2:最近の高校生
《最近の高校生》
教室にこの季節には似合わない乾いた風が流れる。
「あー。えーと。どうしよう。」
『何を言おうと思っているかはわかってんだから。ささっと言ってくれよ。いや。でもこういうのもいいか。
女の子らしくて…。おっ。話し始めた。』
「あのね。講堂ですれ違った時から。」
『あぁ。あのときね。』
「ずっとずっと斉藤くんのことが好きで。」
『まさかの一目惚れかよ。さぼらなくてよかった〜。』
「だから。あの…。」
『ついにくるのか?俺にも青春が!!!』
「っつ。っつ。」
『来た〜〜〜〜。』
「ドン!!!」
「痛って〜。あれ?」
前には。明らかに女の子ではない体格の人が立っている。
「あれ?優ちゃんは?」
「悠くんならここにいるぞ?優ちゃんってお前らそういうか…。」
確かにそこには。かよわい『優ちゃん』ではなく。ガチムチの『悠くん』こと部長が立っている。
「淳。また寝てたのかよ。」
「ほら部室いくぞ。いつまで座ってんだよ。」
自分はまだ状況を理解できずにいた。『さっきまで前にはかわいい優ちゃんがいたはずで。しかも物理教室にいたはず…。あれ?そういえば次は体育だから早く移動しなきゃ。今の時間は…。』
「NOOOOOOOOooooooo!!!何でもう4時半なんだ?」
体育の担任三ツ矢にとの『平成単位取合戦』の様子が頭の中に浮かんだ。もちろん。『本能寺の変』なみの窮地に立たされている自分の姿だが…。
「っは?何いってんの?寝てたからだろ。早く部活始めるぞ。」
自分は状況を理解した。そして立ち上がる。
「ってことは。さっきのは夢?」
「っは?ぶつぶつ言ってんじゃねーよ。」
自分は絶望に浸っていた。最初からうすうす夢なんだろなと予防線を張っていたが。
「おい?」
やっぱり実感すると辛い。
「はぁ〜。」
深いため息の後。自分は廊下に出て部室のほうへ走りながら叫ぶ。
「青春っていいな〜。ちくしょ〜!!!」
向井が背伸びをしながら夏本に話しかける。
「部室あけてあんの?」
夏本がポケットから鍵を取り出して見せる。
「淳って。本当にバカだよな。」