小話5
「…何をしているのですか?」
キーウスは冷めた目でそういった。
「何って、下界の様子を見ているのよ」
創造神は振り返ることなくそう言った。事実、その目の先には世界の様子を写したであろうモニターが展開されていた。
「いまさら何を見ているんですか?こちらの区域には、そんなに観測するだけの世界はなかったと思うのですが?」
「なかったわよ、だから手を加えたの」
そう言われてキーウスは思案し、ああ、と結論に至った。
「この間転生させた人物がいましたね」
「そう。これは彼が言った世界の映像よ」
二人が見ていたのは、興昌が転生させられた《ガイディア・ローゼ》の世界そのものだった。
「戦、ですか」
「ええ。彼もこの戦いに絡んでいるわよ」
「どういう具合に?」
「片方のナンバー2として」
その言葉に、キーウスは思いっきりずっこけた。
「…今、なんと?」
「だから、この戦で戦う国の一方に、その国のナンバー2として参加しているといったのよ。確か…、公国の、宰相、だったかしら?そんな感じの役職だったはずよ?」
「…いくらなんでも早すぎませんか?転生者だとしても、その世界にコネも何もない人間がいきなりなんて…」
「公国のトップのお姫様を助けたみたいよ。そこからあれよあれよと。最近のホットラインは仕事が苦しいとかって、愚痴ばっかりよ」
ああ、とキーウスは天を仰いだ。確かにこれは願ってもいなかった事だ。転生者が動けば動くほど世界は動いていく。これまでにも、国の中枢に入った転生者がいなかったわけではない。
だが、それはあくまで一人の冒険者などから始まっていった結果だ。勇者とかになって、救った姫と結婚、とかだ。
だが、この世界の彼は違う。スタートがそこなのだ。今さっき調べてみたが、彼はこの世界で特別な下積みを積んだわけでもない。確かに色々とやっていたようだが、全体の影響としてみればそれは小さなことだ。
分岐点というのは、分岐が大きければ大きいほど、早ければ早いほど、最終的な差異は大きくなる。こんな早期に、こんな大きな分岐を起こしたのは、これまでの転生者にはいなかっただろう。そして、これからもいないであろう。むしろ、いてたまるか。
「…頭が痛くなったので帰らせていただきます…」
「何よ~これからが面白くなるのに~」
「これ以上いると、頭だけでなく体全体が痛くなりそうなので」
そう言ってそそくさとキーウスは消え去った。
「ノリが悪いわねえ~」
その痛みの原因であるこいつは、結局キーウスの方を振り返らなかった。




