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異世界にて天下を目指す  作者: 清水作朗
3章 人生50年
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1話 襲撃者?

クラッフェ王国は、大陸の南東部に位置する内陸国である。この国には、王族の一部が統治している公国を国内にいくつかと、国外に一つ抱えている。国の東部のテイニッシュ公国も、その一つであった。

その公都、ユニレスは国の東部では最大の都市であり、国内でも指折りの大都市である。


「話には聞いていたが、やっぱり大きいな」

「でしょう?」


興昌が思わずといった感じに感想を漏らすと、アリスが嬉しそうな声を上げる。後でアルフレッドに聞くと、アリスが領主となってから手塩にかけて大きく発展させてきたため、この町はアリスの自慢の種なんだそうだ。

褒められて嬉しがるのも仕方ないらしい。むしろもっと褒めろと。


「もう日が落ちるな」

「ああ、少し急ぐか」


予定より少し遅れてしまい、街の外に着いた時には日が落ちてしまっていた。見張りの兵士に話を通して、門を開けてもらい、領主であるアリスの館へと向かう。アリスの館は3階建てで、街を一望できる小高い丘の上にある。

館に着くと、道中護衛してもらった兵士たちと別れる。館に入ると、詳しい話は明日ということになり、部屋をあてがわれたため、案内してもらう。案内された部屋は8畳ほどの広さで、ベッド、机、椅子と一通りの物がそろっており、ランプが部屋を照らしていた。


「何かあればおよび下さい。それでは、おやすみなさい」

「ありがとう、おやすみ」


アルフレッドが、持ってきた水差しとコップをベッド脇の机の上に置き、部屋を出ていく。扉を閉め、鍵をかけてから軽く伸びをする。


「明日から頑張らないとな」


一人になった興昌は、そう気合を入れなおすと、ベッドに倒れこみ、そのまま眠りについた。






興昌が起きたのは偶然としか言いようがなかった。小さな物音で目が覚めた時は、ネズミか何かだと思い、再び眠りにつこうとした。体内時計は夜中の3時頃をさしている。だが、人の気配を感じたことで、興昌の意識レベルは一気に覚醒状態となった。


(…誰だ?ここで何をしている?)


興昌は、最初はここで働くメイドか誰かだと思ったが、こんな夜更けに仕事をする理由がないため、その可能性を消去した。何より、扉には鍵をかけてあり、明日は鍵を持っているアルフレッドが起こしに来る手はずになっていた。

その人物は、窓から侵入し、ベッドの脇に立ったまま、こちらを見下ろしていた。

何もしないならそろそろ帰ってくれないかなと、興昌が思い始めたころ、その人物はいきなり右手に持っていた棒を振りかぶると、興昌の頭部目掛けて振り下ろした。


(…殺気!)


とっさに転がることにより、間一髪で攻撃を回避した興昌は、机の上に置いてあった水差しを掴むと、第二撃を繰り出そうとしている相手目掛けて中身をぶちまけた。


「!」


思い切り水をかけられた相手は、ダメージこそないが、小さくない隙ができる。その隙に興昌は相手の右手側に回り込む。右と左のそれぞれの手で、腕と棒を掴み、後ろ手に捻って固める。相手も振り払おうとするが、興昌は相手の力も利用して投げとばす。そのはずみに、相手の手から棒が離れたため、壁際に蹴っ飛ばし、関節を極める。


「興昌さん、何事ですか!?」


騒動を聞きつけて、アルフレッドたちが鍵を開けて入ってくる。


「いや、こいつが襲ってきたから…」

「ああ…」


侵入者をランプで照らしたアルフレッドたちは、言葉にできないような複雑な表情をしていた。不思議に思った興昌が、自分が投げ飛ばして、今捕まえている侵入者の方に視線を落とす。


そこにいたのは、メイドだった。


自分の見たものが信じられなくて、興昌は一旦視線を上げる。そのまま入ってきた人たちを見ると、クリスは「帰る」と言って帰っていったし、シャーロットは頭を抱えている。アルフレッドの姿がないのは、アリスに報告にでも行ったのだろう。


「エリー、またですか?」

「…」


エリーと呼ばれたメイドは、シャーロットの質問に対して黙秘を貫く。また、ということは以前にもこういう事があったのだろうかと考えた興昌は、率直に確認することにした。


「被害者として、詳しい説明を要求しますが?」

「…これだけ見たら加害者よ」

「エリーは黙ってなさい」


シャーロットにそう言われ、エリーはそっぽを向く。


「この子はエリザベスと言いまして、私と同じように、この館でメイドをしております」

「それはわかるんだが、なぜ俺は襲われたのかな?」

「それは…、この子は殿下に対する忠誠心は高いのですが、その…度を越してまして。男性が近づくこうとすると、排除しようとするのです」


なるほど、病んでるわけだ。俺がアリスについた悪い虫に見えたのだろうと、興昌は納得する。ふと、新たな疑問が顔を出す。


「ということは、知ってるの?」

「はい」


聞きたいことは伝わったようで、短い言葉で返答が帰ってくる。


「さて」


興昌は、極めていた腕を離し、ベッドに腰かける。エリザベスは極められていた腕をさすりながら距離をとり、興昌をにらみつける。


「とりあえず、言っとく事がある」

「…」

「今回の事は見なかった事にしてやる。もうこんなことはするな」

「…」


反省する気があるのかと疑いたくなるほど態度を改めないエリザベスを見て、興昌は、こいつ少し懲らしめてやろう、と考えた。


「お前は、これが正しいことだと思っているようだがな」

「?」

「お前があいつに男を近づけないようにすると」

「…すると?」

「女だど気づかれて、余計寄ってくるようになるぞ」

「!」

「そうなったら大変だ。あの手この手で籠絡しようとしてくるぞ。最悪、あんなことやこんなことが…」

「つ、つまり…、今までやってきたことは…」

「無駄。むしろ逆効果」


エリザベスはかなりのショックを受けた様だが、一回ガツンと言っとかないと歯止めが利かなくなるとの判断で、一切の容赦ない言葉を興昌は投げつけた。


「…」

「…気絶、してますね」

「それ、引き取ってもらえる?」

「はい」

「夜が明けるまでまた寝る。ベッドは濡れてないから気にしなくていいよ。じゃ、そういう事で」

「分かりました。おやすみなさい」


シャーロットがエリザベスを引きずって部屋から出ていく。それを見送った興昌は、再び眠りにつくべく、ベッドに潜り込んだ。

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