06.鉄を調達
今日は疲れたので寝ることにした。
布団や毛布などは無いが、制作したベットで一夜を過ごす。
食事はマンガ肉で済ませた。
翌朝、クリエイトブックを読んでみるとレベルの低い品物は木材と鉄さえあれば製作可能なものが沢山あることに気が付く。木材は森で確保できるとして、鉄はどの様にしたら安定して確保できるかを考えた。クリエイトブックには一部の素材を作ることも可能なようだ。鉄もその素材に含まれるようで、鉄鉱石、砂鉄などから生成できるようだ。あとは鉄製品を素材に戻すこともできるようだ。鉄鉱石や砂鉄の集め方なんてわからないので鉄製品から鉄を回収することにする。
手持ちで鉄に変換できそうな物は、武器として使用している鉄のハンマーがあるが、他の武器が無いので使用してしまうと後で困る可能性が出てくる。廃棄寸前くらいの安い鉄製の武器や防具が素材として良いかもしれない。そう言えば村の中心部に剣と盾の書かれた看板のお店があったことを思い出した。早速向かうことにした。
「ココハ、ブキトヨロイノミセダ、ナニカカウカネ?」
どこかで聞いた事があるようなセリフで店の主人が話しかけてきた。
「鉄製の武器や防具を探しているんです。壊れている物でも構わないのでありますか?」
「そこの箱に入っている剣は、刃こぼれとか錆ついて使い物にならない物だな。安いから無いよりはマシな程度のお守り代わりの商品だ。」
値段を聞くと武器としての役目を果たさないためほかの武器と違いタダ同然の価格となっていた。この国には鍛冶職人がいない為、修理ができないらしい。とりあえず箱に入っている物すべてである30本を購入する。
「箱も一緒にいただいてもいいですか?」
「いいぜ。沢山買ってくれたから箱はサービスだ。持っていきな。」
代金を払いありがたく箱もいただく。それを箱ごとアイテムボックスへ入れる。
アイテムボックスの上限は20個までだが、箱や袋に入っている物は中にいくら入っていても箱または袋1個とカウントされる仕様のようだ。水筒の水を飲んだ時に容器などに入れた状態で収納したらどうなるのか疑問に思い試してみて気が付いた。アイテムボックスから出して袋などから中身を出さないといけない為その分時間がかかり、戦闘などで即時対応が必要なアイテムはこの方法では収納できない。
急に物が消えたように見えるため武器屋の主人は驚いていた。
工房に戻り購入した30本の剣を壁際に設置している製作用の箱に入れて蓋をする。クリエイトブックを開き、鉄(素材)を選択すると箱が光り蓋が開く。箱の中には生成された約1kg位に小分けされた鉄の塊が数十個出現した。それ工房に設置してある棚に収納していく。そしてベットを作ったときに余った木材と鉄の塊を1個を製作用の箱に入れクリエイトブックから鉄の斧を選択し制作した。これで木の確保も容易になるはずだ。
ここで困ったことが発生した。食糧がない事に気が付いた。ここ数日お世話になったマンガ肉をいつの間にか全部食べていたらしい。食料の確保が急務になりました。飲食店ってこの村にあるのかな?と考えていたら工房へお客さんがやってきました。
「おはよー。ドワコさんいる?」
聞き覚えのある声がした。エリーだ。
「いるよ、どうぞ。」
とドワコが言うとエリーが工房へ入ってきた。
「へぇ~。これがドワーフの工房なんだ。」
「昨日作ったばかりなので何もないけどね」
エリーが部屋の中を珍しそうに見ていた。
ちょうどいいタイミングで村に詳しい人が来たので尋ねてみる。
「この村で食糧の調達でどうすればいい?」
「食べるだけなら村の中心部にある食堂かなぁ。あとは宿屋でも品物は少ないけど食べることもできるよ。食材なら村の中央広場で開催する市場に行ってみると良いよ。毎日じゃなくて毎週2回開催でちょうど明日がその日だよ。」
「ありがとう」
食材の調達は明日になりそう。今日は食堂へ行く感じかな。
「ドワコさんここに住むことに決めたんだね。村の人が噂してたから様子見に来ちゃった。」
「今のところ他に行くところも無いから暫くここに滞在してみようかなってね」
正直なところドワコは今後の予定が全く立っていない。3日前にこの世界へやってきて、右も左もわからない状態で今に至っている。当面はここに拠点を構え生活基盤を整えつつ情報収集を行う予定だ。
「あっ、これお母さんから。」
と言って籠に入った芋を渡された。確か焼いて食べればよかったのかな?
「ありがとう。すごく助かる。」
当面の食糧確保です。お礼を言って受け取る。
「そろそろお昼ごはんを食べようと思うけど、一緒に食堂いかない?」
エリーを食事に誘ってみる。女性(子供だけど)を食事に誘ったの初めてかも・・・とか内心ドキドキしながら訪ねてみる。
「良いの?行く行く~。」
と了承の返事をいただいた。ちょっとテンション上がって来たかも。
一応言って置くけど、そういう趣味はないよ???
エリーに案内されて食堂へ入ってみる。ちょうどお昼時とあって鎧を着た兵士と思われる人とか、どこかで作業をしてきたような少し汚れた服装の人とかで店内は賑わっていた。店に入って来たのに気が付いたお店のお姉さんが声をかけてきた。
「いらっしゃーい。あらエリーが来るなんて珍しいね。お連れの方は噂のドワーフさんかな?」
ドワーフと言う言葉を聞いた店内の人たちが興味深そうに一斉にこちらを向く。ちょっと恥ずかしい。すぐに自分の食事に戻ったりして何事もなかったような雰囲気に戻る。
「今日はドワコさんの付き添いみたいな感じかな」
とエリーが答え店のお姉さんにテーブル席に案内してもらう。
「ご注文が決まったら声をかけてくださいね」
メニューらしきものが書かれた木札が壁に掛けてあるが読めない・・・。ここは素直にエリーに聞いてみよう。
「私、字が読めないみたい。エリーわかる?」
「えっとね。右から・・・」
と、順に書かれていた木札を読んでもらう。エリーが来てくれて助かった。
エリーは芋の焼いたものと焼き魚のセット、ドワコは芋の焼いたものと焼いた鳥のセットを注文することにした。しばらくするとお店のお姉さんが注文の品物を運んできた。
「どうぞ、ごゆっくり~。」
と言って他の客へ注文を取りに行った。
「いただきます」
「いただきます」
と二人で言ってから食べることにする。んー。味は薄いけど不味くはない。この世界の味付けは薄味が基本なのかな?と思いながら食を進める。
「ドワコさんの工房ってどんなことをするの?」
とエリーが話しかけてきた。実のところドワコも良くわかっていないがわかる範囲で答える。
「木材とか鉄とかの材料を加工して武器とか防具、あとは家具なんかを作ったりするよ。そういえば工具や農機具も作れると思う。」
「鉄とか加工できるんだすごいね。詳しくはわからないけど鍛冶屋さんって言うのかな?この国には無いんだって。鉄製の道具は他の国から来た商人から買ってるんだって。」
「そういえば武器屋でそういう話を聞いたかも」
正直なところ作り方はわからないけど、スキルを使えばある程度の鉄を加工することも可能だ。これは商売になるかも?
と言うようなやり取りをしているうちに完食し支払いを済ませて店を出ることにした。
「ごちそうさまでした。それじゃ私帰るね。また遊びに来るね。」
「いつでもおいで。お芋ありがとうて伝えておいてね。」
と挨拶を交わし別れた。さて、午後からは木材集めに行くことに行くことにする。