車両の女
通勤電車でイライラすることが多いですよね。ストレスがたまったりするととても危険です。ほかの車両では混んでいるのに誰も乗っていない車両には何かあるはず、乗らないというのをオススメします。
通勤時間にほとんどの人が経験するだろう椅子取りゲーム的な争いが電車の中で繰り広げられる。
俺は通勤時間片道でも40分はかかる会社に通い始めて1年はたった。
特に俺が乗る車両はとんでもなく混むってのにベビーカーに子供乗せた若いママも構わず乗る。杖持った爺さんも乗る。
40分も乗りっぱなしだから少しの時間でもいいから座りたい
次の日俺は1つ隣の車両に乗ることにした。
周りを見ても誰も並ばない。俺一人。
隣の車両はすげー列だっていうのにここは1人も並んでない
どっかのおじさん「にいちゃん、そっちの車両やめといた方がいいぞ」
俺「えっ?」
すげー混んでて乗れないのか?
悩む時間もなく俺は電車きたのでそのまま乗った。
でも誰もいない。
まぁ座れるならいいやって思い、俺はそのまま乗り続けることにした。
だが、時間が経っても誰も乗る気配もない。
そして俺は気づいた。そういえばこの電車に乗って1時間以上経っている感覚はあるが、駅に着く度この車両のドアは1度も開いてない。それに俺が降りる駅にも到着しない。それともう1つ
いつの間にかこの車両に、もう1人いる
車両の隅に女性がいたのを見つけ話しかけてみた
俺「あの俺、○○って駅で降りたいんだけど通り過ぎちゃったかな」
女性「…。」
俺「あの…。」
その瞬間電車がガタッと揺れ扉が開くと俺が降りる駅についた。
ホームに出ると沢山の人がほかの車両から出てきて電車は発車して行った。
俺は遅刻したと思って徒歩12分の会社まで走り、慌てて事務管理室まで行った
俺「おはようございます。遅刻してすいません」
同僚の遥「おはよう島崎くん(俺)今日は早いね」
島崎「はっ?」
遥「昨日の無断欠勤の穴埋め?」
島崎「ちょっと大丈夫か?俺昨日も出勤しただろ」
遥「何言ってんの?何回電話したって出なかったでしょー!履歴見てみなよ」
俺はスマホみた。
島崎「確かに残ってる」
遥「でしょー!」
島崎「遥、今日何日?」
遥「26日だよ」
島崎「おかしい。俺は今日家を出る前に25日なのを確認した。なんで26日なんだ?」
遥「どうしたの島崎くん。今日も仕事休んだら?」
島崎「いや、大丈夫だ、ごめん」
同僚の柴田「よォ、島崎!早いねー。もう体大丈夫か?」
島崎「あ、大丈夫だよ」
同僚の三浦「お、はえーな。昨日取り引き先から電話来たけど話結局分からなくてやっぱお前の脳じゃなきゃ無理みたいだわ。何とかプロジェクトとかいろんなの代わりに聞いたけど俺の脳じゃさっぱり進行具合も掴めねぇし難しい企画のまとめごっそりFAXで送られてきたけど目を通しても全然分からなかった。結構急ぎなんだろ?」
俺「一応お前だってこのプロジェクトの一員になってんだからわかんなきゃ困るんだけど」
三浦「ほとんど任せっきりだったのを昨日ほど悔やんだことはないな」
島崎「やる気になったついでに後でその進行具合や詳細などでおまえに話してやんよ」
三浦「やる気になった訳では無いけど一応お願いします」
島崎「俺いない時どうすんだよ。まぁいるけど大体」
三浦「あぁ悪かったって」
上司で先輩の佐藤「おい、島崎!お前無断欠勤した上に謝罪なしか?」
島崎「先輩!おはようございます。昨日はすいませんでした」
俺の高校の頃の先輩で、俺は卒業後4年経ってから先輩の仕事の手伝いで力を貸していたが、その能力を買われ正式に入社した。
佐藤「休むのはいいけど連絡はよこせ。心配するだろ」
何が起きてるのがさっぱり俺にもわからない。けどその日一日中どこからか視線を感じたり後ろに気配を感じたりすることがあった
会社から電話しているにも関わらず電波が悪いのか会話が途切れる部分もあった
昼休み中同僚に今朝起きたことを話した
遥「あの車両乗ったの?」
島崎「っていうか遥電車通勤じゃないのに知ってんの?」
遥「知ってるも何も…」
三浦「あっ、まぁ!いいじゃん、島崎も無事だったんだし」
島崎「無事?」
三浦「まぁとにかく、あの車両には乗らない方がいいと思うぞ」
島崎「あっ、そういえば!」
三浦「なに?」
島崎「いや、今日その車両に乗っていた女がいて、そのまま乗っていたから、明日にでも教えなきゃと思って」
三浦「いや、それはちょっと」
島崎「その人も知らなかったとか」
三浦「お前!その人の事は忘れろ!もう二度とあの車両に近づくな」
島崎「どうしたんだよお前ら」
三浦「明日からは普通のいつも通りの車両にのれ!」
そう言われたので俺は次の日
いつも通りの車両に乗るのに人が沢山並ぶ列に並んだ
はずだったが気づくと誰もいない車両の列にいつの間にかいた
やっぱり昨日の女に伝えなきゃダメってことだな!って思い
乗ろうとした瞬間
佐藤「島崎!」
と声を荒らげながら引っ張られた
佐藤「お前死ぬ気か?」
ふと気がつくとホームは緊急停止ボタンを押されていて駅は混乱状態。みんな俺を見て駅員も俺に何か言っている
佐藤「松岡(遥)さんに聞いて今日は時間をずらして来てみたんだ」
島崎「死ぬって?俺が?」
佐藤「悩みがあるならじっくり聞く。悪かったなおまえに任せっきりで」
島崎「なんで?電車に乗ろうとしただけで死ぬんですか?大袈裟だなぁ。っていうか行っちゃいますよ電車」
佐藤「電車?」
島崎「せっかく乗るとこだったのに、先輩も今日は遅刻ですね」
佐藤「お前電車ってなんの電車だよ」
島崎「ほら、今女の人見てるじゃないですかあの人にも伝えなきゃ!」
俺が立とうとした瞬間ドアが閉まり電車は発車して行った
島崎「あぁ!行っちゃったじゃないですか」
佐藤「島崎!」といい、強くビンタ
島崎「先輩!何すんですか?」
佐藤「お前!俺が引っ張んなかったら線路に飛び込むとこだったんだぞ!」
島崎「線路?電車来てたのに?」
駅員「お客様、電車など来ておりません」
島崎「えっ?今行ったでしょ?女が一人乗っていたの俺見たよ!」
駅員「いいえ、緊急停止ボタン押してあるので電車が発車することもありません。電車は今あそこで緊急停止している電車があなたがいつも乗る電車です」
島崎「えっ?」
確かに考えてみればそうだ。俺もいつだったか人身事故でのアナウンスで聞いたことがある。
緊急停止ボタンがなり続けている間など、関連する電車や駅全てが麻痺する。
だから発車することは無い。
俺は駆けつけた救急隊員に保護され病院送りになり、3日間の静養ということで入院が決まった。
先輩は俺が15分遅延させてしまった電車に乗り込んで会社に向かった。
先輩の粋な計らいで、有給にしてもらえた。
病院内で警察官と駅員から事情聴取されたが信じてもらえなかった。
その日の夜病院内に居るはずなのにすぐ近くに電車が通っているような音が聞こえる。
足音が聞こえたので先生かと思っていたが次第に俺は体が重く感じ動けずにいた
たまらず必死に鉛のように重い手でナースコールを押して人を呼んだ
1分ほどで看護婦が来た。
看護婦「島崎さん、どうしました?」
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
看護婦「島崎さん?」
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
看護婦「すごい汗。今体温測りますから」
島崎「ハァハァ…この部屋に…今…ハァ…誰かいましたか?」
看護婦「いませんよ。」
島崎「電気付けたままお願いします。あと、水を…ハァハァ。あ、
あと、出来れば明日からは個室じゃなくみんなと同じ部屋でお願いしたいんですけど」
看護婦「じゃあ先生にも相談しますので」
次の日俺は精神鑑定にも異常がなく一般病棟に移された
その夜は金縛りにもあうことはなく普通に休めた
退院する日警察官と駅員が来た
警察官「君にはいろいろ失礼なことを言ってしまったね」
島崎「とんでもない。おれこそみんなに迷惑かけてしまって」
駅員「その事なんだけどね」
島崎「すいません、分かってます支払いますちゃんと」
警察官「今朝君がいたあの車両の乗り込み口で人が飛び込む事故があった」
島崎「えっ?」
警察官「目撃者及び防犯カメラでの調査の結果、自殺ではないという結果になった」
島崎「どうゆうことですか?」
警察官「映っていた。あるはずのない電車」
駅員「この写真を見てほしい」
そこには電車が入ってくる前なのに停車している電車があった。
駅員「次の写真も見てくれるかい?」
本物の電車が入ってくる直前だろう。なのにその謎の電車は停車している。そしてその謎の電車に乗り込もうとしている
島崎「危ない!」
駅員「君の言っていた女が次の写真かな?」
写真を見て一瞬で俺は全て悟り写真を落とした
島崎「昨日俺の個室の病棟にこの女入ってきた」
駅員「えっ?」
なぜだ?俺はこの女の顔見たことないのに分かる。脳裏に入ってきた
警察官「君は電車でも見たことあるか?」
島崎「俺はこの女にこの車両は乗ってはダメだよって伝えようとあの日あの車両にいた、いつの間にか。本当は別な車両の乗り込み口にいたはずなのに。でも先輩に後ろから引っ張られて俺はこの車両に乗れなかった」
警察官「君は自分でも分からない空白の一日があると言ったね」
島崎「はい」
警察官「この女は君を殺そうとした。だけども君に取り憑いて意識まで支配出来ずに1日連れ回しても君は死なず、その女に取り憑かれたままあの場所に戻ってしまったが君の上司が君を引っ張り、殺せなかったということかもしれない」
駅員「15年前のあの時間あの車両で一人の女性が混雑で苛立っていた客に殴られ刺殺された事が分かってね。犯人が時効を迎える今年1年くらい前から謎の電車、謎の女性の目撃がネット上で広がっていた」
島崎「あー、俺ネット見ないからかな」
駅員「それが広がっていき、あの時間あの車両には誰も乗る人はいなくなったみたいなんだ」
島崎「あの時先輩がいなかったら俺は今」
警察官「君の上司には先ほど駅長から感謝状が届けられた。君の先輩の勇気ある行動で1人の若い命が救われたので我々も敬意を示す。君が遅らせてしまった電車の慰謝料は我々が負担する」
島崎「えっ?そんな」
駅員「君は助けてもらえた命を大切にするんだよ?」
島崎「ありがとうございます」
退院したその日のうちに俺は友人に連れられ
寺に行きお祓いしてもらった。その亡くなった女性と俺の代わりに亡くなった男性の名前を伝えその魂の成仏を願った。
その足で駅に行き線路に向かって花を手向け帰った。
おれは次の日から電車の音も聞こえなくなり金縛りにもあわなくなった。
遠回りになるが電車を変えて先輩と一緒に通勤することにした。
俺は命の恩人になった先輩にこれから沢山恩返ししていこうと思う。
自分自身でも、満員電車というのは避けたいし、足踏まれたりカバンが当たって嫌な思いしたり、降りたいのに降りれなかったり。そんな時も我慢して乗った方がいいと作者は思いました。