自称『未来の嫁』な、女子クラスメイトに……告白された話
「ねぇ、私たち……いつ結婚するのかな?」
高校二年生、夏休み初日の早朝……俺は、同じクラスのマドンナ的存在な女子から、突然に呼び出されて問われた。
起床するなり、彼女から電話が掛かってきて……急遽に待ち合わせた学校の校門前で、出会うや否や……問い掛けられたのだ。
目的地と自宅の距離が近いという事や、早朝という事もあり……ここに到着するまで、俺は誰一人ともすれ違わなかった。大袈裟に言えば、現在この空間は……彼女と二人っきりで、貸し切り中だ。
情報の整理ができていない俺は……立ち尽くしたまま、スグに質問をする。
「え……? 結婚??」
「うん。実は私たち、未来では夫婦なんだよ」
目前で微笑する彼女からの返答で、余計に頭がこんがらがってしまう。
……ふぇ? 結婚??
俺が呆然と立ち尽くしていると、再び彼女の小さく赤い唇が動きだす。
「そういえば……貴方は、知らないのよね。私と……運命の赤い糸で、繋がれていることを」
……運命の赤い糸? ナニソレ??
更に俺の思考回路は、グチャグチャと絡まった。
そんな事を御構い無しに、彼女の口はまだ語る。
「ザックリとだけど、私は未来予知ができるの。例えば、貴方と私……十年後には立派な家庭を築いているらしいわよ」
……やべぇ。やべぇよ……SF少女が、目の前にいるよ。
心中そう思いながら、彼女を引き気味に見つめていると……またも訳の分からぬ発言が、聴こえてくる。
「とりあえず、私たち……この夏休みから、お付き合いしましょう」
「……え? 付き合う??」
「私と付き合うの……イヤ?」
俺が聞き返すなり、彼女は目元に微小の涙を浮かべ言ってきた。
……そんな目で、見つめないでくれよ。
そう感じながらも、俺は彼女の問いにコクリと首を縦に振って言う。
「べ、別にいいけど……」
彼女は、クラス……いや、学校中でも美人だと有名な女子。今日呼び出される前から、俺は密かに彼女へ想いを寄せていた。断る理由は、無かった。
刹那……彼女は足先をスッと前へと伸ばし、小さく尖らせた唇を一瞬、俺の頰に軽く触れさせてきて……、
「嬉しい、ありがとう……」
小さな笑みを浮かべ、艶良い黒長髪を夏風に揺らめかせながら、礼を言ってきた。
彼女が語ったことが本当かどうかは、分からないが……こうして俺たちは、恋人同士となったのだ。