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賢者になったドワーフ娘(仮)  作者: いりよしながせ
ドワーフの聖女様
34/128

34.温泉施設

エリーが正式な従業員になるので、エリーの両親に許可を貰いにドワコはエリーの家に行った。


工房から直接来ているので、エリーも一緒だ。


「おかあさん。だだいま。」


「おかえり。あら、ドワコさんも一緒だね。こんにちは。」


エリーママに出迎えられた。


「お久しぶりです。今日はお話があってこちらに伺いました。」


「パパは?」


「もう少しで帰って来るんじゃないかな?」


同じタイミングでエリーパパも帰ってきた。


「ただいま。おっ、ドワコさんいらっしゃい。」


「お邪魔してます」


「ドワコさんが話があるんだって」


エリーママがエリーパパに伝える。


「そうか・・・ついにこの日が来たか・・・。娘をくださいってあれだろ?」


「お父さん・・・違うから」


エリー親子のやり取りを見ていたドワコは話し出すタイミングを失った。


「おっと、すまんすまん。それでお話と言うのは?」


「エリーをウチで正式に雇おうと思いまして・・・そのお願いに来ました」


「ああ・・・別に構わんよ」


あっさりとエリーパパから許可をもらった。


「本人がやりたいなら別に止める必要もないから」


エリーママも言う。詳しい内容を話す前であっさりと許可が出てしまった。


「おとうさん、おかあさんありがとう。」


「ドワコさん今日は泊ってく?」


エリーママから提案を受ける。


「それじゃ今日は邪魔させていただきますね」


初めてこの村に来た時、ドワコはこの家で泊まった。あれから色々な事があって、ちょっと懐かしい気分になった。


夕食を一緒に食べて、就寝する。

以前は別々に寝た気がしたが、なぜか今晩はエリーと一緒に寝る事になった。


「ドワコさん。今日は一緒に寝てくれてありがとうね。」


前にシアもいたが一緒に寝たこともあるので抵抗も無く一緒寝る事が出来た。


朝起きたらエリーが抱き付いていた。


「キマシタワー。グヘヘヘ。」


とか変な寝言を言っていたけど、どんな夢を見ていたんだろう・・・。


翌朝、エリーの家で朝食をご馳走になって、ドワコとエリーは冒険者ギルドへ向かった。


「おはようございます」


冒険者ギルドに入った。確かに少し前のにぎやかさが落ち着き、ギルド内は数人の冒険者がいるだけとなっていた。カウンターにはおばちゃん一人だけだ。


「おや、久しぶりだね。」


「何か面白そうな依頼が無いか見に来ました」


本当はギルドの賑わい具合を調査に来ただけだけど・・・今回はそういう理由なのでエリーも同行している。


「冒険者の登録をお願いします」


エリーがさらっと何か言った。


「へっ?」


エリーが冒険者の登録をしている。お嬢さん・・・何をする気で???

エリーが冒険者の登録を済ませギルドカードを見せる。


「冒険者になっちゃいました」


「なぜ登録を?」


「無料で登録してくれるのと、ギルドカードを持っていると城下町では割引してくれるところもありますし・・・」


危険なところへ行くわけじゃないと言う事がわかりドワコは安心する。


「せっかくなので何か依頼を受けちゃいましょう」


エリーが依頼の書かれたボードを見る。

そして依頼の書かれた紙を3枚剥がしカウンターに置いた。


「それじゃこれお願いします」


あっと言う間に3つの依頼を受けてしまった。


「それじゃドワコさん早速行きましょう」


エリーが受けたのは素材取集の依頼だ3件とも森で採取可能らしい。

2人は森へ入って行く。


「実は私、採取が趣味なんです。」


そう言えばエリーと初めて会った時も森で採取していたな・・・と思いだす。


「まあいいっか。最近こういうのもやってなかったし初心に戻ったと言う事で。」


当初の予定変更でドワコとエリーはギルドの依頼をする事になった。

森の中を歩き依頼書に書かれた素材を集めていく。3つとも採取だけで済む植物系なので魔物を倒す必要はない。

と言っても森の中なので魔物に遭遇することもある。遭遇するたびにドワコが鉄のハンマーで撃退していく。ダンジョンの中にいるような強い魔物ではないので簡単な作業だ。


「実は・・・採取はついでなんですけど・・・これを見てもらいたくて」


どこをどう歩いてきたのかドワコはわからなくなっていたが、エリーに案内されるがままにここにやってきた。


「前に見つけたんですけど、少し森の奥になるので1人ではゆっくりと調べる事が出来なかったので・・・。」


それは森の奥で湧き出る泉のようなところだった。普通の泉とは違い、湯気が立ち上っている。ドワコは泉に手を入れてみる。


「暖かいね・・・と言うより少し熱いくらい?」


「そうなんですよ。水かなって思ったんですけど、温かいんです。変な泉ですよね。」


「硫黄系の匂いが若干するようだし、天然の温泉かな?」


「温泉って何ですか?」


「地下に熱源があって、その熱で暖められた水が噴き出している所・・・かな。地面を掘った時も出る時があるよ。」


「そうなんですか?これ、村の活性化の何かに使えないかなって思って。」


「村に温泉施設とか作ると良いかもね。適温に調整して浸かると、いろいろ効果もあって、とても気持ちいいよ。」


ドワコはあることを思いついた。ちょっと空に上がるよ。と言ってワイバーンを召喚した。


「エリーも乗る?」


「乗ります」


ドワコとエリーはワイバーンに乗って上空へ上がった。


「この場所から村までの距離は・・・っと。意外と近いなこれは行けるかも。」


上空から、温泉が湧く泉から村までの距離を目測する。あまり離れていないようだ。

ワイバーンを着地させドワコとエリーは降りた。


「採取の方は終わった感じかな?」


「はい。終わりました。」


「それじゃギルドに報告して、村長の所へ行こう。」


「はい」


ドワコとエリーは集めた素材をギルドへ持って行き、依頼を達成した後で村長の屋敷へ向かった。


「ワゴナーさん。すみませんけど村長に取次ぎをお願いします。」


「かしこまりました。少々お待ちください。」


村長の執事ワゴナーに取次ぎをお願いする。


「お待たせしました。どうぞこちらへ。」


ドワコとエリーは村長の執務室に通される。


「よく来た。それでどのような用かな?」


村長が聞いてくる。


「この村の活性化についてのお話です」


「ふむ、聞こう。」


ドワコは先ほど思いついた温泉施設建設についての提案をする。村長は話を聞いたうえで答える。


「それは面白そうだ。費用についてはこちらで負担しても構わないが、建設に必要な職人などを確保するのは難しいぞ。」


「それなら心当たりがありますので」


「そうかわかった。それじゃよろしく頼む。」


費用の問題も解決し、村長の屋敷を後にする。


「村長との話を聞いていたらかなり大掛かりなものですね」


「そうだね。実際問題、自分が使いたいと言うのもあるけど。」


「それで建設に必要な職人さんはどうするんですか?」


「今から頼みに行ってみようと思う」


「私もご一緒しますね」


森に入り人気のいない所でワイバーンを召喚し、2人は移動を開始した。






ワイバーンはドワーフの集落まで来ていた。まあ自分の管轄する場所なので・・・と言う事でそのまま集落に降りる事にする。


「親方ー。空から女の子がー。」


ドワミが親方に向かって叫ぶ。


「なんじゃ?ワイバーンだと?」


親方が空を見上げ驚く。

ワイバーンが着地してドワコとエリーが降りた。


「すみません驚かせてしまって」


「なんだ、おまえさんか。魔物が来たかと思っててびっくりしたわい。」


「あードワコだ。久しぶり。そちらの方は?」


「はじめまして。エリーと言います。ドワコさんの所で働かせてもらってます。」


エリーが自己紹介をする。


「そうかい。で?今日は何の用だい?」


親方がドワコに聞いてくる。


「何人か人を貸してほしいんです。もちろん日当も出しますので。」


「まあ、お前さんの頼みじゃ断れんな。ドワミ、みんなを呼んで来てくれ。」


親方が招集をかけ、集落のみんなが集まる。


「みんな集まったな?それじゃ改めて説明してくれ」


「お忙しい所すみません。ここから少し離れた所にアリーナ村と言う場所があるのですが、そこに温泉施設と言う物を建てたいと思いまして・・・ぜひ皆様の協力を頂ければと。日当も出しますので強制ではありません。」


「と言う事だそうだ。誰か行ける者はおらんか?」


親方が集落のみんなに問いかける。


「おうおう。みんな行く気か?さすがに集落を空にするのはいかんな。」


全員が行くと名乗り出てくれた。それを見たドワコはとても温かい気持ちになった。

(実際はドワーフの職人魂がそうさせただけだったのだが・・・)


「それじゃ、わしが適任者を選ばせてもらうぞ。」


親方が適任者を選び親方、ドワミを含む15人のドワーフがアリーナ村に向かう事になった。準備を済ませ、そのまま出発することになった。ドワーフの集落はアリーナ村まで徒歩で1日半かかる。ドワコとエリーも一緒に同行した。


そして1日半かけて一行はアリーナ村に到着した。途中野宿となった夜はドワコの出した酒と食料で大宴会だった。


それじゃ早速作業をお願いします。工房で大まかな工程を指示書に書き各班に渡す。エリーにはドワーフたちの宿屋の手配と村で手の空いていて手伝いが出来る人の動員をお願いした。

ドワコは工房を使って建築資材の生産を行った。


3日後、見つけた源泉より引っ張って来た温泉を使用した温泉施設が村の中に完成した。ドワーフの建築能力はかなり高く、短い作業日数にもかかわらず、かなり良いものが出来上がった。


温泉施設は平民用、貴族用と別けられ、平民用は入浴だけで気軽に利用できるように、貴族用は保養所として城や城下町から来て滞在できるようにと言うコンセプトで作られた。貴族用はアリーナ村で取れた食材を生かした料理が提供される宿泊施設も備えている。各温泉は平民用は男女別に分かれ、貴族用は個室ごとに用意した。ドワコの元いた世界での温泉旅館をイメージした施設となっている。


「ドワコよ。このような立派な施設が出来たことをうれしく思う」


村長がドワコにお礼を言う。


「施設は作りましたが、運営は村で行わないといけません。いかに宣伝して集客するかが大事ですので後はよろしくお願いします。」


ドワコが答える。


今日は、村をあげての温泉施設開業の記念式典をしている。数日でこのような大きな施設を完成してしまった事に村人は驚いていたが、これもドワーフの集落のみんなが協力してくれたおかげだ。新たな施設が完成した事で村の活性化が出来ればよいとドワコは考えた。


「それでは皆の者。これをもって『アリーナ温泉』を開業する」


村長の挨拶で温泉施設『アリーナ温泉』の営業が始まった。



ドワコはドワーフの集落の作業に参加してくれた人たちを集めた。


「皆さんの協力で温泉施設が完成しました。ありがとうございます。今日は完成した施設でゆっくりと疲れを取ってください。あと、宿の方で私からささやかな宴会の準備をさせていただいてますのでお楽しみください。」


ドワコが協力してくれたドワーフ達をねぎらいお礼を言った。


「と言う訳だ。お疲れさん。今晩は楽しんで明日の朝には集落に向けて出発だ。」


「「おー」」


と言う事があり・・・で今の状況ですが・・・。

完成した温泉に入っています。貴族用は個室なので1人ゆっくりと浸かることが出来るのですが、ここは平民用な訳で・・・公衆浴場となっています。


中は裸の女性ばかりで目のやりどころに困っています。エリーとドワミが両サイドにいてお湯につかっている状態です。洗い場の方を見るとおばちゃんが数人固まって話し込んで体を洗っています。


基本的にドワーフの女性の胸はまな板なのかな?と自分とドワミを見比べて思っていたらエリーが話しかけてきた。


「わたしはまだ成長過程なのでこれから大きくなりますよ。期待していてくださいね。」


と、意味深な事を言ってくる。


「なんか疲れが取れるね。こんなものを思いつくドワコってすごいね。」


ドワミが言ってくる。・・・まあ自分が考えたものではないけどね。

そんな感じで疲れを癒した3人であった。



翌日、ドワーフの一行は村人に送られ帰路についた。この仕事が、のちに語られるマルティ王国で知らない人がいないと言われるほど有名になる建設、製造のプロ集団「ドワーフ軍団」の初仕事であった。

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