第39話
4階は攻城戦ステージで小さな城が隣り合わせに2つ建っています。
一方がモンスターの立て籠もる城で、もう1つが冒険者の城ということになるのですが……現実問題として城の中に城があって、それも隣合わせに建っている上に自分の城から敵の城に向かって弓を射たり、魔法を使ったりするなんてありえないんですけど、そのありえない状況がおもしろくて人気がありました。
遠距離攻撃が得意なら立て籠もり、接近戦が得意なら城から出てモンスターの城に斬り込みと、いろいろな戦術が試せるのです。
モンスターもランダムで湧出するらしく、遠距離型と近距離型のバランスがいいときもあれば、遠距離型のみで完全に籠城して外に出てこないときもあり、一方で近距離型ばかりでゴリゴリと力押しすることもあって、何度やっても飽きないダンジョンでした。
だけど、いまは遊んでいる場合ではありません。
城から双子が数人も狙撃したところで撤収。
籠城という案もなくはなかったのですが、グレネードを放り込まれたら陥落まで時間の問題となってしまいます。グレネードなんて存在しない前提で作られたステージなんだろうからしかたないですけど、あまりにも相性が悪いのです。
5階。
最終ステージ。
ラスボスの部屋で、2階と同じく障害物らしい障害物のない空間です。そして、一番奥にトレジャーボックスがあります。
あれがシジと敵が争って手に入れようとしているものだろうね。
「仕掛けは?」
4階から登ってきたエバーラスティングはミドガに尋ねました。
「生きてる。さあ、あのゴミクズどもを皆殺しだ。今日ほど産まれたことを後悔する日はないぞ」
「ここが最終決戦だ、あおそらく敵の数は10人ちょっと。それくらいまで減らせたはず」
「何人だっていいよ、別に。それに人数と戦力は別の話だし。低レベルが1000人と、レベル上限が1人だったら、その1人のほうが要警戒だ」
「そうだな……こうやってミドガと戦える日が再びくるとは思わなかった」
「あんまりセンチメンタルになるなよ。この戦いが終わったら結婚するんだ、と死亡フラグでも立てるつもりか? っつても、あたしら結婚してるんだったな。リアルじゃどうなるか知らないけど、なんにしてもゲーム禁止も高校卒業までだろ。自分で金を稼ぐようになったら、どんだけゲームに注ぎ込んでも文句を言われることないだろうし」
「そうだな……古くて狭くてもいいからアパートでも借りれば自由だ」
「だから最終決戦を前に死亡フラグっぽい発言はやめてよね」
エバーラスティングとミドガがじゃれ合いをストップさせます。
双子は装備を変更していました。
たぶん太平洋戦争のころのものでしょうね。木製銃床の長いライフルで、そこに銃剣をつけます。
いや、これはファンタジー系のゲームだろ、と思わず突っ込みを入れたくなる光景でした。
あいつら、どんだけ銃が好きなんだ? この条件で戦うなら普通に剣や槍のほうが使えるはずなんですけど。
シジが私の側に寄ってきて頭を下げました。
「すみません、姉御。うっかり姉御の名前を出したのは軽率でした。こんなことになった責任は自分にありますから、生きて帰還できたら、どこの国のどんな奴がリアルアタックかけてきても命がけで守りますんで」
「ねえ、ちょっと訊きたいんだけど……」
「何でしょう?」
「リアルの武器をフューチャー・アース・オンラインの世界に持ち込めたということは、その反対に『フューチャー・アース・オンライン』からリアルに持ち出すことも可能じゃないの? 具体的には呪術とか」
「………………『フューチャー・アース・オンライン』のデータとして存在しないものは持ち込めなかったわけですから、いま姉御が言ったことが可能だったとしても、同じようにリアルに存在しないものは持ち出せないと思いますけど。呪術って本当にあるんですか?」
「いや、ちょっと参考までに聞いただけでリアルに呪術があるかどうか質問されても答えようがないんだけど」
「あー………………何て言ったらいいんでしょう。姉御だったらリアルで呪術が使えるか試した経験が大変に豊富じゃないかと思うんですけど」
「はっ! あんまり馬鹿なこと言わないで。リアルで呪術を試す? 夜照ソフィンではなく冬鎧瑠奈が? 例えば夜中の教室に忍び込んで、嫌なクラスメイトの机に呪文を刻むような? 何それ、やるわけないでしょう、そんなこと……それより、敵がきたわよ」
半分は誤魔化したようなものですど、敵がきたのは本当のことなのです。
先頭は4人。油断なく銃を構えているところからすると、ゲーマーではなく軍人でしょうね。
その後ろに5人。彼らは剣士ばかりで私の記憶に引っかかる顔ばかりなので、名前までは思い出せないですが、たぶん不朽の囚人の元メンバー。
最後に銃を持ったのが1人。この一番後ろにいるのが雇主本人ではないにしても、この部隊の指揮官みたいです。
全部で10人――伏兵がいなければ、ですが。




