夢の続きを託され
一つの物語の序章が終わる
アナトリアから南方にあるその島は観光産業で栄えていた。約三十キロ㎡ある本島に幾つかの小島が寄り添う様に点在していた。
地下都市発見の功績をねだった博士は最高責任者から特別休暇を勝ち取った。配下の全陸戦重兵器班員を連れて避暑地アナトリウスに来ている。無論エグザムも含まれる。彼は歓楽街や浜辺で戯れる同僚達と別れ、島の中央にある遺跡を探索していた。
島にやって来たエグザムは中央の遺跡に目をやると、WDから情報がもたらされた。
(アナトリアの統合指令区画と形状が似ています。)
遠方からでも島の丘陵にある大きな遺跡は目立っていた。片時も武装状態を解かない彼はその足で遺跡へ向かう。舗装されていない道が続いていたが、遺跡見物用の高台に出る。遺跡の全景を眺めつつWDに調べさせた。
(地下の構造物を確認しました。形状からして九十%一致しています。)
内部まで確認できなかったが証拠十分と判断し、そのまま遺跡へ近づく。
(周囲に人間は居ません。状態から過去にある程度の調査がされているようです。)
侵入制限も監視装置も無い事から只の観光名所になっている事を確認したエグザムは、侵入経路を模索した。
間を置き、上方へ登れる経路を探す。歩き回っているとWDが発見した。
(垂直懸垂する必要が有りますが、利用可能な植物から登れます。他の場所も探査しますか?)
このルートから登る事を伝える。視界に有用支点と足場が表示されえた。
葦科の太く長い茎を伝い、上層部へ続く足場へ降りる。見上げると植物に覆われた構造物が現れる。
「道は長い、経過時間を記録してくれ。」
WDに記録要項を追加させ素早く登る。見下ろす光景は雄大だった。
地上からおよそ三百メートル地点で無傷の入り口を発見した。道中遭遇した生物は虫と鳥類だけだった。
固定具を物理解除し、通路を進む。彼は三日前の地下探索の続きをする事になった。
(計画情報を参照。計画から本施設が移民船の統治機能を担う予定でした。私と同様の人工知能を搭載した統治機構が搭載されていたようです。推定される規模を予測します。)
素粒子探査で付近の構造を監視しながら現在位置を割り出す。エグザムは本丸を定め地下へ降りて行く。
(本施設は惑星降下を想定した拠点でした。)
幾つかの断片的な情報を教えるWD。それはエグザムに十分な恩恵を与える。
「そうか、ならこの構造も理解出来るな。管理機構まで案内しろ。」
短く肯定したWDは、構造情報から目的地を割り出した。
数時間扉や邪魔な障害と格闘したエグザムは、全体が青白く照らされた広場に出た。ようやく目的の場所へ辿り着き、休息の為腰を下ろす。空間の中心に大きな光球が浮いていた。
(了解。接触を試みます。)
数分間休んだ後、WDへ指示を出す。以前見た物より大きい球は透き通った材質で出来ていた。また右手をかざし近づくエグザム、今度は此方から呼び掛けた。
(アナトリウムへようこそ。私は次元観測型意思統括機関です。本施設と同様の名称で呼ばれています。)
自らをアナトリウムと呼称したそれに、エグザムは詳細な情報を聞き出した。
(役目を終え朽ち果てるのを待つばかりの人工知能か、面白い利用してやろう。)
エグザムはWDの時と同様に同一化を提案した。
(物理的に可能なようです。ただ貴方のWDと統合するので、一度相互干渉関係を中立にして下さい。)
指示された内容を実行すると、体が介入を受け自動で動く。真下から両手をかざし、アナトリウムを見上げた。擬似人格の統合が開始され、また意識が途絶えた。
浜辺で水平線に沈み行く太陽を眺める。宇宙の奇跡は幾度と無くエグザムを癒す。隣の博士も同様だ。
結論から言えば、WDとアナトリウムの統合は成功した。結果エグザムの擬似人格は人工知類へ進化する。多くの情報と能力を手にした彼は、超科学技術を用いて隣の博士と交信していた。
「裏で何やら暗躍していた様だな。前から怪しかったが、一人でここまでの発見をするとは。」
WDが博士の脳内に語りかける。無線で送った情報に博士は目を丸くしていた。
「なかなかに刺激的な日々だった。送った情報どおりもう一人では対処しきれない。」
からかうエグザム。博士は感想を言う。
「神話と成った文明からの宿題か。長生きした甲斐があったわ。」
笑う博士。三人とも向かう未来に思いを馳せた。
も、もうだめだ。あアタマガアァァァァ!
作者が墜ちました。 つづく?
活動報告にも書きましたが、暫らくお休みします。申し訳程度にこれまでのあらすじを書きました。