3:ロケハン
《ロケハン》
トランプがひっくり返り『スペードの1』が見えてくる。
「バン!!!」
一斉にカードをたたき始める。
「淳。弱すぎ。」
また。自分の手が一番上にあった。いい加減なさけなくなってくる。
「カード集めるゲームじゃないんだよ?」
向井は毎回余計なことをいう。だから友達ができないんだよ。っと思いながらテーブルの上を見渡してみる。こういうアナログなゲームは部長が強い。そのあとを追いかけるのが夏本だ。毎回疑問に思うのだが。なんで。何をやるにもグラビア誌片手にやっているのだろう?そんなにいつも見てて飽きないのだろうか?とか思いながら眺めていたら目が合った。
「見る?」
「いやいい。」
即答だ。目が合っただけグラビア誌を勧めてくるな。
「もう飽きた〜。」
「じゃあ今度は『一五三』でやってみる?」
みな順平の意見をスルーする。別にいじめられてるわけではないから安心してほしい。ただ。こういうポジションなのだ。
「たまには。部活しない?これじゃあ。天才の僕が勝ちつ…。」
「そうだな。たまには部活しないとな。」
「部長が言わないで下さいよ。」
「俺。鬼ごっこしたい。」
「部活じゃないじゃん。」
放送部員の雑談が始まった。これが始まるとなかなか終わらない。まあ。このときは以上に早く終息した。
「ロケハンでもするか。」
このときなんかいつもと違うと気づくべきだったのかもしれない。もちろんこのころの自分たちにこの先に起こる部員同士のバトルロイヤルを知るはずもなかった。
部員は体育館に移動しあいてる部屋を片っ端から調べて歩いた。そして。小体育館を出た時。副部長が何かを見つけた。これが最後のわかれ道だった。
「悠くん。ここあいてるよ!」
部員が副部長の所に集まる。
「こんなところに扉あったっけ?」
「すごいでしょ。凡人には見えないかもしれないけど。天才にはみ…。」
「地下室に通じているんですよ。ボイラー室とかあるんです。」
「よく知ってんな。」
「一応下りたことあるんで。行ってみますか?なかなか面白いですよ。」
「暇だし。行くか。」
「え〜。やめておこうよ。危ないよ。」
「じゃあ。向井くんは上にいなよ。」
部長が階段を下りていく。残りの部員も後に続く。
「えっ。みんな言っちゃうの?」
階段を降りるにつれて。空気がひんやりとしてくる。
「隆。ついてきてませんよ。」
「すっげーなー。こんな所があったのかよ。」
「あっちにボイラー室がありますよ。」
みんな冒険気分ではしゃぎまくる。数分後。
「あれ。潤平何やってんの?」
「みて。冷蔵庫がある。」
順平の前には確かに旧式の冷蔵庫があった。周りには食糧庫みたいに2段に分けられた棚が広がっている。
「中になにか入ってんの?」
部長が冷蔵庫をあける。
薄暗い空間にぼやっと冷蔵庫内の光がもれる。
「すげー。コーラとかあるじゃん。飲んでいいのかな?」
その時。誰もいないはずの背後から声がした。
「きっと事務の人とかのものだから駄目だよ。」
「うわぁ!」
みんなが大声をあげて驚く。
「なんで。みんな驚くんだよ!!!」
聞き慣れた声が聞こえ。みんなが後ろを見る。
「なんだ。隆かよ。びっくりさせんなよ。」
「びっくりした〜。」
「まぁ。天才の僕は驚かな…。」
「あれ。上で待ってたんじゃなかったの?」
「違いますよ。部長たちがおいてったんじゃないですか。」
「ビビってついてこなかっただけだろ。あぁ〜。驚いてのど渇いた。」
潤平がかるく赤い水を冷蔵庫から取り出して開ける。
「潤平それ飲むの?」
「え?飲んじゃダメなの?」
口元まで持っていったペットボトルを止める。
「いや。飲んでもいいけど。なんで。そんな危なそうな色のもの飲むの?」
「そうだよ。だいたい飲むこと事態いけないと思うよ。」
「大丈夫でしょ。」
潤平は謎の液体を一気飲みする。
「なんだ。普通の水じゃん。」
「全部飲んだのかよ。」
「ちゃんと戻しとけよ。」
空いたペットボトルを冷蔵庫にもどす。その後2、3分この部屋を調べた。
「何もないし帰るか。」
「なんかもっと面白い所かと思っていたのにな。」
「ボイラー室閉まってるしね。」
「部室に戻るぞ。」
部長が階段をあがる。そのあとを部員がついていく。
「陽南。何持ってんの?」
「えっ?あ。これ?さっき拾った。」
その手には。グラビア誌が握られていた。
「なに?見る?」
「いやいい。」
この日の2日後。放送部員は悪魔の液体の力を少しずつ実感することになる。