デブ系女の驚き
あらすじは読みましたか?では、お読みください。
突然だが、私はデブである。
私の名前はナツオ。現在、大学卒業前の22歳。身長160、体重69、ウエスト80オーバーのデブだ。少なくとも私はそう思っている。
小さい頃から太っていた私は、良くいじめやからかいの対象にされていた。よくある話である。しかしあまり気にしたことはない。
小学生の頃、クラスのガキ大将たちから「おい、デブ!」「返事しろよ、デーブ!」なんて言われても、私が「デブだからなに?何が言いたいの?とっとと要件言えよ、のろまが。」と一度聞き返すと何も言われなくなった。むしろ泣かれたが、本来ならば泣くべきなのは私じゃないか?解せぬ。
中学生の頃、イケイケの女子たちからしょっちゅう「ナツオさんの体格、まじないわー!女子としてないわー!」「子豚じゃなくて大豚じゃね!痩せた方がいいよ!?」的なことを言われた。あまりに何度も言うので、しつこいと思い「そうだね。心配してくれてありがとう。でも何度も言わなくていいよ。私、あなたたちより頭いいから、一回言えばわかるよ。取り敢えずあなたたちは、一週間後のテストに向けて自分の勉強した方がいいよ。また赤点だとやばいでしょ?」と言ったら顔を赤くして立ち去った。
翌日、靴箱から上履きが消えていた。体操服が汚水にまみれていた。教室に置いていた各教科の資料集がズタズタに切り裂かれていた。行動が早いなと感心した。私は朝のホームルームが始まったと同時に、クラスのみんなの目の前で担任の教師にこのことを伝えた。このまま器物損壊で警察に訴えるので早退しますと伝えたら、教師は慌てて緊急職員会議を開いて、犯人のイケイケ女子たちに厳重注意をした。イケイケ女子たちはその後、部活の先輩につるし上げを喰らったらしい。
どうやら、教師は私の祖父(元、教育委員会のお偉いさん)を敵に回したくなかったらしい。イケイケ女子はいじめる相手を間違えたのだ。その後の私の影のあだ名は『アンタッチャブル』であった。いじめられたのは私なのだが。解せぬ。
高校、大学はそこそこのところに進学したため、デブだということでからかわれなくなった。本当に頭のいい奴は、くだらないことで自分の経歴に傷をつけることはしないのだ。
さて、前置きが長くなったが、私は自分がデブであるということでほとんど困ったことはない。ダイエットをするよりもおいしいものを食べたいと思っているし、恋愛はリア充に任せればいいと思っている。
ただ、一つだけ例外的に困ったことがある。服だ。
制服をはじめとした、学校で使うものは大きめのサイズがある。しかし、私服はそうはいかない。私は基本的にLLの服か17号の服ではないと入らない。メンズものを着ることも多いが、パーカーやトレーナーならともかく、ボタンがあるワイシャツ等は合わせの関係で着られない。別におしゃれをしたいわけではないが、田舎だと着る服もままならない。え、ならば痩せろと?無理だ。
まあ、それでも大きい服の専門コーナーで見つけた服、時折ミセス向けの服もあったが、そういったものを買い、ごまかし、大学には通いきった。スーツも無駄に高いブランド物ならばサイズがあり、それを買えた。
ところが、ここにきて服の壁にぶち当たった。謝恩会用のパーティードレスである。
ドレスコードをするようにと言われたのはいいが、店にあるのは大きくても15号まで(しかもデザインが微妙)で、当然着られない。小物は何とかなりそうだが、ドレスと靴(25センチ)はどうにもならない。
困った、どうしよう、そう考えていた私の中に一つの名案が浮かんだ。
ネット通販があるじゃないか!
近頃は大きい服も取り扱う。これだと思い立ち、パソコンを立ち上げて『大きいサイズ・パーティードレス』で検索する。
しかし、ここで誤算があった。
なんと大きいサイズがありますと銘打っておきながら、13号サイズのドレスまでしかないサイトが多いのだ。なんだこれは、なめているのだろうか?
しかし、そういう感じでもない。どういうことかと思いつつ、私はおもむろに「デブ・基準」で検索をかけた。
そこで私は驚愕の事実を知ったのだ。
『女子の服のサイズ、LLはデブ。11号はやばく、13号からはデブ。ウエストは70超えたらダイエット待ったなし。』
ざっくりまとめるとこんな結果が出たのだ。勿論、こういう人間ばかりではないとは私も思う。しかしLLはデブはまあ分かるが、13号からデブだなんて言う人間がこの世の中に結構な数がいるのかと思うと戦慄すら覚える。成る程、世の中の女性がダイエットと騒ぎ立てる理由が良く分かった。これは怖い。
世の中の世知辛さを知った日であった。
あ、ちなみにドレスと靴は、大型アパレルショップを梯子しまくって何とか手に入れたことを追記しておく。
ありがとうございました。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。