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第21話

 いま日本政府なんだか、自衛隊だか、防衛庁なんだか、そこらへんの組織が『フューチャー・アース・オンライン』を本物のデスゲームにしてしまいました。


 で、そのデスゲームに自衛隊員を送り込んでみたものの帰ってこないのです。そんなの捨て駒なんだから見捨てればいいと思うんですけど。例えば殉職扱いで二階級特進とか、靖国神社に祭っておくとかして、もう終わったことにしておくのですね。


 ですけど、この大臣は諦めきれないのです。


 まあ、息子なんだし、それが肉親としての愛情というものなのでしょう。うちの親にも見習わせたいわ……だけど、話の成行きは気に入りません。


 まだシジたちが生きている前提で救出作戦をおこなうことには異論はありません。その救出作戦に自衛隊や警察ではなく『フューチャー・アース・オンライン』でトップレベルだったプレイヤーを起用したほうが成功率は高まるでしょうね。それもわかります。

 

 どんな組織の特殊部隊や精鋭部隊だろうとゲームの中に限定するなら私たちのほうが絶対に強いんだし。


 ですけど、その救出隊はレベル上限クラスを集めた最高の攻撃力を持ったパーティーにならなければおかしいのです。


 ところが、人数が多ければ多いほど死者が出る可能性も高まります。いまや本当にデスゲーム状態になって、内部の様子もよくわからないのでは、あるいは全滅することだってありうるでしょうね。


 雪山だって海難事故だって救助隊や捜索隊が遭難してしまう2次災害が発生しないよう注意しますが、この場合は過去のノウハウがないのですから、できる対策といったら人数を絞ることだけなんでしょう。


 例えば不朽の囚人のエバーラスティングなら救出チームの指揮官として最高の人材かもしれません――リアルの学武はしょうもない奴ですけど。

 

 しかし、もしエバーラスティングに頼めば自動的におまけでミドガがついてきます。間違いなく双子も一緒にいくと言い出すでしょう。

 

 不朽の囚人のギルメンが全員東海地区の高校生ではなくて、他の地区とか、社会人もいますけど、この話を耳にしたら同行を申し出るメンバーも出てくるはずです。

 

 特に幹部クラスは全員がいきたがるだろうね。もう一度『フューチャー・アース・オンライン』の世界で戦えるなら、自分の命を含めてなんでも差し出して、我が人生に一片の悔いなし! と叫んでしまうような廃ゲーマーの集まりだから、あそこの連中は。


 ところが私はソロプレイヤーです。知り合いはそこそこいても、強いつながりを持つ仲間はいません。


 ゲームの中に限らず、リアルでも友達はいないですからね。


 この私と同レベルの人間がいないのだからしかたないんですけど、それはともかく休憩時間にトイレに一緒にいく相手さえいないのですから、命がけで『フューチャー・アース・オンライン』の世界にいくと誘ったところで、誰かが同行したいと手をあげることはないでしょう。


 そう考えを進めていくと、この席に校長をはじめ学校側の人間は1人もいなくて、大臣も警護はもちろん秘書すら連れてないのは意味深なのです。


 ひょっとしたら私が『フューチャー・アース・オンライン』の世界から帰還できなくなった場合、ここでの会話はなかったことになり、学校が嫌になった生徒が家出しただけ、永遠に行方不明という扱い……になるかも?


「民間人、しかも未成年者を救出活動に使うことは自衛隊も正式に認めているの?」


「いや……だが、それはなんとかなるはずだ」


「国際的には私たちが脱出したあと『フューチャー・アース・オンライン』のサーバーは物理的に破壊され、PEウイルスは痕跡も残さず消滅したことになっているのに? ここで自衛隊や私がダイブしたと漏れたら日本は世界中から非難されると思うけど」


「君にも守秘義務の誓約書にサインしてもらう」


 ほう、紙切れ1枚で人間の口を永遠に塞げるとでも? 


 話が一気に胡散臭さがマシマシです。これでは失敗したときはもちろん、成功した場合でも私は家出したことになるのかも。毎年、何万人もの失踪したまま行方がわからない人が出るらしいですが、私もその中にくわわるわけです。とても乗れる話ではありません。


「万葉が……息子が出かけるときに万一の場合は君を頼れと言い残したんだ」


 校長室から出ていこうとする私の背中に古川防衛大臣は言葉をかけました。



 だけど、それに返す言葉はありません。



 シジもバカな奴です。主人のために命を投げ出す忠犬はいても、なんでポチのために主人が命とか未来とか将来とか、そんなものを全部捨てなければならないのでしょうか? まったく合理的ではありません。


 だいたい私は呪術師・夜照ソフィン。


 究極のボッチ、永遠のソロプレイヤー。


 仲間なんていませんし、友達も1人もいません。


 助けなければならない相手もいませんし、誰にも何の義理も恩もありません!

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