17.物件探し
宿屋へのチェックインを済ませ、鍵を受け取って部屋に移動した。
部屋の広さは3人で使うのには問題ない広さがあったが、一つだけドワコが頭を悩ませる事があった。ベットが1つしかない。3人で使う広さとしては十分だが、元々は独り身のおっさんだったドワコは女性の耐性があまり無い。まだ幼いエリーはともかく、シアが危険すぎる。美人でスタイルが良いお姉さんなので一緒に寝るのかと思うと心拍数が上がってしまう。・・・一応同じ女性だから大丈夫だよね???
食事を終えて、それは来た。
「それじゃ寝る前に体拭いちゃいましょう」
シアが水の入った桶を持ってくる。体拭き用の布は部屋に備品として置いてある。水は貴重なのでお風呂やシャワーなどと言う設備は無い。平民階級では体を拭いて終わりである。馬車での移動中は個室を割り当てていたので問題なかった。ここに来て難関が訪れた。
「はーい」
エリーはささっと服を脱いでしまった。そしてシアも同じく服を脱ぐ。
「ドワコさん服脱がないの?」
免疫が無く固まってしまっているドワコに向かってエリーが聞いてくる。
「ドワコさん背中拭いてくれると嬉しいな」
シアも何の疑いも持たずに言ってくる。
ここは変に怪しまれないようにするのが得策だ。とドワコは考えた。
落ち着かないドワコであったが、しっかりと見えるものは見せていただいた。
「何とか乗り切った」
シアとエリーの2人掛かりで体を拭かれドワコはピカピカになっていた。
「それじゃそろそろ寝ましょうか」
「はーい」
「おっ、おやすみなさい。」
3人は同じベットの上で川の字になって寝ることにした。ドワコは真ん中になっている。しばらくすると両側から寝息が聞こえてくる。2人とも眠ったようだ。ドワコは両側に女性がいる状態では気になってなかなか寝ることが出来なかったが、いつの間にか眠りについていた。
朝になりドワコは目を覚ました。しかし思うように体が動かせない。
昨日も同じことがあったような・・・。徐々に周りの状況が見えてきた。
両側からドワコに抱きついている状態だ。シアさん当たってます。柔らかい感触が伝わってきます。エリーの顔がドワコの腕の上に乗っている・・・何か冷たい。お口からよだれがたらたら出てドワコの腕を濡らしていた。
「むにゃむにゃ。もう食べられない。」
ベタな寝言を言うエリー。ちょっと可愛いかも。抱き付く2人から何とか抜け出すことに成功し、ベットから這い出た。そして外の景色を見る。
「今日も良い天気になりそうだ」
3人で朝食を済ませ、今回この街に来た目的である「武器と防具の店」の店舗となる物件を探しに行くこととなった。この国には町が一つしかないため「城下町」と呼称しているが正確には「マルティ城下町」と言う。隣接している王のいる居城が「マルティ城」だ。国名は「マルティ王国」と言うそうだ。
貸店舗を扱っている店を何軒かまわってみたが、賃貸料が城下町と言うだけあって高い。メイン通りから外れると若干安くなるが治安や人通りなどを考えると極力避けたいようだ。金額もだが、間取りなども希望通りの物をとなるとさらに条件が厳しくなる。
「お店を借りれば簡単に出店できる物かと思ったけど・・・現実は厳しいわね」
シアが少し凹んでいる。小規模な村から城下町へと出店するのは大変なようだ。
「もう少し探してみましょう。広い街なのでどこかに希望にある物件があるかもしれないですよ?」
エリーがシアを励ます。この世界に来てから間もない上に土地勘が無いので、この件に関してはドワコは戦力外だ。時間だけ過ぎてしまい今日の物件探しは終了となった。
宿に戻り、宿屋のおじさんから話しかけられる。
「ドワコさんだっけ?少し前にお城から使いの人が来て手紙を渡してくれと頼まれたよ。これな。」
「ありがとうございます」
宿屋のおじさん封筒を受け取る。この世界では初めて見る立派な封筒に手紙が入っていた。
その場で中身を確認する。呼び出し状のようだ。
[明日、午前中に城へ来ること。]
と手紙には書かれている。差出人は書かれていないが、城に来るように言いそうな人物に心当たりがある。貴族が平民に対して呼び出すと言う事は、国内にいるものに対してはそれなりの強制力があるようで断ることが出来ないらしい。
「貴族からの呼び出し状ですか。ドワコさん何やったんですか?」
「なんなんでしょうね」
「この呼び出し状は強制力があるので行かないと大変なことになるよ。明日の物件探しは中止かな?」
「呼び出されてるのは私だけなので、シアさんとエリーで行っていいですよ?」
「滞在日数が限られているから仕方ないね。エリー明日はお願いね。」
「はい。任されました。」
それから後は、食事をして、体拭きをして就寝する。もちろん昨日と同じように川の字になって寝る。
「なんかやわらかくてきもちいい・・・」
翌朝、両手に何か柔らかいものを掴んで心地いい気分になっていたら目が覚めてきた。
この柔らかい感触って・・・シアの胸を両手でつかんでいた。
「はうぁ」
ドワコは両手でつかんでいた物を放して飛び起きた。
「すごく幸せそうな顔してたね。ドワコさんって甘えん坊さんなのかな?」
少し前に起きていたシアがトドメをさしに来た。ドワコは恥ずかしくて真っ赤になっていた。
「おはよ」
ちょっと騒ぎすぎたようでエリーも目を覚ました。
3人で食事を済ませ出かける用意をする。
今日は別行動だ。ドワコはこれから行く場所の事を考え気持ちを引きしめた。




