93.お迎え
突然コンテナハウスのドアが勢いよく開けられた。
2人の世界に入っていた所で乱入者が来るのは予想外でドワコとリオベルクはどうして良いかわからずオロオロしている。
「時間切れですよぉドワコさん」
「エリー」
ドアを開けて入って来たのはエリーだった。
「2カ月も待ったのにナンデスカこれは?男ならもっと早くバシーっと決めちゃいなさいよ」
エリーはリオベルクに向かい言った。
「王子様に向かってなんて事を・・・」
「私が助けに来なかったら飢えて死んじゃう所でしたよ?命の恩人ですよぉ」
エリーは恩着せがましくリオベルクに言った。
「まあ確かに言われることはごもっともで・・・」
助けてもらう方の立場なのであまり強く出られないリオベルク。ちょっと情けないとドワコは思った。
「ドワコさん。会いたかったですよぉ。」
そう言ってエリーはドワコに飛びついた。ドワコも久しぶりのエリーの感触が懐かしくて思わずぎゅっとしてしまった。
「痛い、痛いですよぉ」
「あっごめんごめん」
しばらく抱き合っていて満足したのかエリーが離れて、姿勢を正して言った。
「お待たせしました。お迎えに上がりました。」
まだ午前中なので外は明るい。コンテナハウスを出てみるとエリーのワイバーンがいた。どうやらこれに乗ってこの島に来たようだ。
「私はワイバーンがあるからいいけど、リオベルクはどうするの?」
ドワコがエリーに聞いた。
「大丈夫ですよ。あと、一緒に船に乗っていた方々もすでに救助してありますので全員無事ですよ。皆さんすでに国に戻られていますので安心してください。」
「そうか。それなら良かった。」
リオベルクが安心したように言った。
「こうなる事も予想済みだったわけね」
「それはどうでしょうか・・・実は救助した時にかなり危ない状態の人も数人いたんですよ。でも、念のために連れて来たメロディさんが回復魔法で何とか乗り切ってもらいました。」
「ドワコの所には回復魔法が使える人がいるのか?」
「まあ先ほどのメロディ・・・神殿のシスターが使えます。それとエリーも少々・・・。」
リオベルクの問いにドワコが答えた。
「そこのエリーも使えるのか?何者なんだ?」
「私はただの村娘Aですよ?」
エリーが答えた。
「そうだった。それで間もなくお迎えの船が来ますので・・・。」
エリーが言ったタイミングで上陸用の船が砂浜に乗り上げドワコ領の兵士が降りて来た。
「王子様、ドワコ様ご無事で安心しました。」
「うむ。ご苦労。」
リオベルクが王子様モードになり兵士に言った。ドワコ手製の簡易的な服を着ていたので王族らしくないのは黙っておく事にした。
エリーがワイバーンをしまってドワコに言った。
「ドワコさん出発しますのでお片付けお願いしますね」
「はーい」
そう言ってドワコはコンテナハウスに荷物を突っ込み、工房を権利書に戻し、アイテムボックスにすべてを収納した。
「片付け完了」
「それじゃ帰りましょう」
エリーが上陸用の船に乗り言った。リオベルク、ドワコ船に乗り兵士たちも乗り込んで砂浜から離岸した。
「この船はどうなっているのだ?誰も漕いでいないのになぜ前に進む?」
リオベルクが不思議そうに言った。
「これはドワコ領で採用されている魔動機と言う物を動力にしています。ご覧の通り、高出力、低騒音と今までの船には無い物です。」
エリーが軽く説明をした。
船が進む先にはドワコ領の試作船が停泊していた。
「なんなんだ、この巨大な船は。」
近づくにつれ大きくなっていく船を見上げリオベルクが驚いたように言った。
「これが前に言っていたドワコ領の船です」
ドワコが答えた。
「確かに1隻持っていると聞いたが、こんな規格外れなものとは思わなかったぞ。」
試作船から乗船用のタラップが下ろされ、ドワコ達が乗った上陸用の船がタラップに付けられた。
「それではこのままお上がりください」
兵士の案内の元、ドワコ達は試作船に乗船した。
「お帰りなさい。ドワコ様。」
「ただいま。カーレッタも元気そうで何よりです。」
第4護衛隊隊長のカーレッタが出迎えてくれた。
「今回この作戦行動は第4護衛隊が担当させていただいております」
カーレッタがドワコに報告した。
「ご苦労様。いろいろとありがとね」
「いえいえ。ドワコ様のお役に立てたようで良かったです。」
以前はもう少しフレンドリーな話し方をしていたカーレッタだったのだが、少し違和感はあるものの幼児体型に巨乳とけしからん容姿に目の保養をさせてもらった。
「それではドワコさん概要説明をしますので艦橋までお願いします」
エリーに言われ、ドワコとリオベルク、カーレッタは艦橋へ行った。
「ドワコ、久しぶり~」
「ドワミも元気そうで良かったよ」
「実はそうでもないんだけど・・・」
疲れた表情で操舵を担当しているドワミが言った。
「ドワコがいない間、エリーが沢山仕事持って来て大変だったんだよ?」
「そうなのか?エリーが無理を言ったみたいでごめんね。」
「無理でも、必要があるから仕方ないんですよぅ。」
エリーがプンプンしながら言った。
「それじゃ概要説明をするね」
エリーがまじめな顔になり、中央に備え付けてある黒板に必要な情報を書き込んだり紙を張り付けたりしながら説明に入った。
「現在、当艦はこの辺りを航行しています。航路的にはここを経由しブリオリの港を目指します。」
地図で見るとわかりやすく、ドワコたちがどの辺りにいたかが分かった。
「それでこの場所で魔物の襲撃があります。これは避けられない戦闘なので皆さん頑張りましょう。」
地図にわかりやすく×印がしてある。
エリーがここで戦闘になると言っているので間違いなくそうなるのだろうと皆が思った。だが一人納得できない者がいた。
「なぜここで戦闘になるとわかるのだ?」
「仕様・・・だからでしょうか」
リオベルクの質問にエリーが曖昧に答える。それからこの先の航路などの説明があり、翌日にはブリオリに到着すると伝えられた。
「ちょっとまて、この場所からブリオリまでなら1週間はかかるはずだが?」
リオベルクが常識に照らし合わせて言った。
「いえ、間違いではありません。この船の速度なら翌日にはブリオリに到着できます。ご安心ください。」
船体はあまり揺れていないが、実際はかなりの速度で航行している。流れる景色を見たリオベルクは驚く。
「これは本当に船なのか?ありえない速度で進んでいるのだが・・・」
しばらく航行し、エリーの言っていた地点に差し掛かる。すると見張りの兵から連絡が入る。
「前方に魔物の群れ多数」
「魔動機停止、総員戦闘準備。」
指揮に戻ったドワコが戦闘準備を命令する。船内では慌ただしく兵士が動いているようだ。
「第1、第2投石機準備。方角、角度調整は各自の判断でよろしく。」
「「了解」」
ドワコの指示で船の前方に2基設置してある2連装投石機が動き出し、魔物の群れに向けられた。
「投石用意、はじめ。」
ドワコの合図で投石が開始され爆弾の入れてあるブロックが着水後に爆発が起こる。
投石機は向きと角度を少しずつ変え、広範囲に向けて連続で投石をしていく。その攻撃で魔物の数はかなり減ったが、運よくすり抜けた魔物たちが船に迫って来た。
「放水開始、残った者は各自の判断で迎撃。」
放水銃が魔物に向けられ放水が開始される。この装備自体は殺傷能力がないので時間稼ぎにしかならない。ただ、かなりの水圧があり、まともに受けると吹っ飛ばされる程度の威力はある。
残った兵士が甲板から自動小銃で応戦する。
ダダダダダと射撃音が至る所から聞こえる。
「船に取り付かせるなよ。お前ら気合い入れて撃て。」
小隊長と思われる兵士の声が聞こえ各自の判断で海から迫りくる魔物たちを攻撃していった。
しばらく戦闘が続いたが、装備面で圧倒的に有利なドワコ達が圧勝し魔物を駆逐した。数は多かったが、大型の魔物は含めれておらず、兵士たちだけで対応することが出来て、ドワコの出番も指揮以外は無かった。
戦闘中は推進用のスクリューに魔物が当たり損傷を防ぐために船を停止させていた。
「お疲れ様。魔物も片付いたのでブリオリを目指し前進。」
「はいよ」
ドワコの指示で魔動機を始動させドワミは船を操舵しブリオリを目指した。
「あの兵士たちが持っていたのが銃と言う武器なのか?」
「そうですね。今兵士たちが持っているのは自動小銃と言う携帯用の物です。銃と言っても用途などに応じて色々な種類がありますので。」
リオベルクの質問にドワコが答えた。先ほどの戦闘を見ていたリオベルクだったが、今までの自分の闘いの常識からかけ離れた戦闘に驚くしかなかった。
「たしかにあのような武器をミダイヤ帝国が持っているなら、内戦が早期に終わったのも納得できる。我が国も早期の対策が必要だな。それでこの銃と言うのはどこで入手したのだ?」
リオベルクがドワコに聞いた。
「うちの領で作りましたけど?」
「へ?」
「この船と言い、ドワコの領地はどうなっているんだ?全く報告が上がっていないんだが?」
「好きに領地運営して良いって言われたから・・・」
「確かに領主には裁量権が認められているが、常識を覆すような物を黙って配備されるのは困るのだがな。」
「すみません・・・」
リオベルクにドワコは叱られシュンとする。
「まあ済んだことなので仕方ないですよぉ。しかも、これが無かったら今頃どうなっていたんでしょうね???」
エリーに痛い所を付かれ、リオベルクは言葉を返せなくなった。
「ドワコさん。艦内を案内してみたらどうですか?」
「それはいい案だ。この船は興味深い。ぜひ案内してくれ。」
エリーの提案でその後、ドワコはリオベルクを連れて艦内を案内した。




