1:プロローグ
今までこのことを教えられなかったのは。水の季節だったから。そう。梅雨にこの学校で起きたこと。
あなたはさっきまでの記憶を信じられますか?
私は信じられません。あの年の梅雨から。この文章を書いているこの時間が信じられません。
もう。何も信じられない。信じられるのは。水にあったってはいけないということ。
《プロローグ》。
打撲音が聞こえる。
『どん。どん。こつ。』
どうやら貫通したらしい。
コンクリートの上を走る赤い液体をみて。男はこうつぶやく。
『おい。どうした?まだ水が抜けてないのか?あぁ?』
男はすでに原形をとどめていない頭に話しかける。そして。死んでいることに気づくと。
ボイラー室から出ようと歩き始めた。
『パン。』
近くにあった箒の倒れる音を聞いて男は意識が戻る。そして。赤く染まった人型の何かが目に入った瞬間。
『なっ。なんでまた俺の前に死体が出てくるんだよ。勘弁してくれよ。』
ふと。頭に警察に連行される友人の声が蘇る。
『俺は知らない。記憶に無いんだ。信じてくれよ。俺はやってない。』
男はひざまずきながら空間に問いかける。
『俺がやったのか?そんなはずはない。俺は一緒に作業していたんだ。そんなはずは…。』
突然崩れ落ちるように倒れた。静かに時間と赤い液体が流れる。男は手の先にある黄色のはさみを手に取り。
おもむろに立ち上がった。
『もう。何も信じられない…。』
視線を持っているはさみにおとす。先端が不気味に光る。
『あぁぁ〜。』
次の瞬間には。はさみは男の肉体と一体化し。色は。深紅に変わっていた。