相性差
ヘルムヴィ……兜虫
「らぁ〜らぁ〜」
響きの良い音と共に魔法陣が展開される
「良い調子だね!嬢ちゃんや」
「これやばいね!まさかこんな変なの1つで声質に変化を持たせれるなんて」
「変なのって、こりゃワシが60年全てを捧げて作ったんじゃ!たりまえよ!」
「そうだね、他はある?」
「さっきのは増幅しか出来んのじゃが。ちょっと待っとれ」
「ほーい」
しばらくすると色の違う箱を数種類持ってやってきた
「端から属性、んでこっちは性質じゃな」
「ほぅほぅ、ちょっと借りるよ」
「まぁ程々にな、嬢ちゃんの魔力が高過ぎるから壊れたら元も子もないでな」
「大丈夫すっよ!らぁ〜!!」
「しっかしもうかれこれこの街で5年は売ってるが、物珍しさに買う他国の人くらいしか客がいなくてのぅ、なんならこうやってワシに話し掛けてくれるだけでも奇跡じゃよ」
「そうなのか?」
「あぁ……そもそも一般人が発声のみで簡易的に魔法が使えるはず無かったのじゃ。たまたまわしの適性が高かったから、売り出すは良いけど手に取る人の殆どが使えずインチキ扱いされてなぁ」
「まぁ心配すんな!なんならじいさんがこの装置使って全国お助けの旅とかすりゃいいじゃんか」
「それも考えたんだが、何分歳でな」
「まだ90前後でしょ?わかいよ!」
「はっはは!嬢ちゃんの種族はわからんが人間ってのは脆く儚いものなのじゃよ」
「そうだったの、悪かった」
「いやいや、悪くないさ。そもそもこの御時世90まで生きれた事に感謝じゃ」
「そんなおじいさんに朗報すっよ」
「なんじゃ?」
「買うっす」
「からかっておるのか?」
「いや、全部買うっすよ!ほら!お金もあります」
「良いのかね?!」
「なんなら研究データも買います!そしたらそのお金で残りの人生を謳歌するのもありじゃないっすかね」
「なんと……あぁまるで神様にでもあったような」
「えぇ、神ですか──」
鈍い音と共にヘルムヴィーゲの頭が弾かれる
「な、何事じゃ」
「あらぁ~おじいさんは黙ってて?じゃないと撃ち殺すわよ」
「わしの店先で暴れよって!しかもなんじゃ、この嬢ちゃんになんの恨みがあるってのじゃ!この変態女め!」
「うらみぃ?そんなのないわよ~」
クルクルとマスケット銃を回す女。
ピンク髪に黒い帽子、黒いマントを羽織っているがその下はほぼ下着と言っても過言ではない。
「そうね、なんならジジイも追加で冥土行きでいいかしら。変態女呼ばわりされたら黙ってらんないわ」
「そうはさせん!【らぁ~らららー!!】」
じいさんの目の前に大きな魔法陣が画かれる。
「あはっ!孫娘の為に必死になるなんて。もう死んでるのに」
「行け水流!!!」
魔法陣から濁流が溢れ出す
「【弾・鉄壁】」
女が地面に弾を撃ち込むと壁が出現した
「な、マテリアル変化を意図も容易く」
先程の魔法で消耗しきったじいさんに銃口を向ける女が
「さぁ死んでもらうわ!!【弾・滅殺】」
死を覚悟し目を瞑るじいさん
「自分を護るってのは性にあわないんすけどね~他人ならミジンコでも庇いますよ!真名発揮」
弾丸はじいさんの体をすり抜け住宅の壁にめり込む。
先程まで倒れていたヘルムヴィーゲが立ち上がる。
その胸には赤い花が咲いている。
「?!最初の普通の弾で死なないのは分かるわ!!でもなんでこの弾で死なないの!」
「嬢ちゃん、生きておったか!」
「言ったっしょ?私は神すっよ。それとじいさんこの装置全部貰ってくよ。そこの野郎ぶっ飛ばさないと気が済まないんで」
「あぁ、じゃが大丈夫かね……見た限り君は護る事に特化しているように見えたのじゃが」
「私、こう見えて結構やるタイプなんで!【手甲!!・硬質化!!】」
「まぁいいわ、しぶといなら死ぬまで弾丸を叩き込むまでよ!」
ダンっ!ダンっ!と弾丸が飛んでくる
「その程度なら妥協範囲!!」
弾丸を肩と腹部に喰らいながらそのまま敵の方に詰めるヘルムヴィーゲ
「【弾・空間固定】馬鹿なの?普通の弾じゃないわよ」
「すっ、動かないッスね」
「嬢ちゃん、加勢するから待って──」
「いや大丈夫すっ!真名発揮。ラーズから学んだこいつがあるっすから」
ヘルムヴィーゲに純黒の鎧が纏わる。
利き手の左手に大盾、右手は変わらず手甲。
「な、なによそれ!魔王?!あんた魔王なの?」
「はぁ~わからず屋は嫌いっすよ。神!分かる?えっとアイキャンゴット?OK?いい!私はヴァルキュリアが1人。盾の面ではスクルドすら凌駕する存在よ」
「あんたゲームのやりすぎ?っても分からないか。CPUの癖に無駄に凝ってるわね」
「なら試してみるかい?神の本領を」
黒い鎧にどす黒いオーラが宿る。
「純黒の▇▇▇多分これをするのは私が初めてかな。いいかい?神ってのは人の為に存在する。故に人々の願う形で世に君臨するのだよ」
「は、はは……バカ言ってんじゃ無いわよ!!【弾・毒】!!」
キンッ!
怪しく光る弾丸がヘルムヴィーゲの胸部装甲に触れるが簡単に弾かれる
「効かないってば」
「えぇい!!【サブオプション】!!シュリナちゃんの本気を見せてあげるわ!!!」
二丁目の銃を取りだし構える
「【弾・貫通・滅】!!乱れ打ちよ!!」
ヘルムヴィーゲが左手の盾を構える。
弾が盾に触れる度、盾を抉ってゆく
「どうよ!!これが勇者パーティーの力なのよ!もう泣きついても遅いんだから!!」
「へぇー、神器に穴を開けるとはやるじゃない」
「私の銃はグォルエド神話の主神たるグォルエドメラー様の愛用弓、グォルガルテだからね!」
「聞いた事ないわね」
「バカには分からないでしょうね!!!グォルガルテは鹵獲とも呼ばれるわ!倒した相手の武器を真似たりまた新しい物に変化させれるのよ!」
「つまり其れも神器と。しかしその程度では私は臆さないよ!!」
ヘルムヴィーゲが殴り掛かるが。
「【弾・漆黒】」
シュリナが地面に弾を撃ち込むとヘルムヴィーゲの左手手の盾と同様の性質をした壁が現れた
「?!!!」
即座に後ろに回避するヘルムヴィーゲ
「言い忘れたけどさっき喰べたから」
「なるほど、少し様子見と侮った自分を殴ってやりたいね!」
近くの壁を蹴り後ろに回り込むヘルムヴィーゲ。
「後ろね!【弾・漆黒】」
漆黒の壁が現れる。その漆黒の壁に盾を叩き付けて、斜めに逸れまた壁を蹴り殴り掛かる
「よーし、1発!」
「いったっ!よくも乙女の顔に傷を!」
「戦場で性別を語るなら来るな!そうやってヤッケになる奴から死ぬんだよ!!!」
再び高速で懐に飛び込みアッパーを入れようとするが、マントの下から現れた手に止められる。
「しまった」
「ざんねーん✩【弾・貫通】」
ヘルムヴィーゲの頭部から血が吹き上がる
「つっっ……なんすっか……」
「あら、神ってその程度なの~?」
「世の中不思議なもんっすね……悪魔と神の共存なんて」
「あら、神と神よ?グォルエドメラー様の武器と鬼神」
「はっはは、どうして私って運がないのかな。神託に背いたせいなのかな?!!!」
落ち込むがすぐに切り替えて回り込む、しかし腕を警戒し攻撃には出ず後ろへ下がる
「ウォールから聞いたゲェームで例えるとフルオートカウンターっすね、厄介だな」
「まだまだよ!!とっととあんたらのとこの男漁りに行かなきゃだからね!」
二丁目の銃を構えながら突撃してくるシュリナ
「▇▇▇▇▇▇!!」
それに対し盾を地面に突き刺さし古代ルーン語で詠唱するヘルムヴィーゲ
「【弾・貫通・滅殺・貫通・必殺】」
無数の弾が散弾し多様な方向から襲い掛かる。
「裏返し!!」
全ての弾が向かってきた方向と真逆に飛ぶ
「いたっ!!」
その弾の一部がシュリナに当る
「へっ、ざまぁないっすよ」
「この!いいわ!あんたは殺さない!生かしておくわ!だけど法外地区に放り込んで色んな人に遊んでもらう事にしたわ!!」
「あぁーあぁーうるさいっすよ。壊れた伝達鳩ですか?」
「【弾・貫通!!!】」
「うぉぉ!!妥協すっよ!!」
盾を構えたまま突撃するヘルムヴィーゲ。
シュリナが壁を出す間もなく懐に入り込み殴りを入れるがまた手に邪魔をされる。
「その手はわかってたっすよ!」
今度は盾で殴り掛かる。
盾を受け止めきれずそのまま後方へ吹き飛ぶシュリナ
「はぁはぁ、この手甲相当強化したんすけどね」
鬼神の手により手甲が粉砕していた。
「ぐぁっ……」
少し遅れてシュリナが壁にめり込む
「さすがにあんたを生かして無事に過ごせる保証が無いんでここで始末するっすよ」
盾を構えるヘルムヴィーゲ。
「【喰らえ】」
物凄い速度でシュリナの方へ向かう。
しかしその途中、建造物の合間から人影が映り横に逸れる。
ドゴォン!!
そのまま近くの家にぶつかる
「な、なんすか……」
「あ!ヘルム!無事だった?!」
「ラーズ!!って危ないっす!!」
ヘルムヴィーゲがランドグリーズを弾く。
ヘルムヴィーゲの左盾に大穴が開く。
そのままヘルムヴィーゲは倒れ込んだ。
「はぁはぁ……はぁ……私の渾身の一撃は効いたようね」
シュリナが立ち上がり近づいてくる
「ヘルム?!ヘルム!!」
「あらァ~お仲間さ……あんた、ルノイがやっつけた筈じゃ」
シュリナの顔が曇る
「あんな雑魚瞬殺よ……それよりヘルムに何をした!!」
ランドグリーズが倒れたヘルムヴィーゲをオロオロしながら見ていたじいさんに任せると槍を出して構える
「いけ好かない奴だったけど良い奴だったのに……よくもルノイを!!」
シュリナも少しフラフラしながらだが、一定の間合いを取り構える
「「絶対に殺す!!!」」