70.(閑話)カレンの一日
今回はカレンの視点から見た設定の穴埋め的なお話です。
今日の私たち第1護衛隊の任務は訓練と称する魔石集めだ。
領主のドワコ様が決められ、4つある護衛隊は早番、遅番、訓練、休みと言うローテーションと言うものでの交代制となっている。
この領地では魔物から採れる魔石と言う物が非常に重宝されている。これが魔動機を動かすための魔石燃料の原料になるそうだ。製法に関してはドワコ様とエリー様と魔動機の開発担当であるドワミの3人しか知らないようだ。初めは貴族である私が平民であるエリー様に様付けをするのには抵抗を覚えたが、砦の影の支配者と言われるエリー様に逆らうと入浴中の兵士がいる男湯に裸にされ放り込まれると言う噂があり、殿方に肌を晒したことが無い自分にとっては恐怖を覚えた。
「総員揃っているな」
装備に身を固めたカレンは部下である護衛隊の兵士の前で確認をした。
「はっ。全員揃っています。」
「結構。それでは今日の任務はダンジョンに行き魔石の収取をする。総員乗車。」
先日より新しく配備された魔動装甲輸送車(装輪タイプ)2台に分乗した第1護衛隊は基地を出発した。
ダンジョンにはあっと言う間に到着した。乗車、展開の訓練も兼ねているので歩いていける距離ではあるが、あえて魔動装甲輸送車での移動を行っている。およそ20人の隊員はダンジョン前に集結した。
「それではダンジョンに突入する」
ダンジョンは冒険者の人気スポットであるが、このダンジョンは昔は人気スポットだったようだが、今では金銭的な魅力が無いようで不人気だ。村にも冒険者ギルドがあるが、ジョディの村の復興工事の際に中身スカスカの大規模ギルドだったが、身の丈に応じたちょうどよいサイズの建物に変更された。また、安全で高給な仕事がジョディの村には溢れているため、危険を冒してまで冒険者をする者がいなくなってしまっている。その為にダンジョンは我々の部隊しかいない状態だ。
「あくまでも魔石の回収が任務だ。無理して深入りするなよ。」
「「「はっ」」」
3班に別れダンジョンの中を進んでいく。次々に現れる魔物をカレンは剣でさばいていく。そして魔石に変わった物を回収役の隊員が拾っていく・・・地味な作業だ。だが、これが無いと魔動機が動かせなくなると思うと頑張らなくてはならない。
「奥に誰かいるようです」
隊員の一人が報告してくる。
(冒険者かな?このダンジョンにいるのは珍しいな)
「今日はカレンの部隊が担当なんだね。ご苦労様。」
「ドワコ様。こんな所で何をやってるんですか?」
「ちょっと必要な素材が出来てね。集めに来たところだよ。」
奥にいたのは自分の上司であるドワコ様だった。
詳しくは知らないが、ドワコ様はドワーフなので魔石燃料以外にも色々な物を作っているらしい。
「それではここから先は私たちが護衛させていただきます」
見つけてしまったので、魔石取集を中断してドワコ様の護衛に当たる事にした。
「いいよ。私一人でも平気だから魔石収集を続けて。」
「そう言われましても、私がデマリーゼ様に叱られてしまいます。」
以前はデマリーゼ様に取り巻きのように共に行動していたが、約2000体の魔物を相手にしたあの戦い以降は別々に行動することが多くなった。一番の原因はデマリーゼ様が変わられてしまったことだ。今では自分のベッドにドワコ様の等身大人形を置き抱きながら寝ている。ドワコ様に一種の恋愛感情でもお持ちではないかと思ってしまうほどの熱の入れようだ。
もしここで知らないふりをして別々に行動したら間違いなく叱責を受ける。デマリーゼ様は中級貴族で私の家はその下に使える下級貴族だ。身分的、立場的に逆らう事は出来ない。
「そっか。無理しないでね。危なくなったら自分の判断で撤退してかまわないから。」
「ありがとうございます」
ドワコ様の許可をいただき他の2班に魔石回収を任せ自分たちの班はドワコ様の護衛についた。正直な所、私たちが付いていなくてもドワコ様は異常な強さなので護衛をする必要は無い。だが形式だけでもやっておかないと後が怖い。
ドワコ様が魔物を倒し、その後を私を含めた護衛隊が付いていく形となっている。陣形としては護衛になっていないのだが仕方ない。ドワコ様が魔物を倒した後に残った魔石は回収係がしっかりと集めていた。その辺の抜かりはない。
「おっいたいた。懐かしいな・・・」
ドワコ様が目的の魔物を見つけたようだ。その魔物を見ると「鉄のワニ」と呼ばれる物凄く硬い魔物だ。この魔物は物理攻撃を全く受け付けず、私たちのような剣士タイプは避けて通る。性格はおとなしくこちらから手を出さない限り襲われることは無い。
「隊長、これどうやって倒すんですか?」
部下の兵士が私に聞いてきた。
「物理攻撃が効かないので魔法じゃないかしら?」
そう答えるしかなかった。私の方が聞きたいくらいだった。
カレンの読みは当たっていたようでドワコ様は鉄のハンマーから魔法書に持ち替えた。
「ファイア」
下級魔法の「ファイア」を唱えたドワコ様。さすがに下級魔法ではこれは倒せないでしょ・・・と内心思っていたが様子がおかしい。通常はファイアは赤い炎であるが、白い炎のファイアである。その炎を浴びた鉄のワニはみるみるうちに溶けていき魔石と鉄の塊となった。
「すごい」
カレンはそうつぶやいた。そうとしか言いようがなかった。私たちではまず倒せないタイプの魔物を意図も簡単に倒してしまった。底知れぬ強さを改めて感じた。
「やっぱりこの鉄が良質なんだよねぇ」
ドワコ様は鉄の塊を回収してアイテムボックスに入れた。それを何体か狩っていった。
「そろそろ時間かな。私は戻るけど、そろそろ勤務時間も終わりじゃない?」
「あっはい。それでは私たちも撤収準備に入ります。」
ドワコとカレンと第1護衛隊の隊員たちはダンジョンから出た。
自分たちが普段任務で集める魔石の数を大幅に超える数の魔石が集まった。
「それじゃここからは別行動で・・・お疲れ様」
そう言ってドワコ様はワイバーンに乗って帰っていった。
「それでは我々も基地へ帰投する。総員乗車。」
魔動装甲輸送車に乗り込み基地を目指した。




