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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
王子様とドワーフ娘
81/128

81.マジックアイテム

翌日、砦の前には幹部クラスの者が見送りのため整列している。


「それでは後の事はよろしくお願いしますね」


ドワコが皆に向けて挨拶をした。


「行ってらっしゃいませ」


デマリーゼが代表して言った。留守の間、領地の事はデマリーゼが代行して行う。立場上、貴族階級的にもそうなるが、残された者は実質あの方が全権を握るんだろうなと皆が予想していた。


「それではドワコさん行きましょうか」


そう言ってエリーが声をかけ、ドワコとエリーはそれぞれワイバーンを召喚して乗り込んだ。


「それでは行ってきます」


ドワコとエリーは砦を飛び立ちマルティ城へと向かった。

いつも通り場外の森に降りて2人は徒歩でマルティ城下町を目指す。


城下町に入り、少し時間があったので商業区域の一角にあるシアの店に寄ってみた。ここはドワコ領で製作した布を使いシアの工場で縫製され衣類としてこの店をはじめジョディ村、アリーナ村でも店を展開している。量産による低コスト化で価格が今までの衣類とは全く次元の違う物となっている。下級層をターゲットにしているため既存の中から上級層向けの店とは競合していない・・・と思う。


ドワコとエリーはお店の中に入ってみた。かなりの繁盛ぶりでたくさんのお客さんでにぎわっている。


「あっ、これはドワコさんとエリーさんではないですか?ご無沙汰しています。」


「どうも、ご無沙汰しています。繁盛しているみたいですね。」


「おかげさまで毎日お客さんがいっぱいで嬉しい悲鳴があがりますよ」


アリーナ銘品館で働いていた顔なじみの店員がドワコ達に話しかけて来た。前にあった乗っ取り事件の際に解雇されたようだが、その後連絡先を知ったシアの説得でこの店で働くようになったそうだ。


価格もこの店では直接品物に表示され、他店のように店員に聞かないとわからない物がわかりやすく表示されている。お客さんは店員に聞かなくても商品の値段が知ることが出来る。気に入った商品は試着をして自分に合ったサイズを探し、見つかればその商品をレジで精算すると言った方式を取っている。ドワコがレジの方を見ると長い清算待ち列が出来ている。


店内の様子も見て安心できたので今度は城に向かう事にする。


お城の貴族用の入り口に行くといつもの衛兵のおじさんがいた。


「こんにちは」


「今日もご苦労さんだね。お仕事がんばってな。」


「ありがとう。行ってくるよ。」


いつものように軽い挨拶を交わし城内に入る。


「それじゃこのまま謁見の間に向かいます」


エリーの指示で謁見の間に向かう。そしてエリーが入り口の衛兵に取次ぎをお願いした。

少し経ち許可が下り、ドワコとエリーは謁見の間に入った。


「ドワコよ、忙しい所に息子が無理を言ってすまんな。」


「いえ、王族の方からの要請とあれば喜んで引き受けさせていただきます。」


王様の謝罪に対しドワコは無難な返事をした。内心面倒だと言う気持ちが70%くらいの気持ちがあったが表に出さないようにした。


「ドワコよ。息子と共にオサーン公国への大使の任よろしくお願いしますね。」


「はい。承知しました。」


王妃様の言葉にドワコは返答をした。


「それではドワコ、これからよろしく頼むぞ。」


「はい。こちらこそよろしくお願いします。」


王子様にも返答をした。


「せっかくの2人きりです。親公認ですよ。そのままやっちゃってもいいですよ?孫の顔を早く見せてくださいね。」


「母上・・・。」


王妃様が何か言っているが気にしない事にした。



城の王族用の出入り口まで皆で移動した。そこには馬車が5台止まっていて前後には第四騎士隊の隊員たちが護衛に当たっている。


「エリー、後の事はお願いしますね」


「はい。任せてください。」


エリーとはここでお別れだ。今回、従者は城の方から手配されている。その為ドワコ領からは人が出せないようになっている。詳しくはわからないが、相手国への入国の際に問題がある為らしい。


「キー。悔しいですわ。わたくしの王子様を独り占めにするなんて。」


筆頭宮廷魔導士のジョレッタがハンカチを咥えて悔しがっている。どうやら元気が戻ったようだ。


従者がそれぞれの馬車に乗り込み真ん中の豪華な馬車に王子様とドワコが乗り込んだ。


「それでは行ってきます」


王子様が皆にそう言って隊列が出発した。この一行は北へ向かい、諸国連合の国を経由し海路を通って目的地オサーン公国を目指す。片道10日の行程だ。高い山々や通行が困難な地域に囲まれ、今までは海路に出ようと思うとこの経路しかなかったが、今では西に向かい道路が整備されているドワコ領を経由してブリオリ国から海路に出たほうが早いが、ドワコが道路整備についての報告していないため、最短ルートは既存の北へ向かうルートとなる。


ちなみに経由予定の北にある諸国連合の国は武器防具に関し輸出規制をしているため、マルティ王国へ武器などを持って行くことが出来ない決まりになっている。もう一つのルートであるブリオリ国側は数カ月前までは馬車も通る事も出来ず、人が歩ける程度の険しい道が続いていたため流通には向かないルートだった。その為、長年にわたり海外からの新品武器の調達も出来ない状態だった。国としても調達方法を考えてはいたが結局のところドワコが現れるまでは調達することが出来なかった。


王子様とドワコは同じ馬車に乗っている。この馬車には従者も同乗しておらず、2人で見つめ合う状態で向かい合わせで座っている。


(かれこれ数時間こうしているが・・・気まずい)


「「あのぅ」」


何か話さないとと思ったドワコは話しかけようとしたが王子様と見事にタイミングが合ってしまった。


「王子様からどうぞ」


「いえ、ドワコからどうぞ。」


お互い譲り合ってしまった。


「・・・」


「・・・」


2人とも沈黙してしまった。パカパカと馬の足音だけが聞こえてくる。結局あまり会話をしないまま今夜の野営予定の場所に付いてしまった。


「野営テントの準備が出来ました。どうぞこちらへ。」


護衛する第四騎士団の騎士に案内されテントへ移動する。


「えっと。どうして同じテントなのでしょう?」


ドワコは案内した騎士に尋ねた。


「王妃様からのご命令ですので」


護衛騎士はそう答え部隊に戻っていった。


テントの中には大きめのベッドが1つしか置いていなかった。これはどういう意味でしょう?


「やられたって感じだね」


王子様がため息交じりで言った。どうやら王子様本人も知らなかったようだ。


「仕方ないよね。諦めて一緒に寝よう。」


王子様が諦めたようにドワコに言った。


「幸い広めのベッドなので両端で寝れば何とかなるよね」


食事のあとで従者に別のテントで体を拭いてもらい、寝るためにテントに戻って来た。

王子様も同じように別のテントで体拭きを終えたようだ。


「それじゃ寝よっか」


「はい」


そう言って2人はベッドに入ったが、ドワコはドキドキして寝付けなかった。元々おっさんだったので男には興味が無かったはずだが、今まで感じたことが無い気持ちが出てきてドワコは戸惑っていた。


「眠れないのかい?」


王子様が話しかけて来た。


「緊張・・・しているのかもしれません」


良くわからない気持ちを緊張で表したドワコ。言ってみて何だが緊張と言えばしっくりとくる感じがする。


「そっか。それじゃ、こうしたらどうかな?」


王子が突然ドワコに抱き付いてきた。前にもやられたことがあったので、ドワコもやり返してみた。二人で抱き合っている形になった。身長差があるのでドワコは抱き枕状態なのだが、お互いの感触を確かめ合っているうちに王子様はそのまま寝てしまい、ドワコは身動きが取れないまま夜を明かすことになった。


朝になりメイドが王子様とドワコが寝ているテントに入って来た。


「おはようござ・・・しっ失礼しました」


即座にメイドはテントから出ていった。その声でドワコは目を覚ました。あれから身動きが取れず、なかなか寝付けなかった。あまり寝た気がしない・・・。今の状態は・・・王子様が後ろから抱き付くような形でドワコの服の中に王子様の手が入っている。手は両手共、胸のあたりにある。


「王子様。朝ですよ。起きてください。」


そのままの体勢でドワコは声をかけた。


「ん・・。もう朝か。」


そう言いながらドワコの主張をしていない胸が揉まれた。


「ひゃぅ」


何とも言えない感触がドワコを襲い変な声を上げてしまった。


「おわぁ」


王子様は手の位置に気が付いたらしく慌てて手を離した。


「いつの間にか・・・すまない」


謝罪は入れるが手は離したものの後ろから抱き付く体勢は変えなかった。


「やっぱりドワコ良い匂いがする。クンカクンカ。」


王子様に匂われてしまった。驚いた勢いでドワコはベッドから飛び出した。


「ハァハァ。なんか変な汗出て来た。」


「ごめんごめん。ついつい良い匂いにつられてしまったよ。」


離れたタイミングでメイドが改めてテントに入って来た。


「おはようございます。昨夜はお楽しみでしたね。」


と言いながら笑顔で王子様とドワコの身支度をしていった。

そして準備を終え一行は海を目指し進んでいった。


「今日は野営ではなく宿で泊まれるはずだから・・・そのなんというかすまなかった。」


揺れる馬車の中で王子様が謝罪してきた。


「もう済んだことですから・・・」


親子そろって似ているなとドワコは思った。そんなにいい匂いがするのか気になって自分の匂いを嗅いでみた。


「クンクン」


良くわからなかった。


「どうかした?」


自分の体臭を嗅いでいるドワコを見た王子様が聞いてきた。


「私っていい匂いするのかな?って思ったから」


「するよ。なんだろなぁ嗅ぐと落ち着くにおい?」


どうやらリラクゼーションの効果があるらしい。そう言えば一緒に寝る機会が多かったエリーも良くやっていたような気がする。王妃様も?


「あっ、そうそう、ドワコにこれを渡しておこうと思ってたのを忘れてた。」


そう言って王子様はカバンの中から青髪のかつらを出してきた。この髪には見覚えがある。王子様が聖女をしていた頃に付けていた物だ。


「これって王子様が女装していた時に付けてた物では?」


ドワコがストレートに聞き返した。


「女装とは失礼な・・・まあ間違ってはいないけど。一応、公務の為と言ってほしかったなぁ。」


「公務ね・・・。なるほど。それでこれを付けろと?」


「これは見た目は普通のかつらだけど、マジックアイテムと言う貴重な物なんだ。」


王子からマジックアイテムと言う言葉が出てドワコはこの世界にそう言う物が存在するんだと初めて知った。


「それでどんな効果があるんですか?」


「それじゃ被ってみせるね」


王子がかつらをかぶった。普通に被っただけのように見えるが・・・。


「このかつらは装着した本人が外す意思を示さない限り外れないんだ。それと自分の髪の毛の色もかつらと同色になると言う効果がある。引っ張ってみて。」


そう言って青い髪をドワコに持たせた。そしてドワコは軽く引っ張ってみた。


「外れませんね」


ドワコが王子様に言った。


「あとこの髪の付け根もみて」


そう言って髪の毛をかき上げた。確かに王子様は金髪なのだが青い髪しか見えなかった。完全に同化している。


「効果がわかった?それじゃどうぞ」


王子様はかつらを外しドワコに渡した。そしてドワコはかつらをかぶってみた。妙なフィット感があり違和感が全くない。引っ張ってみても外れる感じがしない。王子様が手鏡を持ちドワコに向けた。完全に髪の色が青くなっている。


ドワコはオレンジ色のショートヘアだ。耳が完全に出ているので、その特徴的な耳の形状からドワーフと判断されている。逆に返せば顔つきは他のドワーフ達とは違い髭も無く、お人形さんのような大きな目とツルツルの肌なので耳さえ隠せれば普通の幼女に見える。青髪のかつらはロングヘアなので髪型次第では完全に耳を隠すことが出来る。


「これを付けろと言う事は私がドワーフだと言う事を隠さないといけないの?」


ほぼ間違いないと判断してドワコは王子様に聞いた。


「そうだね。マルティ王国ではごく一部の物に人間以外の種族に対して差別意識を持つ者がいるけど、今から向かう所は特にその意識が強い所でね。あちらの国ではかつらを外すときは十分気を付けてね。」


「なるほど。わかりました。」


「それといつまで僕の事を王子様と呼ぶの?できれば名前で呼んでほしいんだけど。」


「私、王子様の名前知りませんけど?」


初めにあった頃に名乗っていたのは女性の名前なので間違いなく偽名だろうと思っている。それから後も名前を知る機会も無く、自分からも聞いていない。


「は?」


王子様は目が点になっていた。確かに自分で言った記憶は無いが、一国の王子なので名前くらいは当然知っている物だと思っていたが予想が大きく外れていたようだ。


「リオベルクだ」


「リオべルク様?」


「様はいらないよ。公の場以外ではそう呼んでくれ。」


「わかりました」


様を付けないのはマズいような気がするけど、本人がそう言うなら従ったほうが良さそうだ。

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