦になるような距離でもない帰り道を僕はのんびり歩いていた。夕暮れの街はキラキラ輝いていて僕の足取りは不思議と軽かった。

「・・・嘘だろ」

そんな僕に突然の衝撃。僕の視界にありえないものが映った。

「よう、チビ」

「・・・どうしたの黒崎君?君こっちじゃないだろ?」

僕と黒崎君の身長差は30㎝弱。市販の髪染めで無理に染めた汚い金髪。迫力がある。

「あ?お前に用があんだよ。リムは俺の女だから。二度と話しかけんなよ。見つけたらコロスから」

何を言うかと思えば。リムが誰と付き合おうが僕には関係ない。拒否する理由もない。

「うん」

僕は短く肯定した。

「そうか。言うこと聞いてるうちはイジメないでやるよ。感謝しろよー」

そう言い残すと黒崎君は帰っていった。

正直反吐が出るほど彼が嫌いだが僕は言うことを聞くしかない。僕は弱いから。

さっきまでキラキラ輝いていた街がひどく汚れて見えた。


12/8

この日も朝早くにあの場所へ僕は向かった。わからないけど返事が来ているって確信があったんだ。昨日黒崎君が言ったリムの事が頭に引っかかっていたのを振り払いたかっただけかもしれない。グラウンドを横切ったけど、朝練をしているリムの姿は見つけられなかった。


黒板には


シロです

よろしくニコ


とだけ短く書いてあった。

「シロって犬かよっ」

相変わらず黒板に突っ込むのは空しかった。

でも、僕も本名じゃないんだし文句は言えないよな。

会話終わっちゃったよね。RINEとかでもよくあるじゃん。既読スルーとかさ。

話題が無くなったら次の話題探しが難しいと思うのって僕だけじゃないはず。

ここで終わりたくない。そんな僕が必死に絞り出したのが


犬とか好き?


だった。バカか僕は。

キーンコーンカーンコーン

予鈴だ。僕は名残惜しくも教室を後にした。


「おはよーニコっ」

教室に着くとリムが話しかけてきた。

「おは・・・」

ふと昨日黒崎君が言ったことを思い出して僕は無視した。

別にリムが憎いわけじゃない。僕の事をイジメるような奴と付き合った裏切り者とも思わない。ただ僕が卑怯なだけだ。でもいいじゃないか。リムだって僕を助けてくれなかったんだから。

「なによー無視なんてして?」

っつかってくるリム。無視してもこれからも話しかけてくるだろうから一言だけ冷たく僕は言い放った。

「お前なんか嫌いだから二度と話しけるな」

「え?」

リムの悲しそうな顔を思い出すと今でも辛くなる。でも僕にはこうするしかなかったんだ。

「わかったよごめんなさい」

そう言ったっきりリムが僕に話しかけてくることはなかった。


お昼休み。僕はすぐにまたあの場所へ行こうとしたけどふと目に留まった。僕を寂しそうに見つめるリムの姿が。

「おいリム!二人きりで飯食おうぜ」

黒崎君がリムの肩に馴れ馴れしく手を置いている。彼氏なんだから当然か。

黒崎君がいるならリムは大丈夫か。大丈夫ってなんだよ。僕なんかに心配される筋合いないじゃないか。黒崎君は僕をイジメるけどリムには優しいのかもしれない。

リムの笑顔が無理して作っているものだなんて当時の僕に気づくことは不可能だった。

気にせずあの場所へ。


いつもは軽い足取りが今は少し重かった。

そういえば僕、犬好き?とか頭悪い話題振ったんだった。下手したら返事なんてないかもしれない。

ガラガラ

恐る恐る黒板を確認すると


好きですよ

飼っているのは猫ですが(笑)


「だから(笑)ってなんだよ」

相変わらず黒板に突っ込んでしまう。もう相手がどんな人物か想像もつかない。

本当にあのラフマニノフを弾いていた人なんだろうか。いや、余計なことを考えるのはやめよう。今は、僕が唯一コミュニケーションを取れる彼女を大事にしよう。

黒板に向かって文章を考える。話題選びってこんなに難しかったのか。

書いては消してを繰り返して僕が書いたのは


猫もいいよね


「だからアホかっ!もうイケメンでもなんでもないじゃん。ただの僕じゃんっ!」

キーンコーンカーンコーン。

もう書き直してる時間もない。僕は慌てて教室に走った。


ドンっ!

教室に急ぐ僕は中庭で何かにぶつかった。

「いててて」

「大丈夫かい?君?」

僕に手を差し出す女性。艶やかな黒髪に絹を思わせる透き通った肌。すらっと伸びた手足に凛々しい瞳。全身から気品が漂っている。

「九条院会長?!」

九条院会長その人だった。生徒会長であり九条院財閥の跡取り娘。成績も常にトップで非の打ちどころのない大和撫子。僕なんかは会話すら許されない雲の上の存在だ。

「貴方!姫様になんてことをっ。姫様お怪我はございませんか?」

「大丈夫だよ。そんなことより彼は」

取り巻きが僕に向けていろいろ文句や罵声を浴びせているけど、僕の瞳には会長しか映らなかった。それほどまでに彼女は美しかった。

「僕は大丈夫ですっ!すみませんでした」

今すぐにでもここから離れたい。会長にぶつかったなんて知られたら今までの非にならないぐらいイジメられる。全学年から。

「そうか、それはよかった。そんなことより君が今来た方向は」

「いや、もう、ほんと。すみませんでしたー!!」

僕は陸上選手もビックリの速度で逃げ出した。リムよりずっと早い・・・いや、リムなんてもうどうでもいいんだ。女々しいな僕。



SIDE  マシロ

12/6

「会長。この書類を見てくだ」

副会長が。

「もうその案件は解決しているわ。他に議題は」

「運動部の部費の件ですが」

平部員が。

「私が昨日直接出向いて理解していただきました。他には?」

「2階廊下のガラスの件ですが」

書記が。

「もう業者を手配してあります」

「さすが会長!」「会長流石です」「会長お見事!」

みんなが言う。もうやめてくれ。頼むからこれ以上私に期待しないでくれ。

「会長ももう引退かぁ。ずっといてくれないかなぁ。そうしたら星高も安泰なのに」

バンっ!

書類を大げさに机に叩きつけて整える。

「他に議題はないみたいだね。失礼するよ」

私は生徒会室を後にした。


「ふざけるなっ!」

何がずっといてだ。私はすぐにでもこんな仕事やめたいんだ。

九条院の娘だからってずっと重責を担ってきた。

もうたくさんだ。自由になりたい。

私は足早にあの場所へ向かった。


旧校舎2階の角部屋の旧音楽室。こんなところ私意外誰も来ない。

窓を開けると心地よい風が吹き込む。

ここだけが私の安らぎ。私が私らしくいられる場所だった。

いつものようにピアノに手をかける。

ここでピアノを思いっきり弾く事でしか私はストレスを発散できずにいた。

今日選んだのは今の私の気分にぴったりの曲。

これはもしかしたら私から誰かに向けたSOSだったのかもしれない。

夢中で貪るようにピアノを弾いていたら、階下から物音が聞こえた。

「こんなところにいったい誰が?」

私は慌てて演奏をやめた。足音はどんどん近づいてくる。

「隠れないとっ!」

こんなところにいたとバレてしまえば大変なことになる。

私は、慌てて掃除用具ロッカーの中に身を隠した。


ガラガラ。

「誰かいるの?」

可愛らしい細い声が聞こえてきた。ロッカーの中にいる私は姿を確認することができない。

なんでもいい。早く行ってくれ。

私の願いが届いたのかその人は何かボソボソと呟くと教室を出て行った。

「ぷっはぁ」

息苦しかった。掃除用具ロッカーの中ってこんな感じなんだ。恐らく私の長い人生の中で、もうこんな機会は訪れないだろう。

また来るかもしれない。

「早く片付けないと」

窓を閉めて椅子を直し鍵盤にクロスを敷いて蓋をしめる。一通りの作業を終えた私の目に正面の黒板が映った。


あなたは幸せですか?


さっきの人が書いて行ったのだろう。普通ならこんな不気味なメッセージは無視をするところ。しかし


いいえ

何故そんなことを?


不思議と私の指は返事を書いていた。どうなってもいい。今の私の気持ちを私を知らない誰かに伝えたかった。


あのメッセージはいったいなんだったんだろうか。声だけしか確認できなかったその人は、女性のように思えたし、中世的な男性のようにも思えた。私の頭の中はそのことでいっぱいだった。3年生はこの時期自由登校で生徒もまばらだ。生徒会の仕事を終えた私はまたここに戻ってきた。もしかしたら返事が来ているかもしれない。黒板を確認する。


君のピアノが泣いていたから

もしよかったら涙の訳を聞かせてくれるかい?


「なにこれ?」

私の中のイメージとはまったく一致しない。まるで王子様みたいだ。あの可愛らしい声でこの感じ。なんだか可笑しくて私の警戒心は少しだけ薄れていた。返事を書こう。でもどうしたら。今は取り繕う必要もない。この黒板の中では私は私なのだから。気持ちを素直に打ち明けた。


わたしには友達がいません

誰も本当の私を理解してくれない

寂しいです・・・


教室を後にして校門を出ると運転手の佐藤が迎えに来ていた。

「お嬢様おかえりなさいませ」

「えぇ、ただいま」

本当は歩いて帰りたいなんて言えない。お父様の指示は絶対だしワガママは佐藤さんに迷惑をかける。

小さな積み重ねがイライラを募らせ、この最高級のリムジンのシートを座り心地の悪いものにしていた。


「マシロ、学校はどうだ?」

夕食の席いつもは無口な父上が突然話しかけてきた。

「楽しいです」

あまりに突然で、ありきたりな返答しかできなかった。

「そんなくだらん事を聞いているんじゃない。成績はどうかと聞いているんだ」

父上の顔が険しくなる。

「すみません。成績も問題なくT大へのA判定が出ています」

「そうか。まぁ、九条院の人間なら当然だな。引き続き精進しなさい」

「はいお父様」

食堂を出ていくお父様の背中が遠い。まるで他人みたいだ。

ただ一言褒めてくだされば私は満足ですのに。もう少しゆっくりと家族の会話を楽しめる食卓になれば満足ですのに。そんな当たり前の家族を求めることすら私には許されない。

こんな私に生きている価値なんてあるのかしら。

「ごちそうさま」

「もうよろしいので?」

執事の田中が心配そうに私を見つめる。

「えぇ、もうけっこうです」

「かしこまりました」

余計な事を聞かれたくない。私はさっさと自室に戻った。


部屋のベッドに勢いよく寝転ぶ。

ここには、はしたないなんて注意してくる人は誰もいない。思いっきり羽を伸ばせる。

ヘヤピンを外して口に咥える。ベッドの脇にある洋タンスの蓋を開け、小さな穴に引っかけて二重底を引っ張ると、中からお菓子とラノベを取り出した。

勇者王ガルダイン。私の大好きな作品。子供っぽいかもしれないけれど、この作品に何度くじけそうなところを助けられたか。

「やっぱりガルダイン様はいいなぁ」

辛いことなんてすっぱり忘れさせてくれる。時間を忘れて私はガルダイン様の勇士に見入っていた。

「そろそろ寝ないと」

入念にお菓子のごみとラノベを片付けて部屋の電気を消した。

いつもならすぐに眠れるのに、何故か目がさえてしまった。

考えるのはもちろん黒板の書き込み。

どうしてあんなこと聞いたのだろう。果たして、返事はくるのだろうか。

夜が長く感じた。


12/7

「おはようございますお嬢様」

「えぇ、おはよう」

食事を済ませて車に乗り込む。九条院の娘に惰眠を貪るなんて贅沢は許されない。誰よりも早く学校に着いて時間を有効に使わなければ父上から雷が落ちる。

私は人形。そう思い込むことで私は人前で九条院の娘でいられる。本当の私なんて理解してもらう必要もない。でも、黒板の君だけは・・・そう思う自分がいるのも事実だった。


学校に着くとまっさきにあの場所へ向かう。この時間は誰もいないので本当に便利。

ピアノを弾くよりも早く黒板を確認する。学校に何かを期待するのは初めての事だった。


どうか泣かないで

俺がいるよ

俺じゃ君の力になれない?

友達になろう

俺なら本当の君を理解してあげられる


////。

体が熱くなるのを感じる。この人はきっと私の王子様なのかもしれない。

キザな言葉も気にならなかった。こんな状況から私を助け出してくれる王子様。私は見えない彼に思いを馳せた。

Pipipipipi。スマフォのアラームで我に返った私。いけない生徒会室に急がないと。

慌てて返事を書いて飛び出した。


ありがとう

私でよければ是非

ピアノお好きなんですか?


生徒会室に向かう道で女生徒が男子生徒に絡まれていた。

下から階段を上がる私の前にいる彼ら。どう頑張っても近くを通らなければならない。

優しい完璧な生徒会長で通っている私が無様を晒すわけにはいかない。

正直めんどくさいけど仕方ないか。

私は二人の間に入っていった。


「なぁいいだろリム~?」

「いやっ離して」

「なんでだよ?俺の何が気にいらねぇんだ?」

男子生徒がいら立ちを隠せずに女生徒の手をさらに強く掴む。

「だったら、お前さえ我慢したら昨日言ったこと聞いてやってもいいぜ。お前あのチビが好きなんだろー?」

「え?それって」

聞くに堪えない。

「そこまでだ君たち。もうすぐ授業が始まる時間だよ。それとそこの君。女の子には優しくするものだよ」

「あんだよてめぇっ?って会長?!」

「あぁ・・会長さん」

二人は私の顔を見て口論をやめてくれた。たまには有名なことも役に立つ。

「ほらさっさと行った」

「っち。わかりましたよ。リム、話はまだ終わってねぇからな?」

そう言い残し男子生徒が教室に走っていく。

「ほら君も」

「・・・はい」

可愛らしいポニーテールを揺らして女生徒も教室に向かった。

元気がないのが気になったけど私には関係ないな。


「まったく。無駄な時間を取られてしまった」

そう愚痴りながら生徒会室に向かう。まだ十分間に合う。

15分前行動を常に心がけている私がギリギリに着いたのが余程おかしかったのかメンバーたちが目を丸くしていた。

「みんな揃っているようだね。それでは会議を始めようか」

誤魔化した。だって遅刻ではないのだからいいじゃないか。

「えーそれでは今日の議題ですが」

副会長の声。また意味のない会議が始まる。

私の頭は完全に黒板の君のもとに向かっていた。


退屈な会議を終えて私の足はまたあの場所へ向いていた。もうピアノを弾くためだけではない。改めて自覚した。私は黒板の君との会話を楽しみにしてる。

「会議が長引いたせいでお昼休みに少し食い込んでしまったな」

昼休み外で食べる生徒も少なくはないのでなるべく目立たない裏道を使いあの場所へ向かう。ようやく建物が見えてきて安心した私の耳にピアノの音が飛び込んできた。

「っぷ。チューリップ?」

なんとも可愛らしいピアノだ。無邪気でそれでいて優しくて。この場所に来るのは私と黒板の君しかいない。きっと彼が弾いているのだろう。そう思うとたまらなく愛しく思えた。

「しかし、いやそれはダメだ」

ふと気づいてしまった私。必死に自分を押さえつける。今急いで向かえば黒板の君に会えるのではないか?という考えがよぎった。でも、それではこの甘い夢が覚めてしまう気がして。

私は、旧音楽室の下の茂みに腰を下ろして、昼休みが終わるまで彼のぎこちないピアノに聞き入っていた。


キーンコーンカーンコーン。

彼が旧校舎から出てきた。慌てて隠れる。確認できた後ろ姿はとても小さかったが思った通り男の子だった。


旧音楽室に入るとまず黒板を確認する。今は、これが何よりの楽しみ。


たしなむ程度にね

あまり詳しくはないよ

でも君のピアノは僕の心に響いた

心が感じたままに動いた

だから君に出会えた


「え?」

私を動揺させたのは、メッセージがキザなことでもピアノをたしなむ程度にという彼の可愛い強がりでもない。

「心が感じたままに動く・・・か。ってガルダイン様?!」

黒板に突っ込むなんてはしたないけどそうせずにはいられなかった。

ガルダインは私の中では神作だが全体的に見ると評価は低い。アニメ化もされたが円盤の売り上げが伸びず2期は絶望的なほどだ。そんな数少ない同志を見つけた喜びに私の心は震えていた。慌ててメッセージを残す。


ガルダインいいですよね

あと、ピアノ下手くそですね(笑)

でも、すごく優しい響きでした


下手くそは言い過ぎたかもしれないから(笑)をつけてみた。少しお茶目な感じが出て我ながら名案だったと思う。

ピアノが好きでガルダインが好き。私はますます彼に興味を持った。


会議も今日は終わったし特にやることもない。しかしここにいたら彼と鉢合わせる可能性があるため、私は図書館で勉強をすることにした。しばらく参考書とにらめっこ。


「もう夕方か・・・」

我ながら呆れるほどの集中力だ。参考書を片付けて帰り支度を終えた私の耳になにやら怪しい声が聞こえてきた。

「いやっ」

「お前がいいって言ったんだろ?」

「でも・・・ん」


えー?!本棚の陰でカップルがキスしてるんですけどぉ。思わずキャラがブレるほど驚いた私。実に羨まけしからんっ!おっと、アホな事を考えている場合ではないな。ここは神聖な学び舎の図書館だ。開いていいのは股ではなく本だけだ。何を言っているんだ私は落ち着け。


「こら君たち何をして・・・また君たちか」

私が本棚の陰まで行くと昼間の男女が抱き合っていた。

「あ・・・会長」

「っち。また会長かよ」

悔しそうに舌打ちをする男子生徒。うつろな目で私を見つめる女生徒。

「そういうことはしかるべきところでしなさい。何もするなとは言わない。TPOを弁えなさいと言っているのです。ほら、わかったら帰りなさい」

私がそういうと男子生徒は私を睨みつけて、女生徒は何か言いたげな視線を向けたあとに帰っていった。

「あぁ、どっと疲れたな。そろそろ返事は来ているだろうか」

私は少し重い足をあの場所へ向けた。


よければ君の名前を聞かせて?

僕はニコだよ


「誤魔化したわね」

黒板にはそれだけ書かれていた。きっとガルダイン好きだってバレて恥ずかしくなったんだわ。ピアノの事も含めて。やっぱり可愛らしい人。例え違ったとしても私の妄想なんだから好きにさせてくれ。

「ニコ・・・かぁ」

その名前を呟く。きっと本名じゃないだろうけど私にはそれで十分だった。いつまでも黒板の君では座りが悪い。彼の事を名前で呼べることが何より嬉しかった。

さっそく返事を書こう。私はマシロ・・・いやこれでは私だとわかってしまうな。何か捻らなければ・・・


シロです

よろしくニコ


しばらく考えて出てきたのは、結局自分の名前をモジった安直な名前だ。なんだか犬みたいとか思ったけど時間もないし仕方ない。ちょっとした心残りはあったけど私は旧音楽室を後にした。


帰り道の車の中。

滅多に話しかけてこない運転手が話しかけてきた。

「お嬢様、なにか良いことでもありましたか?」

「え?どうしてそう思うの鈴木?」

「いえ、なにやら良いお顔をされていましたので」

「そんなことないわよ。運転に集中しなさい」

「はは、かしこまりました」

ミラー越しにわかるほど私の顔はにやけていたんだろうか。気を引き締めなければ。この後すぐにお父様と食事なのだから。長年仕えてくれている運転手さんにすら素直に自分の事を話せず冷たく突っぱねる私は、さぞ滑稽だっただろう。


夕食時の食堂。

私は少し不機嫌な父と対峙していた。

「マシロよ。何をにやけているんだ?」

うるさく父の指で机を叩いている。とっさに俯く私。

「すみませんお父様」

家族だというのに他人より遠いこの男性を私は何より恐れた。

「謝罪をもとめているんじゃない。何をにやけているのかと聞いているんだ!」

父の語気が強まる。もう嫌だここから逃げ出したい。何も答えられない私。

「もういい。九条院の娘たる者がそんな弛んでいては困る。以後気を付けるように」

しばらく黙り込んでいた私に呆れた父は食堂を出て行った。


「お前は誰だ?」

自室の大鏡の前で私は無駄な問いかけをしていた。

やりすぎればゲシュタルト崩壊を起こして自分を保てなくなるらしい行為。

でも、自分を保つ?そんな必要がどこにあるというんだ。

私は人形だ。九条院の人形。

「哀しいな私は」

詩人にでもなったつもりか。辛いのは何も私だけではないんだ。メンヘラのサブカルクソ女みたいな感傷に浸りたいわけじゃない。ただただ・・・辛いんだ。


ベッドに飛び込んで目を閉じる。嫌なことは寝て忘れてしまうに限る。

ふと頭に浮かんだ言葉。

「・・・ニコ」

無意識に呟いた一言。私はまだ見ぬ私の王子様に思いを馳せた。

そしてささやかな祈りをして眠りについた。どうかいい夢が見られますように。


12/8

犬とか好き?


黒板にはこんな短いメッセージが黒板に残されていた。

「やっぱりシロなんて名前にしたから・・・」

失敗した。私はアホの子かと思われたのかもしれない。

いやいや、ネガティブになるのはやめよう。

でも、知的な私も見せていきたいのも事実。しばらく考えて私が書いたのは


好きですよ

飼っているのは猫ですが(笑)


「って何を嘘ついてるんだ私はっ」

会話を繫ぎたくて。でも人形の私には何もなくて、口をついて出たのは嘘だった。

マシロはシロとは別人。そう割り切ることで私はこの嘘を無理に自己肯定した。


生徒会室でのまた無意味な会議が始まる。

全員が私に意見を求める。人形の私に意見を求める彼らは果たしてなんなのだろうか。

会議が終わる。役員たちが去った生徒会室で頬杖を突く私。

窓から流れる雲を眺めていた。

「雲はいいなぁ自由で」

突き抜けるような快晴は私の心を余計に陰鬱にさせた。


キーンコーンカーンコーン。

ぼーっとしていたら眠ってしまったみたいだ。

お昼時。授業が終わった生徒達の喧騒が廊下から聞こえてきた。ニコからの返信が来るのは恐らくお昼過ぎ。ゆっくりご飯を食べてからあの場所へ向かおう。

「会長~こんなところにいたんですか。ご飯の時間ですよ」

副会長とその他の女生徒が私を迎えに来た。取り巻きというやつだ。

できれば一人で食べたい。誰かに気を遣うのは面倒だ。しかし、せっかく食事に誘ってくれた同級生の誘いを理由もなく断るなど九条院の娘には許されない。

「ええ、すぐに行くわ」

私は精いっぱいの愛想笑いを浮かべた。


今日は天気がいいから中庭で食べましょう、という副会長の提案で食事は外で摂ることに決まった。いくら天気がいいからってもう12月ですよバカなんですか貴方は?という言葉は飲み込んだ。

「あ``~寒い」

「会長?何か言いましたか?」

まずい。素が出てしまった。慌てて誤魔化す。

「なんでもないわ。副会長のお弁当おいしそうね」

「本当ですか?嬉しい。私の妹が作ってくれたんですよ。陸上を頑張っている自慢の妹なんです。もっとも、つい最近彼氏ができたみたいで部屋に籠って何かしているのが心配ですが・・・」

聞いてもないことをペラペラと。しかし、この副会長のコミュ力に何度も助けられたこともありあまり邪険にするのも気が引けた。

「妹か。私は一人っ子だから羨ましいよ」

えー会長って一人っ子なんですかぁ?とか取り巻きがわーわーと騒いでいる。副会長以外とはあまり会話をしたくないな。適当に相槌を返して食事を終えた。

「会長。この後のご予定は?よければ一緒に駅前のパフェを食べに行きませんか?」

「すまないが、少しやりたいことがあってだね。遠慮させてもらうよ」

「そうですかぁ。次はは付き合ってくださいよ~」

「あぁ、機会があればね。よければ校門まで一緒に行こう」

「本当ですか?ありがとうございます」

副会長含め取り巻きもワーワー騒いでいる。

ニコからの返事までまだ少し時間がある。少しでも印象を良くしておかねば。


どんっ!

中庭をつっきって後者の角を曲がった私に何かがぶつかった。

「いててて」

目の前に背の小さな男子生徒が転んでいた。

「大丈夫かい?君?」

手を差し伸べる私。

「九条院会長?!」

私を見て表情を凍り付かせる男子生徒。やはりここでも私は九条院の娘か。

「貴方!姫様になんてことをっ。姫様お怪我はございませんか?」

大げさに男子生徒を責める取り巻き。

「大丈夫だよ。そんなことより彼は」

「僕は大丈夫ですっ!すみませんでした」

首が取れるんじゃないかってほど頭を下げる男子生徒。

「そうか、それはよかった。そんなことより君が今来た方向は」

グラウンドの向こうから走ってきた男子生徒。

「いや、もう、ほんと。すみませんでしたー!!」

男子生徒は脱兎の如く逃げ出した。

彼はもしかして・・・無意識に呟いた。

走り去っていく後姿を見つめる。

「・・・ニコ?」


SIDE リム

あたしがニコを好きになったのはいつからだったかな。

今でもよく覚えてる。あれは小学校3年の夏。

当時から男勝りで周りからも女の子扱いされてなかったあたし。

少しでも女の子として見てほしくて伸ばしていた髪を

「似合わねーから切っちゃえよ。陸上やるのに邪魔だろ?」

と心無い一言でクラスの子に傷つけられたことがあった。悪気がないから余計たちが悪い。

悲しくて、でも泣いているのを馬鹿にされたくなくて

「いいわよっ!こんなもの!」

と言って近くにあったハサミで衝動的に切ろうとした。

それを優しく止めてくれたのがニコだった。とびっきりの笑顔で

「せっかく綺麗なんだからもったいないよ。それにこうしたら走るのに邪魔じゃないでしょ?」

そう言って可愛いピンク色のリボンをくれた。あの日からあたしがしているこの安っぽいリボンとポニーテールが宝物になった。誰に何を言われても気にならない。

あたしはニコが好き。これだけはあたしのホンモノ。

それがどうしてこんなことになっちゃったのかな。

きっとこれはあたしへの罰なんだ。人の痛みを理解できなかった。


ニコがイジメにあってるのは知ってた。

理由まではわからなかったけど。

でもその状況があたしにはたまらなく都合がよくて。ニコが誰かに取られちゃう心配をする必要もないし。あたしだけがニコの傍にいられればそれでいいの。


星高に入ってすぐにあたしは黒崎に告白された。

俺の女にしてやるとかいう俺様ナルシストの告白をOKするなんてありえない。

そーっこーで断った。そもそもあたしはニコ以外興味ないんだから。

きっぱり言ってやった。あんたみたいな不良はありえないって。

その日から彼は学校をサボらなくなった。髪だけはポリシーみたいで汚い金のままだったけど。そうやってあたしに好かれようとする努力をされるのははっきり言って迷惑だった。

そうしてしばらくたった頃、何度言っても諦めない彼にあたしは今度こそはっきり言ってやった。あたしはニコが好き。と。

あの時の黒崎の顔は本当に傑作だった。

とにかく、これで面倒ごとは片付いたとこの時は本気で思っていた。

まだ暖かい春の話。


おかしいと感じたのはゴールデンウィーク明けから。今までは、スムーズと言えなくとも会話はできていたニコと上手に話せなくなった。原因がどうしてもわからないのにニコに避けられる。あたし何かした?と聞いても、べつに、と短く答えるだけ。

あたしの大好きなあの笑顔は遠くに消えてしまった。


夏に入ったころ、あたしは知りたくない事実を突きつけられた。

クラスの女友達から聞かされた。水島イジメられてるってさ。いや、冗談じゃない。

どうにかして助けてあげたかったけど、ニコ本人がそれを嫌がった。余計な事するなって。

その時のニコの俯いた表情がとても辛そうで、あたしは怒ることもできなかった。

元気がなくなっていくニコを見ているのは胸が締め付けられる思いだったけど、あたしは芽生えた黒い感情にこの時もう飲まれていた。

ニコは、背は小さいけど顔は可愛らしくて声も幼い。ショタっぽさでわりと中学のころから女子に人気があった。何度嫉妬させられたか数えきれない。バレンタインのチョコだって一生懸命頑張ったのに渡せなかった。

でも、今だけは誰もニコをちやほやしない。あたしだけがニコの傍にいられる。

小学校の時に芽生えた淡い恋心は、時間がたつに連れて黒い醜い独占欲に変わっていた。


12/5

3時間目と4時間目の間の休み時間。

「ニコどうして体操服を着てるの?」

体育もないのに体操服を着て廊下を歩いているニコがどうしても気になった。

髪も少しだけ濡れている。雨も降ってないのに。

「・・・関係ないだろほっといてよ」

ニコは吐き捨てるように言って去ってしまった。

「おっと待ったぁ」

慌てて追いかけるあたしを止めたのは黒崎の足だった。

吐き気がするほどのニヤケ面でニコの背中を見ている彼。

「なぁリムぅ、あんな雑魚チビのどこがいいんだよ?いい加減俺のもんになれよぉ」

パンッ!

そう言ってあたしの顔にキスしようとしてきた横面を思いっきり引っ叩いてやった。

「生憎あたしはそんな安い女じゃないの。いい加減諦めたら?」

ニコに相手にされないフラストレーションを思いっきり黒崎にぶつけてやった。

この時疑念は確信に変わった。。主犯は黒崎だったんだって。

「っち。後悔しないといいけどなぁ」

捨て台詞を残して黒崎は教室に戻っていった。

嫌な胸騒ぎがしていた。


12/6

今日はなんだかニコの様子がおかしい。朝はいつも通り暗い感じだったのに。

いや、いけないわけじゃないけどなんだか気にいらないわ。あんなにイキイキしたニコの顔を見るのは久しぶりだった。知りたい。どうしてニコがあんな顔しているのかを。

ずーとニコの横顔を見つめていたけど、少しもこっちを見ないんだから。

あたしは先生に前を向けなんて注意されちゃったけどそれすらも気づかないぐらいずっと天井を見つめてニヤニヤしていた。気にいらない。絶対に放課後問い詰めてやるんだから。


キーンコーンカーンコーン。

計画は完全に出鼻をくじかれた。ニコったらあたしが呼び止めたのに余計なお世話だなんて言って出て行っちゃった。

「陸上部の足を舐めんじゃないわよ」

あたしはクラウチングスタートの構えを取ってニコの追走に向かおうとした。

ニコは小さいし運動神経もたいして良くない。まぁそこが可愛いんだけど。構えをとって走り出しても十分追いつける予定だった。黒崎に邪魔されなければ。

「リムぅ~どこ行くんだよ一緒に帰ろうぜー」

あたしの手を掴む黒崎。

「いやだ、離してっ!!」

慌てて振りほどこうとするけど男の人の力には敵わない。

その態度が気にいらなかったのか黒崎はさらい腕に力を込めた。

「だからぁ~何が気にいらねぇんだよ?俺と付き合いたい女なんていっぱいいるんだぜ?」

確かに黒崎はモテる。不良ってなんであんなにモテるのかしらね。あんな汚い金髪のどこがいいのか。あたしには理解不能。

「だったら他の女の子に相手してもらったら?あたしは忙しいの。いい加減離して」

なるべく冷たく告げる。

ドンっ!

「だからぁ~。何が気にいらないか言えよっ!」

黒崎が壁を殴った。みんなが怯えている。

「やめなさいよ!みんな怯えてるじゃない。そういう人の痛みをわからないところが大嫌い。」

「人の痛みぃ?雑魚の考えなんて俺には関係ねーだろ。弱ぇのが悪りぃんだよ」

信じられない。こんな奴絶対にあたしは受け入れない。

「あんたがそんなだからニコが・・・ニコがっ!」

ニコから笑顔を奪ったのはこいつだ。許さない。

「ニコぉ?あの雑魚チビの事か。お前あんなんのどこがいいんだよ?俺のがイケメンじゃねーか」

掴んだ手を引っ張って顔を近づけてくる。

っぺ。

あたしはその顔に唾を吐きかけてやった。その唾を拭う隙にあたしは手を振り払った。

「おもしれぇ。お前がそんな態度なら俺もやりたくねーけど。あの雑魚1か月以内にガッコ来れなくしてやんよ。ワンチャン自殺すんじゃね?したらウケるわ」

え?こいつ今なんて言ったの?

「やめて。これ以上ニコに酷いことしないで」

得体のしれない感情に支配されたあたしの口から零れたのはそんな弱気な言葉だった。

「やめてぇ?やめてくださいの間違いだろ?」

「っ!ふざけ」

「コラーっ!お前ら何してんだっ?!」

騒ぎを聞きつけた教師が来た。

「っち。んでもねーよ!」

「コラ黒崎待ちなさい」

教室の扉を荒々しく開けて出ていく黒崎を追いかけて教師も出て行った。

教室に残されたあたしはしばらくその場に座り込んで動けなかった。

明日からどうなっちゃうんだろう。お願い止まって。あたしの意思とは裏腹に、体の震えは教室からみんながいなくなるまで止まらなかった。


12/7

「リム~あんた気が抜けてるんじゃないの?」

あたしの気の抜けた走りを見て注意する部長。

今は陸上部の朝練の時間。本当は教室でニコを見守ってあげたいけどそうはいかない。

自分で言うのもなんだけどあたしは短距離で割と期待されてるから。

「すみません部長」

そう言ってもう一本走り出そうとすると

「男でしょ~違う?」

先輩があたしの肩に手を乗っけて絡んできた。

「そんなわけないじゃないですか!」

あたしはこういう冗談が嫌いだ。ニコはあたしの方を見てくれないんだから。

「うそつきぃ~。ほらあっち」

フェンスの向こう。先輩が指さす先にはあいつがいた。黒崎。

「けっこうイケメンじゃない彼。あんたも隅におけないねぇ」

あたしの脇腹を肘でつっついてくる先輩。頭が真っ白になった。

「ほらもう朝練も終わるしあんた先にあがっていいわよ。彼待たせてるんでしょ?」

いらない気づかいだ。でもここで断るのも先輩たちに悪いし。

「はい・・・」

仕方なく更衣室で着替えてグラウンドを後にする。

当然だけど黒崎の方になんて行かない。廊下は走っちゃいけないなんてルールも知らない。

あたしは教室へ急いだ。ニコを守るために。


教室に着くと黒崎の粘り着くような嫌な視線が待っていた。

「よぉリム。おつかれぇ~」

このチャラ男みたいなノリが嫌いだ。無視した。そんなことより

ニコはっ?ニコはっ?

教室中を見渡してもニコはいなかった。まだ来てないのかな。

・・・・トントントントン。

しばらくたってもニコは来なかった。まさかっ!黒崎の方に視線を送ると悪そうな男友達と机に脚を乗っけて盛り上がっていた。あいつじゃないのか。ほっと胸を撫で下ろす。

キーンコーンカーンコーン。

もうチャイム鳴っちゃったわよ。何してんのよっ。

ガラガラ。

HRの始まる直前慌ててニコが入ってきた。

「あんたなにやってたのよ?」

ニコを問い詰める。

「関係ないだろ」

いつもみたいに軽く流される。なんだかニコの表情はまたイキイキしていた。

「なによっ。人の気も知らないで」

誰にも聞こえないように呟いた。

でもどうしても気になってもう一度後ろを振り向く。ニコを睨んでる黒崎と目が合った。


居眠りなんて滅多にしないのに。気を張っていたせいかあたしは授業中ずっと寝ていた。

起きたらニコと黒崎の姿がない。まずい。

「ニコどこ行ったか知らないっ?!」

近くの男子生徒に聞いた。

「ニコ?誰の事?」

要領を得ない。それもそうか。呼んでるのはあたしだけだし。

「黒崎は?」

あたしが聞くと少しだけ怯えたように体を震わせて彼は答えた。

「男子トイレの方に行ったよ。水島も一緒だった。あれはまたやられるね」

どこまでも他人事のように話す彼にムカついたからキッと睨みつけてやった。

そして慌てて男子トイレに向かう。


「あたし入れないじゃないっ」

一人突っ込み。ノリがない分余計に寒い。

どのトイレかもわからないし間違えて入った時が悲惨すぎる。明日から学校イチの痴女の称号が付いてしまう。

あたしは諦めて来た道をトボトボと帰った。

少ししてご機嫌な黒崎と俯いたニコが教室に帰ってきた。

よかった。怪我はしてないみたい。誰もニコを心配しない。薄情な奴らめと思う反面あたしは都合のよさを感じていた。ニコはあたしだけのもの。


3時間目の中休みに黒崎に呼び出された。

断ったけどすぐ終わるからって。仕方なくあたしは教室近くの階段へ。


「俺の言いたいことわかるか?」

呼び出してきて少し遅れてきた黒崎。さっそく仕掛けてきた。

「何よ?さっさとして。あんたと話すことなんてないんだから」

なるべく冷たく突っぱねる。弱みなんて見せたら壊される。

「へ~そんな態度でいいのかよ?ニコだっけ?かわいそうになぁ」

語尾を上げてあたしを挑発してくる。許せない。

「っ!あんたがそれを言う?!」

あたしもすかさず噛みついた。

「ニコだかザコだかしらねぇけどよぉ、もう殺そうかなぁ」

黒崎はどこか遠くを見つめている。完全に目がイッてしまっている。

「やめて。お願いだから」

あたしは弱い。そして醜い。そんなのわかってる。

「キスしろよ」

「え?」

一瞬理解ができなかった。

「今ここでキスしろって言ったんだよ。なぁいいだろリム~?」

やっぱ下種野郎だこいつは。

「いやっ離して」

ジタバタ。全力で抵抗する。

「なんでだよ?俺の何が気にいらねぇんだ?だったら、。お前さえ我慢したらあのザコチビのことは構わないでいてやるよ。あのチビが好きなんだろー?」

「え?それって」

あたしさえ我慢したらニコは救われる。あたしのお陰でニコが助かる。あたしのお陰で。

我ながら最低だと思ったけどあたしは悩んだ。自己犠牲ってやつ。

「そこまでだ君たち。もうすぐ授業が始まる時間だよ。それとそこの君。女の子には優しくするものだよ」

あたしを正気に戻したのは凛々しい女性の声だった。

会長?あれは九条院会長だ。なんでこんなところに。

会長に注意された黒崎は恨めしそうに

「っち。わかりましたよ。リム、話はまだ終わってねぇからな?」

と吐き捨てて教室に戻っていった。助かった。何から?あたしは今何から助かったんだ。

「ほら、君も」

会長に促されあたしも教室へトボトボと俯きながら戻る。頭の中がグルグル回っていた。


お昼休み。相変わらずニコはどこかへ行ってしまう。

黒崎があたしに近づいてきた。

「じれったいから言うわ。今日の放課後図書館。それが俺の女になる最後のチャンス。そっから先はもうどうなっても知らね。かわいそうなニコ君~ウケるわ」

黒崎がそれだけ告げて去っていく。これ以上あたしに何を考えろっていうんだ。

放課後まであと3時間弱。人生でこれほど3時間を短かいと感じたことはなかった。

「ニコ・・・」

授業中、無意識にふと呟く。自然と流れる涙を止められない。助けてほしくて後ろを振り向いた。相変わらずニコは何かを考えて上の空だった。


キーンコーンカーンコーン。

あたしの気持ちなんて関係なく鐘は鳴る。ニコを助けるにはあたしが。でもそれはニコを・・・。まだ気持ちは決まらない。どうしていいかわからないままあたしの足は図書館へと向いた。


「よぉ。よく来たなリム。こねぇかと思った」

本棚の死角。あいつが偉そうに寄りかかっていた。

小さくうなづく。もう後戻りはできない。あたしがニコを守るの。

「っつーことは今からお前は俺の女なわけだが、俺の女になったつーことはルールがあんだわ」

無駄に高い体に乗った空っぽの頭をあたしの顔に近づけて唇が触れるぐらいの距離で囁く。

「俺以外の男と会話禁止な。当然ニコ君もだわ」

「え?」

次の瞬間あたしは唇を奪われた。初めては絶対ニコだと思っていたのに。・・。

「いやっ」

「お前がいいって言ったんだろ?」

「でも・・・ん」

二度目。二度もニコ以外に汚された。不思議と涙は出てこなかった。こんなものか。あたしどうしちゃったんだろう。


「また君たちか」

偶然会長が通りかかった。

「っちまた会長かよ」

どうしてもう少し早く止めてくれなかったの!なんて訴えは飲み込んだ。これはあたしの弱さが招いた結果だから。

会長から注意を受けた黒崎は、途中にあったゴミ箱を蹴飛ばして乱暴に扉を閉めて出て行った。あたしはその姿を見送ってしばらく動けずにいた。


どうやって帰ってきたかは覚えてない。気づいたらベットの上で泣いていた。

コンコン。部屋をノックする音が聞こえる。

「ちょっと大丈夫?ごはんだよ」

「ごめんお姉ちゃん食欲ないや」

お姉ちゃんは生徒会で忙しいんだから頼るわけにはいかない。

あたしは今になって遅れて出てきた止まらない涙で枕を濡らした。

「う、うぅ・・・」


12/8

入学してから初めて朝練をサボった。こんな状態で行っても迷惑をかけるだけだ。できるだけギリギリに行こう。黒崎がまたグラウンドで待ってるかもしれない。

RINEで部長に体調不良と伝えた。お大事にと帰ってきた一言に罪悪感で潰されそうになった。


教室に着くと黒崎はいなかった。ほっと胸を撫で下ろす。

しばらくして機嫌の良さそうなニコが入ってきた。今黒崎はいない。あたしの人生にニコがいなくなるなんてありえないんだから。

「おはよーニコ」

人生で、挨拶をすれば当たり前に返ってくるってこの時までは信じて疑ったことなんてなかった。

何か一言発しようとしたニコは続けて信じられない言葉であたしを地獄へ叩き落した。

「お前なんて嫌いだ。もう二度と話しかけるな」

世界がグルグル回る。足元が不安定。なぁにこれ。どうなってるの?

今ほど死にたいと思ったことはない。

キーンコンカンコーン。授業が始まった。


ぼんやりと昼休みに消えるニコの背中を見つめる。ほんとは今すぐその背中に抱き着きたい。好きだっていいたい。あたしだけに笑いかけてほしい。でももう叶わない。

今のあたしにできるのは黒崎の牙がニコに向かないようにすることだけ。

ニコを守っているという自己犠牲の精神だけがあたしがあたしでいられる理由だった。

黒崎に昼ご飯に誘われた。付き合ってるんだから当然か。

もうあたしは、何も感じない人形になりたかった。



{3人の黒い糸はまだ繋がらない}




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