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異世界にて天下を目指す  作者: 清水作朗
3章 人生50年
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3話 ロンパ

「はいはい、ちゅ~も~く!」


パンパンと手を叩きながら声を出す興昌。議論をしていた3人も怪訝な顔をして興昌の方を向く。


「なんだ?こっちは今…」

「それに関するお話です」


ガルラビューの言葉を遮って興昌は話す。


「スティーブン君。公国の財政状況はどんな感じ?」

「え!?」


急に指名されたスティーブンは戸惑ったが、落ち着いて述べ始める。


「…いいとは言えません。国防に懸ける予算が馬鹿になりませんので。税収も下がりつつあり、黒字と赤字を繰り返しています。最近は赤字続きです」

「よろしい。ではなぜ収入が落ちてきたかをどうぞ!」

「…。軍の規模を拡大するということは、それだけ生産に関わる人口が減ることになります。その一方で消費する人口は増えます。落ちるのは当然です」

「お見事。内政は生産拡大を最重点におく。後で具体的な方針をまとめたものを渡すから、その通りにやれば、確実に向上する。下がっていいよ」


ほっと肩を下すスティーブン。興昌はアンジェラに向き直り、


「では次に、アンジェラさん。バーリナは何を狙っている?」

「当然領土でしょう。欲しがらない国なんてありませんから」


その答えを聞いて、興昌はやれやれといった様に首を振る。


「甘い。実に甘い。はちみつと砂糖をつっこみまくって固形と化した紅茶より甘い」

「…では、何を狙っていると?」


不快そうなアンジェラに対し、興昌はいかにも楽しいですよ的な感じで答える。


「この国には、バーリナが喉から手が出るほど欲しいものがあるんだよ」

「それは一体…?」

「それはね、塩湖だよ」

「…塩、湖?」


聞きなれない単語に困惑する一同。


「興昌さん、それはどんなものですか?」


勢いよく食いついてきたのは、やはりと言うかアリスだった。


「塩湖、っていうのはな、その通り塩の湖だ。海以上に塩分濃度が高くて、溶けきらない塩がそこらじゅうに沈殿してるんだ。もっとも、水はほとんどなくて平原みたいな感じになってるけどな」


地球にあったウユニ塩湖も、正式名称は塩原だけど、通称として塩湖が使われてるからなと興昌は心の中で付け加える。


「前に書物でその存在を知って、いつか利用してやろうと思ったんだが、ライバルがいたようだな…」

「なんでそんなものを…」


不思議そうに呟いたスティーブンに、興昌がすごい剣幕で詰め寄る。


「お前何言ってんの!」

「!?」

「いいか。塩はかなり貴重な資源だ。これがなきゃ人は生きていけないんだ。ほかにも用途はいっぱいある。保存食の作成とかな。だがその一方、製塩には恐ろしいほどの時間がかかる。天日で乾燥させてゆっくりと濃度を上げていかないと質のいい塩にはならないんだ。でも塩湖があれば、その手間が消え去り、ただ掘ってきたものを干せばあっという間に塩の出来上がりだ」

「…」


興昌のマシンガントークは終わらない。


「これがどんなことか理解できてないだろ?こいつはな、今までの塩とは比べ物にならないほどの低価格で市場に安定供給できるんだよ。調べたらな、これまで開発されてなかったおかげでほぼ手つかずだ。こいつを開発すれば、かなりどころじゃない金になるんだよ」

「…あ!」

「ようやく理解したな。バーリナは海洋国家だ。船による国外との貿易が盛んだ。保存食を生産するにあたって、塩は必要不可欠だ。だから塩の確保に躍起になってるんだが、渡りに船って感じにこいつをかぎつけた。その時にはここは内戦に突入してたからな、漁夫の利を狙って盗りに来たんだよ!」

「は、はあ…」

「アンジェラさんは、交渉しまくって徹底した引き延ばし工作をお願いしたい。塩湖については触れないようにしといてね、気づかれてないと思わせたいから」

「分かりました」


言いたいことが言い終わり、一息つく興昌。そして次のターゲットに狙いを定める。


「それじゃ、ガルラビューさん。この公国の軍事力はどれくらいでしょう?」

「今動かせるのが千、追加で招集出来るのが五百ってとこだな」

「その内訳は?」

「千の方は歩兵七百、弓兵二百、騎兵百。五百は歩兵三百五十、弓兵百、騎兵五十だ」

「相手は?」

「一万といったところだろう。残念ながら構成までは分からん」

「絶望的だなあ」

「だから数を増やして…」

「無駄だね」


感情をこめずに興昌はそう言い放つ。


「掻き集めたところで、人口的にあと五百が限界だ。練度も士気も低い。一万相手じゃ居なくても変わらない。だから今いる千五百でうまく戦える工夫をした方がいい」

「具体的にはどうすると?」

「攻めてくる経路に罠を仕掛ける、簡単でいいから砦を作る、攻め込むときは奇襲に絞る…。他にもいろいろあるだろう。数が少ないからって必ず負けるわけではない」


改めて全員を見渡し興昌は言う。


「とまあ、ここまで俺の考えを言い続けてきたわけだが、質問や反論はあるかな?」

「「「…」」」

「おられないのであれば、これで会議を終わらせたいと思います。興昌さん、私の台詞とらないで下さいよ」

「すまんな。じゃあスティーブン、指針をまとめるからちょっと来て」

「あ、はい!」


興昌はスティーブを連れて会議室から出ていく。しばらくしてから、


「お嬢はまたとんでもない人を連れてきちまったな」

「頭が切れすぎてて恐ろしいですわね」

「そうでしょう」


エッヘンと胸を張るアリス。


「「別に褒めてないから」」


ハモったつっこみですぐにしゅんとなってしまったが。

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