小話4
「一つ質問があるのですが、いいですか?」
「いいけど、いつもみたいじゃないわね~」
神の空間。4大天使のキーウスが、作業に追われている、興昌を送り込んだオカマ神に話しかけていた。
「この地区を担当する神として話を聞きに来てますから」
「こっちで何か用でも?」
このオカマこそ、すべての世界を創った創造神なのだが、なぜかオカマとして下働きをやっている。しかもかなり忙しい。
「ええ。あなた、嘘をつきましたね?」
「何のことかしら?」
「久野金興昌さんを選んだのを、たまたまだと言いましたね」
「だから何?」
「明確な目的をもって選んだことを隠しましたね、何故?」
「…」
場を沈黙が支配する。
「答えてください」
「…そうねえ。言ってしまえば、パソコンかしら?」
「というと?」
一つ一つ言葉を選びながら話し始める。
「人間に、いえ、生命にとって、知識はスペック。経験はメモリ。スペックが高いほど、そしてメモリの容量が多いほどパソコンは早く動く。エネルギーの移送の触媒として使うなら、高性能じゃないとうまくいかないのよ」
「そんなに彼はすごいのですか?」
「実際に見た方が早いわ~」
そう言って、光の画面をひとつ開く。そこには、興昌についての生前の情報が書き綴られていた。
久野金 興昌 男
戦国時代の兵法家を祖先に持つ、学者一族の次男として生まれる。(以下甲と記す)
父は政治学者、母は医学博士、祖父は経済学者、叔父は物理学者。
その他、親族に多数の学者や教師が存在する。
家伝として、研鑽を続けてきた軍事学があり、甲は最もこれに長ける。
甲は15歳で大学を卒業し、その後は一族内で英才教育を施される。
また、甲は18歳から護身術の鍛錬を開始し、21歳で免許皆伝を得る。
学習のし過ぎによる栄養失調が原因の多臓器不全で死亡。享年22歳。
「…事実ですか?」
「脚色なんてしてないわよ」
キーウスの額を一筋の汗が滑り落ちる。
「彼はスペックはものすごく高いわ。でも何もしてないに等しいからメモリはがら空きなの。これ以上の触媒はなかなかいないわ~」
「そう言えばいいのでは…?」
「彼は無関係よ。こっちの事情に関わらせる訳にはいかないわ」
「そういう物ですか…」
「そういうものよ。用が済んだなら帰ってくれる?忙しいから」
「ええ。それでは」
そう言うと、一瞬でキーウスの姿は虚空に消えた。




