02.転生したようです
長く眠っていた気がする。
仕事への行く時間が過ぎているのではないかと起き上がると何故か森の中にいた。
あれ?ここどこ?
空は明るくなっており、昼くらいの太陽の高さになっている。
なんか体が小さくなっているような気がする。変な違和感を感じた。
とりあえず周りの様子を見てみるが知らない場所である。目の前に舗装されていない人が通れるくらいの道(けもの道に近い感じ)があるので適当に進んでみる。1時間ぐらい(正確な時間がわからないので感覚だが)歩いたところで1mくらいありそうな大きなネズミに襲われそうになっている10歳くらいの少女を発見した。少女は今にも泣きそうな様子で声も出ないくらい怯えているように見えた。
考えるよりも先に助けに入ろうと体が動いていた。なんとか少女と大きなネズミの間に入ることができた。
「大丈夫?」
と声をかけると少女は少し安心した様子で答えた。
「助けてくれるんですか?ありがとうございます」
少女がすがるような眼でこちらを見ている。
ここは大人が良いところを見せないと。と思い近くにあった棒きれを持って構えた。最近は仕事に追われ鍛錬をしていなかったが、幼い頃より剣道を習っていて少しは出来ると自分でも自負していた。
棒を構えたタイミングで大きなネズミが飛び掛かってきた。即座にバットを振るような動作でスイングして大きなネズミに打撃を与えた。当たり所が良かったのか?かなり飛んでいきました。野球で言うとホームランになりそうな感じで・・・。
「さすがドワーフさん。すごい力です。おかげで助かりました。」
と、笑顔で少女が言うと少し疑問に思った。
「ドワーフさん?」
「ドワーフさんじゃないんですか?」
と少女は聞き返してきた。そういえば少女は10歳くらいに見えるが、自分との目線が同じくらいにある近くに水溜りがあったので覗き込んで見たら・・・。
「なんじゃーこりゃー」
と刑事ドラマで殉職してしまいそうな声を上げてしまった。
(すこし落ち着いたところで・・・)
顔が少し前までプレイしていたゲームのキャラクター『ドワコ』になっていた。少女にドワーフさんと呼ばれたのも納得した。これは夢の中なのか現実なのかわからなくなっていた。とりあえず現実だという事で行動をすることにした。
「すみません。少し取り乱しました。」
「私はエリー。この先にあるアリーナと言う村に住んでいます。ドワーフさんのお名前教えていただけませんか?」
さて・・・どう答えよう?誠と名乗るべきかこのキャラクター名であるドワコと名乗るべきか悩む。考えた末にドワコと名乗ることにした。
「私はドワコって言います。実はなぜここにいるのかわからず森をさまよっていた所です。」
と答えた。
「困っているようでしたら家に来ませんか?お礼もしたいですし・・・」
とエリーが言った。
誠はこれからの事を考えるためには情報収集が大事だと考え招待を受けることにした。
道中エリーがなぜこんな所にいたのか尋ねると、山菜取りをしていたそうだ。村からあまり離れておらず、普段はこの場所では大きなネズミ(オオネズミと言うモンスターらしい)は出ないそうだ。30分ぐらい歩くと森を抜け小さな村が見えてきた。
「ここが私の住んでいるアリーナの村です」
「小さな村ですけど冒険者ギルドがあるんですよ」
とエリーは言った。冒険者ギルドはそれなりの規模の町や村にしか無いそうだが、周辺に他の町や村が無いために出張所のような小規模なものが設置されているとの事。
確か冒険者ギルドってチュートリアルで素材収集やモンスター討伐などの依頼を受けて達成すると報酬がもらえるみたいな所だったかな?ゲームでは初期の段階で冒険者ギルドに登録をした証として発行されるギルドカードを作るイベントがあった。ギルドカードにはランクがあり初期の段階では銅、ランクが上がると銀、金と変わっていくみたいな説明を見た記憶がある。少し気になるので後で行ってみる事にした。
そしてエリーと一緒に村に入ろうとした時、入り口にいる衛兵のおじさんに呼び止められた。
「おや?この村にドワーフさんが来るのは珍しいね」
「森でオオネズミに襲われそうになった時に助けてもらったんです。そのお礼をしようと思って連れてきちゃいました。」
とエリーが衛兵のおじさんに答えた。
「オオネズミか・・・怪我がなかったようで良かったよ。エリーを助けてくれてありがとよドワーフさん。念のために他にもモンスターがいないか村の衛兵で見回りしてみるよ。」
と立ち話をして村に入った。
お世辞にも綺麗とは言えない建物が点々と並び、少し歩くと建物が密集したエリアに出た。
「ここが村の中心部です。色々なお店や宿屋、冒険者ギルドはこの一角にあるんですよ。」
とエリーが言った。看板の字は読めないが一緒に書かれている絵で何を扱っている店なのかわかるようになっていた。冒険者ギルドはここかな?
中心部を抜けたところにエリーの家があった。お世辞にも立派ではなく木でできた平屋の小さな家である。
「おかあさん、ただいま。」
「おかえり、今日は早かったね?あら、お客さん?」
とエリーの母親だと思われる人が奥から出てきた。体の主張するところはあまり無いような気もするが優しいお母さんと言う感じだ。
「森でオオネズミに襲われちゃって、ここにいるドワコさんに助けてもらったんだ。お礼がしたいから連れてきちゃった。」
「ドワコさん、娘を助けてくれてありがとう。良かったら今日は泊っていってね。」
「それでは一晩だけお邪魔させていただきますね」
と言う事で今日の寝床確保です。