18.お城へ
ドワコはお城の前に来ていた。
大きな門の前には2人の衛兵が立っていた。
特に呼び止められることも無く、堀にかけられている橋を渡り城の門を通った。なぜ呼び止めないのか不思議に思っていたら中に入ってわかった。平民用と貴族用の入り口が分かれているのだ。道幅は両方とも馬車が十分通れる広さが確保してある。自分は貴族ではないので平民用の入り口へと向かう。そこには入城を待つ長い待機列ができていた。城への献上品や城内で使用する食料などの納品や、各種届けなどの列なのかな?などと考えていると自分の順番が回ってきた。
「ドワーフがこの城に来るのは珍しいな。今日はどのような用だ?」
衛兵が話しかけてくる。
「えっと、城へ来るようにと手紙をもらいまして・・・」
「どのような手紙だ?見せてみろ。」
「はい。この手紙です。」
と宿屋に届けられていた手紙を渡す。
「はっ。しっ失礼しました。申し訳ございません。貴方様はこちらの門ではなく隣の貴族用の入り口からの入城となります。大変長い間お待たせしてしまい申し訳ありません。」
手紙を見せるなり衛兵の態度が変わった。まあ心当たりのある差出人と言えばあの方なのでそうなるのかなと思い貴族用の入り口へと向かう。
「それでは、案内しますね。」
と貴族用の入り口で手紙を見せると、控えていたメイドさんが案内すると申し出た。本物のメイドさんって初めて見たよ。長い通路を通り(広すぎてどのような道を通ったかも覚えられなかった)ある部屋の前まで来た。メイドがドアをノックする。
「失礼します。お客様をお連れしました。」
少しドアを開けメイドが中にいる人と話をする。
「入ってもらいなさい」
「かしこまりました。どうぞこちらへ。」
ドアを開け中へと案内される。
城と言うだけあって廊下もそうだが部屋の中もかなり豪華な装飾がされている。別世界です。
「ようこそいらっしゃいました」
部屋の中にいたのは予想通り聖女様ことエリオーネだった。
「2日ぶりでしょうか・・・お変わりありませんか?」
「はい。何事もなく初めて見る街を楽しませていただいております。この度はお招きに預かり光栄でございます。」
「わたくしを正座させた方がその様な堅苦しい挨拶をされなくても・・・」
周りにいたメイドを含めた使用人がぎょっとドワコを見る。
「その話をされますと色々・・・」
「早速ですが、来てもらったのに申し訳ありませんが、城内でその様なお召し物ですと色々差支えが出ますので別室にてお着替えを用意させていますので、そちらの方へお召し替えをお願いします。
「はあ・・・」
突然の呼び出しだったので当然の事ながら新しい服を用意することも無くそのままの服装で城に来ている。納得する。
「どうぞこちらへ」
数人のメイドに連れられて別室へ移動する。慣れた手つきでメイドたちは着替えを終わらせた。サイズもぴったりだ。着替えが終わりエリオーネの待つ部屋へ戻る。
「えっと・・・この服は・・・」
「よくお似合いですよ。夜中テントに忍び込んでサイズを測ったので大丈夫だと思うのですが、キツイ所とかありませんか?」
この人さらっと何か言ったよ。いつの間にか服のサイズを調べられていた。
「気持ち悪いくらいピッタリですよ」
ちょっと嫌味を込めて返事をする。
「それでこの服は?」
「聖女見習の服ですけど?いろいろと問題が起こるといけないので、顔を隠せるように大きめのフードを付けました。私の自信作です。エッヘン。」
エリオーネが着ている青と白の服と似たようなデザインだがドワコの来ている服の方が白が多めだ。白地の服に青い線の入ったような感じだ。
「まだ聖女になると決めた訳じゃないんですけど?」
「城にいる理由を作るための形式上の見習いと言う形だから。聖女を引き受けるのが無理だと思えば強制しないから(たぶん)。聖女がどのような仕事をしているかだけでも見てほしいかな。それとね、これを着ていれば貴族と同等な扱いを受けるから便利だよ?」
「じゃあ城にいる間だけは着ておきます」
なし崩し的に聖女見習になってしまった。
「アリーナ村を調べて分かったんだけど村に工房を作って村の人にすごく感謝されてるってね。これは国のためになっているからこれからも頑張ってね。」
「聖女になると工房閉めないといけないんじゃないですか?」
「聖女なんてお飾りだから戦時とかで無ければ結構暇よ?城でボーっとして過ごすのも良いけど、国の発展のためにも工房は続けてほしいなって思うよ。」
「あとシアちゃんが城下町で新しいお店探してるって聞いたよ。そこで提案があるけど・・・。」
とエリオーネが切り出した。
「なんでしょう?」
「聖女見習となると何日かは城にいる必要が出てくるよね?その間、城で寝泊まりする必要が出る訳。城だと大変だと思うから城下町に家を用意して通ってもらうと言うのもできるけど、どちらがいい?」
「城下町から通います」
ドワコは即答した。城で寝泊まりするのは気が重くなる。せめて町から通えるならそうしたい。
「わかりました。あの書類をお願い。」
エリオーネが命じてメイドが1通の書類を持ってきた。
「どうぞ」
「ありがとう」
エリオーネが書類を受け取る。
「ここに建物の権利書があるよ。元々とある商家の持ち物だったんだけど不正取引をしていて国が財産を没収した訳ね。店舗スペースと居住スペースを兼ねた作りの建物だから店舗スペースにはシアちゃんの店にテナント入ってもらって居住スペースにはあなたが住むって言うのはどう?差し上げる物だからお金もいらないし、貴族待遇なら住居には税金がかからないから負担にならないと思うし、いい条件だと思うけどどうかな?」
「とりあえず物件を見てからかな」
「今回の件を引き受けてくれたお礼で差し上げる物だから、もし気に入らなかったら売ってしまっても構わないから、この権利書はお渡ししますね。」
ドワコに権利書を渡された。まあ受け取るしか無さそうなのでそのまま受け取った。
「あと、城に入る時の通行証ね。城に入る時はこれを見せると入れてもらえるよ。」
「それと今回の件はまだわたくし預かりの案件なので他言は無用ですよ。城への出入りはいつもの服装で構いませんけど、見習い業務中はこの服を着用して、他の人の目がある時は必ずフードをかぶってくださいね。」
「わかりました」
「それじゃ今日はこれで結構です。また後日、迎えの者を村の工房へ向かわせますね。お疲れ様でした。」
「はい。それでは失礼します。」
「それではこちらへ」
メイドに案内されて退室する。そして別室へ案内された。
「ここがドワコ様の控室になります。次回からはこちらの部屋でお着替えください。」
「わかりました」
メイドに着替えさせてもらい出口まで案内される。
「それではドワコ様。また後日よろしくお願いします。」
ドワコは城を後にした。
ここまでの所で魔法表記に統一性がない箇所がありましたので修正しました。




