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19.新しい拠点

ドワコは宿屋に戻って来た。これからの事を思うと気が重い・・・。


部屋で休憩しているとシアとエリーが戻って来た。


「良い物件見つかった?」


「全然ダメだった」


今日も良い物件は見つからなかったようだ。


「それでドワコさんはお城の呼び出しどうだった?」


シアに聞かれドワコはどのように答えようか考えた。聖女見習は秘密にしないといけないみたいなのでお手伝いと言う事にしておこう。お礼に家を貰ったと言えば何とかごまかせそう。


「呼び出しは聖女様からだったよ。なんか手伝ってほしいことがあるんだって。」


「そうなんだ」


エリーは何も言わず何かを察したようだったが、シアはそのまま受け止めたようだ。


「それでそのお礼にってこれを貰ったんだ」


と、シアに建物の権利書を見せる。


「すごいね。お礼で建物貰えちゃうんだ。貴族様は違うねー。」


「店舗スペースもあるみたいだからシアのお店にどうかな?って聖女様が言ってたよ。」


「それじゃ明日3人で見に行ってみましょう」


明日の予定が決まった。


夕食を食べ、体拭きをしてから川の字になって寝ることにした。疲れもあってかドワコはすぐに眠りについた。



ドワコは夢を見ていた・・・。お花畑でとても甘いにおいをかいでいる。すごく心地よい気分だ・・・段々と目が覚めていく。くんかくんか良いにおいがする。


目を開けるとエリーの頭が見えた。この甘いにおいはエリーだったようだ。しかも抱き着いてしまっていた。


「はうぁ」


エリーから離れ、思わず声が出た。シアの方が気になってそろーっと見てみる。目がぱっちり開いていてニヤニヤしている。


「もうドワコさんったら~朝からお盛んね~」


昨日に続いてドワコは真っ赤になった。

ここ数日の目覚めはトラブル続きだと思ったドワコであった。


城下町で活動できるのは今日が最終日だ。明日の早朝には帰路につかないといけない。


「それじゃ物件を見に行きましょうか」


朝食を終え、物件を見に3人は宿屋を出発した。


「ここがその物件ですか~」


エリーが建物を見上げて驚いたように言った。

地上4階建てで一階部分が店舗スペースになっていて2階から4階が居住スペースになっている建物だ。立地も中央通りに面しており付近の店は高そうな高級店ばかりだ。もちろん周りに引けを取らない立派な建物である。


「すごいしか言えないね?」


シアも驚いている。


「ここで見ていても始まらないので中に入ってみよう」


権利書と一緒に渡された鍵を開け建物の中に入る。1階店舗部分かかなりの広さだ。現店舗の品数だけでは売り場のスペースがほとんど埋まらない状態になってしまう。2階、3階は居住スペースになっている。豪華な備品などもそのまま残されており、そのまま使用しても売却しても構わないようだ。4階部分は使用人の個室となっているようでそれなりの部屋数がある。まさに大商家の建物であった。


「これは思ってた以上に凄いね。維持費や税金とか凄そう。」


「聖女様が言うには税金かからないんだって」


「そんなの聞いたことないよ。あまり深く詮索しちゃダメみたいだね。」


シアが半分諦め口調で言う。


「これドワコさんの家なんだ。すごーい。ドワコさんこっちに引っ越しちゃうの?」


「工房と家は村の方でそのままにしておくよ?ここは城でのお手伝いがある時に滞在するときに使うだけ。」


「そうなんだ。安心したよ。ドワコさんいなくなったら寂しくなるし。」


いい子だよ。おもわずエリーの頭を撫でてしまった。


「それでうちの店の為にこの場所を貸してくれるの?」


「シアさんが問題ないって言うなら大丈夫だよ。今までお世話になってるし、貰いものだから賃料もいらないし。」


「さすがにこの場所相応な金額は無理だけど、最初予定していた金額くらいなら払えると思うから、それだけは受け取って欲しいな。」


「わかったよ。そういう事で契約成立ね。」


「よろしくね。大家さん。」


会話の少なくなったエリーが気になったけど用件も終わったので施錠して宿に戻る事になった。


「まだ時間が早いから夜までは自由行動ね」


シアが提案する。

特にすることも無かったのでエリーもドワコも了承する。


さて、時間も出来たし、どこへ行こうかな?


シアは他店の偵察に行き、エリーは家族へのお土産を買いに行った。そうだ冒険者ギルドへ行ってみよう。


少し町中を探して冒険者ギルドを見つけ中に入る。


チリンチリン。ドアに取り付けられたベルが鳴る。中にいる人が一斉にこちらの方を向く。確認した後、興味無さそうに視線を戻す。


ギルドの中は受付用のカウンター、依頼の書かれた掲示板、併設で飲食スペースもあり沢山の冒険者でにぎわっている。アリーナ村の冒険者ギルドしか見ていなかったドワコにとっては、活気にあふれたこの光景が新鮮に見えた。


とりあえず依頼の書かれた掲示板を見て回る。この世界に来てからは字も読めず、依頼内容を確認をするのも大変だったが、エリーに文字を教えてもらい今では読むこともできる。銅ランクの冒険者が受けられる茶色の紙で書かれたもの、銀ランクが受けられる灰色の紙で書かれた物、金ランクが受けられる黄色の紙で書かれた物、上位ランクの冒険者は下位ランクの依頼も受けることが出来る。パーティーを組んでいる場合はメンバーの中で一番上位のランクが受けられる依頼に適用される。


銅ランクの依頼を見ると、採取や周辺の魔物の駆除、護衛任務など色々張り出されている。自分には関係ないが銀、金ランクの依頼も見てみる。山の奥に出現するゴーレムの盗伐、森の奥で出現するドラゴンの調査、要人の護衛・・・などなど。さすがに難易度が高そうだ。明日帰路につかないといけないので今日は依頼を受ける予定はない。次に城下町に来た時に時間があれば受けてみようかな。


隣に併設されている飲食スペースへ行ってみる。食事よりもお酒を飲んだりする方がメインなお店のようだ。


「いらっしゃいませ~。おひとりですか?」


給仕のお姉さんが声をかけてきた。


「はい。一人です。」


「空いている席へどうぞ」


客席を見るとテーブル席、カウンター席とある。九割程度席が埋まっているが一人座るくらいなら全く問題ない。近くに空いていたテーブル席に腰掛ける。


「それではメニューはこちらです。御用がありましたらお呼びください。」


と言って給仕のお姉さんは奥へ入って行った。


メニューを見てみる。ここに来てからお酒なんて全く飲んだことが無かったので興味が出たので注文することにした。


「すみませーん」


「はーい。ただいま。」


給仕のお姉さんを呼ぶ。


「えっと、蒸留酒(たぶん焼酎だと思う)とおつまみセットをお願いします」


「え?」


給仕のお姉さんが固まる。おそらく見た目で子供と判断したのだろう。


「わたしドワーフだから見た目はこれでも立派な大人ですよ」


「は・・はぁ。ドワーフの方なんですね。かしこまりました。少々お待ちください」


給仕のお姉さんは納得していない様子で注文を通しに奥へ入って行った。

しばらくして注文の品物を持ってきた。


「こちらがご注文の蒸留酒とおつまみセットです」


「ありがとうございます」


久しぶりのお酒を前にちょっとテンションが上がったドワコであった。

早速、蒸留酒を口に含んでみる。何から作っているかわからないけど焼酎に似た味がする。でもアルコールはそこまで高くなさそうだ。おつまみは干し肉がメインで豆類やチーズみたいな物など色々盛ってある。程よくお酒を楽しんだ後、会計を済ませる。ギルドカードを提示すると若干割引をしてくれるようだ。


ギルドを後にして少し町の中をぶらぶらしてから宿に戻る。すでにシアもエリーも戻ってきていた。


「ドワコさんお帰りなさーい」


「お帰り」


「ただいま」


少し前に食べたばかりなので、あまりお腹はすいていなかったが夕食を済ませ、3人で体の拭きあい(さすがに慣れた)をして就寝する事にする。明日はいよいよ村に戻る日だ。


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