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異世界にて天下を目指す  作者: 清水作朗
2章 流されて居候
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6話 忍び寄る変化

そろそろタイトル詐欺とか言われそうで怖いです。

展開の早さが安定しなくてすみません。

タイトル回収までもう少しかかります。

興昌がハイト達の家に居候してから、はや4年の歳月が流れた。4年の間に、興昌が始めた道具修理・販売の商売は軌道に乗り、安定した収入が入るようになっていた。始めは興昌が一人ですべてやっていたが、収入が増えてからは成長したハイトや、雇った従業員に修理や販売を任せるようになり、興昌自身は新製品の開発や経理を担当するようになった。必然的に空き時間が増えたため、書物をあさる時間に充ててしまっている。もっとも最近はあさる書物もなくなってしまったため、書物を探すという建前で、村の中をぶらついている時間の方が長くなってしまっている。


「興昌、おはよう」

「やあ、おはよう。作物はどんな感じ?」

「順調だよ。興昌に教えてもらってから、収穫量はうなぎのぼりだよ」

「なら良かった。頑張ってね」

「おうよ!」


興昌は空き時間を利用して、村の農家に農業の新しい方法を広めている。新しいといっても21世紀の我々にとっては当たり前の事柄だったが、この世界では革新的な方法だったらしく、初めて教えた時は疑っていたようだったが興昌が実際に検証して成果があると分かった途端、まるで別人のように興昌の話に耳を傾けるようになり、興昌としては複雑な気分になった。


「と言っても、そこまで極端なことは言って無いんだよね~」


興昌が教えた方法とは、マメ科の野菜と葉物の野菜を交互に育てる、同じ作物を続けて育てない、といった初歩的な輪作の方法であったが、もともとの効率が悪ったのか、これだけで目に見えて成果が上がっている。


「次はもう少し高度な技術試してみるかな。化学肥料は無理だから有機肥料の安定生産とか農業革命頃の輪作とか行けると思うんだけどな」


脳内シュミレーションを繰り広げる。いきなり喜んだり落ち込んだりしながら歩き回る光景は何ともシュールである。はたから見れば危ない人に見えなくもないが、これが4年間繰り返されており気に留める人はいない。


「さて、今日は何しようかな~」


いつもと変わらない一日が始まった。






森の中を走る一台の馬車。細かな意匠が施されたそれは、中に身分の高い人物が乗っていることを表していた。だが馬車は優雅さとは無縁なかなりの速度で走っている。御者台にまたがって手綱を握り、2頭の馬に指示を出すのは一人の男。腰に剣を帯びているため兵士であることはわかるが、その姿は鎧の類をまったく身に着けていないため身軽そのものである。その馬車を取り囲むように馬に乗った騎兵の集団がが追従する。こちらは身軽とはいえ皮鎧の類は身に着けている。その数は6。おそらくは馬車を護衛する部隊であろう。戦闘を走る隊長格と思われる兵士が声を上げる。


「お前ら!町までもう少しだ、気張れよ!」


応、という掛け声がちらほらと上がる。だがその声に力はなく、全体に疲労の色は濃い。長時間馬で駆けてきていることは目に見えて明らかだった。馬車の兵士は無言で手綱を握り続ける。疲労はこちらも同じだったが、目には一切の曇りがなく、力強い意志がこもっていた。そしてその眼は、進行方向の1点だけを見つめていた。


「早く…、早くしないと…」


兵士のつぶやきは馬車の車輪の音とともに、森の中へ吸い込まれていった。







だいぶ日も傾いてきたため、興昌は散策をやめて、帰路に就く。小屋に間借りしてから基本的に自炊していたが、ネリスさんが「たまにはご馳走してやる」という事らしく、時々家にお邪魔して夕食をいただいている。丁度今日がその日だった。興昌は小屋に明かりがなく、誰もいない事を確認してから母屋へと赴く。中に入るとすでにノースさん以外はそろっており、ネリスさんとレンが食事の用意をしていた。


「どうも。お邪魔します」

「いらっしゃい。もうすぐ出来るから、待ってておくれ」


ネリスさんにそう言われて、テーブルの空いている椅子に腰かける。右隣はハイトで向かいにセファーという席順だ。


「ノースさんの姿が見えないけど?」

「父さんならまだ牛舎にいると思うよ」

「セファー兄ちゃんとの勝負に負けて二人分の仕事やらされてるらしいからね」


何でも乾草の山をどちらが早く移動できるかの競争をしたらしい。セファーの方が若いし体力もあるんだから、ノースさんも無茶をしたもんだ。


「あなた、少しはお義父さんの顔を立ててあげれば?」

「…男には、譲れないものがあるんだ」


ちなみにセファーはこの4年の間で結婚した。相手は同じ村に住んでた人で、名前をジェシーさんという。優しくてきさくな人だ。今は身重のため、家事にはあまり参加していない。間もなくセファーも父親となるわけだ。…爆発しろとは思って無い。断じて!


「まったく、これだから男は…」

「本当にね」


そんなたわいない話をしているとノースさんが帰ってきて、食事の時間となる。食事のあいさつはノースさんの役割だ。


「いただきます」

「「「「「「いただきます」」」」」」


食事が終わり、女性陣は後片付けにかかる中、男性陣はそれぞれ別に動き始めた。ノースさんはセファーを牛舎に引っ張っていった。どうやら終わらないらしく、無理やりにでも手伝わせるのだろう。合掌。興昌とハイトは新しい道具の話し合いをすることになった。


「次はどうしようか?」

「案はあるんだが、強度に問題があってね。金属をつかえれば何とかなるんだが…」


食事の後の何気ない時間。興昌は心からリラックスしていた。だが世界は、興昌を必要としているらしかった。運命の歯車がかみ合いだしたことを、この時の興昌には知る由もなかった。

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