泣き虫
─ランドグリーズ─
気付けば鎖に捕らわれた自分と対面していた。
鎖、そうね私を捕らう弱虫の部分ね。
大人の私になる為に幾度弱虫を克服したのかな……
死地を乗り越える時が1番酷かった気がするけど。
そうね、鎖を壊せば。
ガン!ガン!
硬い、うぅ……いや!ダメよここで諦めたら。
うーん……壊せない。
なんで……
過去がランドグリーズの脳内に過ぎる
「あれ、君は?」
「私はランドグリーズよ」
私達の神殿に少年が迷い込んだ時の話だ
「僕は●●だよ」
「そう、●●ね」
「えっとランドグリーズは天使様?」
「そうね、天使と思うなら名前に様を付けなさい」
「あ、ごめんなさい」
「私は神よ」
「え!神様だったの?」
「そうよ、まぁ戦乙女だけどね」
「えぇ、まってヴァルキリー達もう行っちゃったよ」
「そう、いいのよ私は戦いとか好きじゃないし」
「そうなんだ、みんな勇ましいけど怖いイメージだったから少し意外」
「意外って、私も乙女だよ。普通に買い物したいしみんなと話したいし、それに」
「それに?」
「恋愛だってしてみたいものよ」
「ふーん」
「何よその態度は!!」
「いや、別に」
「なによー照れちゃって」
「べ、べつにー!また来るからー」
「またね!」
あの子は……確か
「また来たよー」
「ふふ、●●相変わらず元気ね」
「そうりゃーそうよ!」
「なんかいい事でもあったの?」
「昨日ね!お父さんが僕に武器を作らせてやるって」
「あら、鍛冶屋だったの?」
「そうだよ!」
「良かったじゃないの!私の武器も作って貰おうかなー」
「え?ほんと?」
「そうよ」
「え、でも意中の相手に武器をあげるのって」
「ほぇ?!」
「あ、い、いやーなんでもないよ!で、どんな武器が欲しいの」
「しょ、しょうね、槍!槍よ!」
「槍かーよしっ!頑張るぞ!」
「あ、本業を疎かにしないようにね!」
「わかってるって!じゃっ早速頑張ってくるよ」
確かこの次の日は
「グスッ……」
「あれ?どうして泣いてるの?」
「あ、ふぇ?!別に泣いてないし……」
「いや、泣いてるよ。僕で良かったら話聞くよ」
「あのね、帰還した子達の中で2人も死者が出たって」
「そういえば今日やけに街がお祭り騒ぎしてたのは」
「そうよ、生還祭、奪還祭、そして鎮魂祭」
「魂は歓喜の元に、再び舞い降りるだっけ」
「私はあんまりむかないわ、そーゆーの」
「いいと思うよ、僕ら人間の為に泣いてくれる神様なんて少ないから」
「今日は少しだけ、少しだけ見ないふりしててね」
あれ、大人の私も泣き虫だったけ……
「ランドちゃん!また来たよー」
「もう!その呼び方は恥ずかしいからやめてよ!」
「ごめんごめん、でも良かったほら!また笑顔が戻ったじゃん」
「そうね、あなたのおかげよ!」
「このまま平和が続くといいのにね」
「だねー、そしたら僕も」
「私も」
「「あっ、」」
「「ははははは!」」
でもこんな平穏は続かない事知ってたのにね
「あれー最近●●来ないなー、それに街も騒がしいし」
そしてあの日が……
吹くのはそよ風くらいの曇り無き神殿に雨が降り出したあの日
「あの、すいません」
「はーい、あれ?見ない顔ね、ほらこんな雨の中居ないでここあがって」
「つかぬ事をお聞きしますがランドグリーズ様でありますか?」
「はい、そうですが」
「あぁ、やはりそうでしたか」
「あの、話が見えないんですが」
「●●の母でございます」
「っ……」
「●●は、●●は岩の根を取りに行った帰りに……」
「もしかして!」
ゴロゴロッ!ドッシャーン!!
「死にました……」
「あぁそんな」
「いえ、ランドグリーズ様は悪くないです」
「いえ、槍の材料でしょ」
「そうです……」
「ここに居たかぁ!!!」
「アナタ!落ち着いて」
●●の父親が怒りに満ちた表情で神殿に乗り込んできた
「お前だな!!」
「アナタ!違うのその方は」
ガンッ!ビシャッ
殴られた私は屋根の外に飛んでゆく
「はぁはぁ……やっぱり神なんて!お前らは見届け人とも言われてる。息子の死に関わってるだろ!!」
「彼は喜んでました……お父さんに武器制作に携わっても良いと言われたと」
「あぁ知っている」
「彼は泣いている私を励ましてくれました」
「私は彼に武器を作って欲しいと言いました」
「あぁ」
「彼は……ぐすっ……本当にごめんなさい」
「もう二度と我々人間に関わらないでくれ!」
「やめなさい!みっともないでしょ!」
「俺だってわかってる!だけどなぁ……親を残してなんてあんまりだ……」
「私は彼を●●を愛してました……ですがこんな破滅に進むとは思いませんでした……叶うのなら今ここで私を殺してください」
「あぁ!」
●●の父親が槍を前に突き出してた
「息子の分まで闘ってこい。それがヴァルキリーの宿命だろ……最後に先を固定したのは俺だが他は息子の手製だ」
「はい……」
私はいくつかの真名を貰った。
最終決戦に向けての物だ。
皮肉にも平和を愛する者。それと本来の盾を破壊する者………
そうだ……私は私を縛る鎖は心の弱さでは無い……
弱さを理由に逃げ出す事が弱さだ。弱くてもいい
ただ、泣いても前に進み続ける意思を捨てなければ!
「ぐっ!私はランドグリーズだァァ!真名発揮」
もう二度と振り返りはしない……後ろにあるのは悲しみだけ、涙を流そうが笑顔で居る。
そう'魂は歓喜の元に、再び舞い降りる'から