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第6話

 双子が大量にメダルを出したのでおごっておげると、ひさしぶりにゲームセンターにやってきました。


 さあ、楽しむぞ! という感じです。



 なのに。



 学武が不用意に「ゲームで勝負」と言った瞬間に本気スイッチが入って全員が戦闘モード全開とは。



「あれ、どうだろう?」


 学武が指したのはシューティングゲームでした。


 私たちは『フューチャー・アース・オンライン』に囚われて、帰還後は病院でリハビリ、それが終わったら全寮制高校に送られたせいで最新のアーケードゲームはよくわかりません――が、条件は5人とも同じです。


 そういう意味ではシューティングゲームはわかりやすくていいのかも。


 ハンドガン型のコントローラでゾンビだか犯罪者だか怪獣だか知らないですけど、とにかく敵を撃って撃って撃ちまくって、たくさん殺した奴が勝ち。台には2挺のハンドガン型コントローラーが備わっていますから2人で対戦プレーができるはずで、勝ち負けがはっきりしてていい。


 私たちは睨み合い、同時に拳を突き出しました。


 双子と学武がグー。

 私と月乃がパーだったから、あっさり一回戦の組み合わせが決まりました。


 彼女のほうに視線を向けると、それを避けるように顔を伏せます。すごい弱気だけど、騙されてはいけません。


 ゲーム機にメダルを投入し、ハンドガンを握った瞬間、月乃から何かが溢れ出したのがわかりました。やる気とか、闘志とか、戦意とか、あるいはモチベーションといった、そんな前向きのものではありません。




 ただの殺気です。




 筐体の中に人がいるわけではなく単なるデータにすぎないわけですが、お気の毒と少しばかり同情してしまう――まあ、そういう私だって容赦なしに皆殺しする気満々なわけですけど。


「…………んだテメー……早く死ぬよアホ………………………………バカバカバカ……ヘッドショットだ、頭ブッ飛べ!」


 なんだか隣から下品な怒声が聞こえてくる気がしないでもないけど、きっと空耳に決まってます。だって、隣にはホワイトボードでないと会話できない奴がいるだけなんだから。


 こっちも大変なところだし……って、ちょっと何で避けるかな、ちゃんと当たれよ、ゾンビの癖に生意気な。


 ほらほら、そう。ちゃんと腹を狙っているんだから、即死なんかせずに、血まみれで醜く地面をのたうちまわってから死になさい。


 やった、当たった……あっ! なんだ、このゲーム。血とか傷の部分にモザイクがかかってます。


 そういえばゲーム内での暴力描写は厳しい規制がかかってるのでした。しかし、制作者も意地があるのでしょうね、モザイク越しにでも首を撃ったら、頭がゴロゴロ転がるのがわかります。


 なんて素晴らしくグロい仕様なのかしら。


「オラオラオラオラオラオラ………………半分に千切れろ、千切れろよ、バカヤロウー………………死ね死ね死ね、じゃなくって殺す殺す殺す!」


 もう!


 さっきから本当に隣がうるさい。


 もともとゲーセンは騒々しいところですけど、その騒々しさは電子音に限るんじゃないかしら。なぜガラの悪い怒声がこんなにするのか不思議だなぁ――なんて言ってる場合じゃありません。


 いつの間にか隣から聞こえてくる銃声が連続してます。きっとサブマシンガンを手に入れたのです。


 千切れろ、千切れろ、と叫びながら連続した派手な銃声を響かせているところからすると、ゾンビ1匹に何発も浴びせかけ、少しずつ着弾点を動かすことにより腹から上下に真っ二つとか、肩から腰まで撃ち下して左右に真っ二つとか、グロい死体を大量生産しているのでしょう。


 おっと、私のほうもショットガンを拾いました。


 サブマシンガンと比較して装弾数は少ないから頻繁にリロードしなければならないですが、1発あたりの威力ははるかに強い――ゾンビの頭が1発で粉々に砕けるほど。ボカン、ボカン、ボカンと私のほうは首なしゾンビの大量生産なのです。


 モザイクのせいで変に想像力が広がって、バラバラになった頭蓋骨や脳味噌が私の目には見える……気がします!


「おい、学武よ。女の子が勝負するなら、もう少しきれいなゲームのほうがよかったんじゃないか?」


「……うん。そうだね。考えが足りなかった」


 後ろで葵と学武が何か話してるみたいですけど、よく聞こえません。銃ゲーで、撃ちまくって、殺しまくって、どこが悪いの?


 しかも相手は私を襲おうという不埒なゾンビなんですし、自分が痛いのは我慢できないけど他人の痛みはいくらでも我慢できる私なのですから、なるべく残虐に殺してやればいいのです。


 ゾンビに包囲されたスーパーマーケットに大量の武器弾薬を抱えて立て籠もるのがアメリカ人の夢だと聞いたことがあります。確かに楽しいでしょうね、向かってくるゾンビを次々に撃ち殺し、お腹が空いたら肉でも魚でも野菜でもまわりには何でもあるんですし。


 でも、私だったら銃じゃなくてチェーンソーを使いたいな――それを振りまわすだけの体力があるかはともかく。


 なぜか月乃との勝負はノーカウントとされて――絶対に私が勝っていたと思います。ネット嫁の負けを認めたくない学武の陰謀なのでしょう。レギマスやってた男にしては小さい器量ですよね。




 そのあと同時に10人まで対戦できるレースゲームで10戦以上も勝負しました。車にもレースにもまったく興味ないからレースゲームは弱いです。


 魔法使いになってみたいと思うのは普通ですけど、誰がF1ドライバーになんかなりたがるのでしょうか? 同じ道をグルグルまわるだけ。そんなにグルグルまわりたいのならハムスターにでもなればいいのに。


 どこかに車で人間を轢きまくって殺した数で勝負するようなゲームないのかしら?


 ドライバーが殺し合いとかでもいいけど。




 そういうのなら私、ちょっと負けない自信があるんですけど。

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