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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
ドワーフの領主様
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57.魔動機の研究開発

線路の施設作業が終わったので、施設作業にかかわった者は村の復旧作業に戻った。


今回の施設作業で作られた線路は砦とジョディの村までの約1キロ弱の区間だ。

ドワミは早速それに合わせた試作魔動車の製作にかかった。ちなみに線路の施設場所は砦とジョディの村を結ぶ道より若干離してある。これは実験中に人や馬車などと当たってしまわないようにするためだ。あと、線路内には立ち入らないように領地内に通達も出しておいた。これについては根本的な対先を考えないといけないが、まだ実験段階なので実用化する時に改めて考える事にする。


それと魔動車の製作を担当するドワミには、いくつかの魔動機を製作して渡し、自分がいた世界に存在した幾つかの技術をアドバイスしておいた。そして、数日後ドワミは試作魔動車を完成させた。


「それじゃ試運転はじめますね」


ドワミが言った。今回もドワコとエリーが来ている。


「どれくらい良くなったか楽しみです」


エリーも試作魔動車の完成を楽しみにしていたようだ。


「今回は線路の上を走ると言う事で操舵用のハンドルは付けていません。動かして止める。それだけの簡単な構造になっています。ただ、運転席を前と後に付けて車体の向きを変えなくても運転できるようにしてみました。それとドワコさんから教えていただいた板バネと言う物を車輪と車体の間に付けてみました。それによって乗り心地が向上していると思います。」


「それじゃ早速、試運転をしてみましょう。」


運転席にドワミが座り、荷台にドワコとエリーが乗り込む。


「それじゃ行きますね。」


ゆっくりと線路の状態を確かめながら魔動車は動き出した。線路の施設状態は良好で特に問題なくジョディの村に到着した。近くで復旧作業していた人たちが魔動車が到着したのを見て集まって来た。


「領主様。これが魔動車と言う物ですか?」


「そうですね。今は試作段階なのですが、将来的にはこの村と砦の移動に使おうと思っています。人や荷物の運搬に役立ってくれると思いますよ。」


住民の問いかけにドワコは答えた。


「これから実験の為に何度か行き来すると思いますけど、気にせず作業の方をお願いしますね。」


「はい。わかりました。」


住民たちは魔動車を見て回り少ししてから自分たちの作業に戻った。


「それじゃ、砦まで戻りますね。今度は少し速度上げてみますね。」


ドワミが言った。

先ほどは線路状態を確かめるために歩くくらいの速度しか出していなかった。

魔動車が速度を上げる。体感的に原付バイクくらいの速度だろうか・・・人が全速力で走る速度よりも少し早いくらいだ。速度を上げたと思ったらドワミはすぐにブレーキをかけ始めた。そして砦に戻って来た。


「やっぱりブレーキが甘いかな・・・。もう少し早く止まれるか距離が長ければ速度出せるのになぁ。」


「距離については今の所これでやるしかないけど、ブレーキについては改良できそうだね」


ドワミが改良点を述べてドワコがアドバイスをする。


「やっぱり、機械式じゃ甘いかな・・・油圧か空気圧のブレーキも考えないとダメかな。」


ドワーフなら力に物を言わせて機械式でも改良すればいけそうな気もするけど、他の人が使うのも想定して作らなければいけない。今回は将来の事も見据えて、大型のものに採用されることが多い空気圧を使用したブレーキを研究することにした。


すでに試作で作った荷馬車を改造した魔動車を使い物資の輸送を行っている。輸送業務に使うためにいくつかの改良を行ったが、おおむね良好に稼働しているようだ。ただ、馬車が通れる道でないと走れないのが難点かも知れない。



それから数日が経過し、ジョディの村の復旧工事が終わった。

住民達も村に戻り生活を始めたようだ。次は食料の自給率を上げなければいけない。今は本国からの物資支援で何とかやっている状態だ。支援なしでも食料の確保が出来るようにして自立させなければいけない。


幸い、元の国境線付近は平地が続いているのだが、相手の国を刺激しないようにとの配慮から開発等は行われていなかった。広大な未開発の平地があるのでこれを利用しようと思う。


ドワミに土木作業で使用する魔動車の開発してもらった。魔動機2基を搭載し無限軌道と言われる履帯を装備した魔動車だ。これは整地されていない場所でも移動が出来る。その上、2基の魔動機を搭載しているのでパワーもある。この先端部に整地用の板を付けて整地作業が行えるようにした。また、用途に応じて穴を掘ったり、掴んだり、砕いたり、整地できるなどの用途に合わせた土木工事用の魔動車も製作した。

それに合わせて砦の近くに魔動車の整備や収納が出来る格納庫も作った。


整地作業も終わり、元国境付近の平地には広大な畑が出来た。あわせて近くを流れる川から水も引いてきて用水路も作った。土木用魔動車のおかげで作るまでの日数が短縮できた。それに合わせて農業用の魔動車の研究も始めた。運搬程度なら現行の魔動車で出来るが、畑を耕したり、収穫するような作業も出来るようになれば作業の負担が軽減されると思う。



ドワコは執務室で各種報告と進捗情報を纏めていく。


「思っていたより作業が早く進んでいるようで良かった」


自分が想定している範囲に作業が進んでいる事に安心する。今はムリン国の砦のあった場所を整地してドワーフの集落と避難民たちの居住区を作る工事をしている。これが完成すれば初期の段階で計画していた復興工事が完了する。ドワーフの集落の人たちはこちらに移り住んでくれることになった。それにあたって要望を聞き、それぞれのドワーフの実情に合った工房兼住居を作る計画にしている。


「色々と大変でしたね。これからは少し時間に余裕が出そうですね。」


お茶を持ってきたエリーが言った。広大な畑から収穫できるのは、もう少し先なのでそれまでは食糧支援を受け続けなければならないが、それ以降は自立して領地を運営しなければいけなくなる。


「これは一段落したけど、まだ残されている仕事が多すぎるよね・・・」


「そうですね。でもこれは通常の業務になるので部下たちに任せちゃっていいと思いますよ?」


ドワコとエリーは仕事の割り振りを考えていく。

割り振りが終わったところでドワミが来た。


「ドワコ、土木用の魔動車や農業用の魔動車の開発で遅くなってしまったけど、線路を走る魔動車が完成したよ」


「そっか。完成したんだね。お疲れ様。早速見に行ってみよう。」


ドワコとエリーは完成した魔動車を見るため格納庫に行った。


「これはなかなか」


魔動車用の格納庫を作る時に、線路も引き込み整備用の場所も作っておいたので、最初の試作車から後はドワコは作業状況を報告でしか把握していなかった。現物を見るのは初めてなのだが完成度は思った以上に良かった。以前は荷馬車を改造した物で車輪は側面についていたが、小型化した車輪を下に配置し、その上に荷室を配置して荷室幅がかなり広がっている。車体前後には乗降用のステップと運転席が備え付けられている。前面には風よけの為の透明な板(ガラスのような物)が取り付けられて高速走行にも耐えられるようになっている。


「どう?ドワコのイメージした物にかなり近づいたと思うけど?」


ドワミが自信がありそうな感じで言った。


「デザインとかはかなり近づいた感じだね。あとは動力性能だね。」


「それも乗ってみるとわかるかも」


ドワミは魔動車へ案内した。荷台部分には長椅子が両サイドに取り付けられていて、座ることが出来るようになっていた。屋根も布製の物が掛けられており雨天時の運用も考えられているようだ。ドワコとエリーは椅子に腰かけた。板で作られているため座り心地は良くないが、以前は荷台に乗っていただけなのと比べると格段の進化だ。


「それじゃ行くね」


ドワミが運転席にあるブレーキ弁を操作するとプシュッと空気の抜ける音がしてブレーキが外れた。そして加速用のペダルを踏むとゆっくりと格納庫から出て行った。


格納庫から出てくるとあとはジョディの村まで一直線の線路が続いている。魔動車は加速していった。前回よりも速い速度まで上がり村の手前でブレーキをかけて余裕で停止することが出来た。時間にして100秒くらいで砦とジョディの村の移動が出来た。ちなみに歩くと10倍近い時間がかかる。距離が短くてこれだけ効果があれば距離が延びるほどこの効果は絶大になっていくだろう。


「良い感じだね。これなら十分実用化できそう。」


予想以上の完成度にドワコはドワミを褒めた。

こうして線路を走る魔動車の実用化が一歩近づいていった。

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