第九話
プロローグがやっと終わりました。
これよりリアルオンラインの本編が開始です。
もっちゃん「なんなのよこいつ!!!」
遠距離職の陣の中に入ってきた[Tutankhamen]を見、直ぐに肩に担いだ銃を展開するもっちゃんとオクトバ。
だが、展開から銃を打ち放つまでの間にすでに[Tutankhamen]は手前にいたオクトバの前に移動していた。
オクトバ「ちょ…はっや…」
呟いた瞬間[Tutankhamen]はオクトバの体を十字槍で切りつけた。
オクトバからは523と数字が出、HPバーが一気に残り1割となった。
それを目の当たりにしたオクトバは目を見開き、信じられないと言わんばかりの顔を浮かべた。
オクトバ「何だよこの火力!!おかしいだろ!!じゃあノエルのあれは─」
言いかけたオクトバを[Tutankhamen]はまたも切りつけ、トドメを差した。
オクトバからは601と数字が飛び出し、その瞬間に98の数字と共に[Tutankhamen]の十字槍が弾かれた。
もっちゃん「間にあわ…なかった…!」
もっちゃんがオクトバを助けるために攻撃によって槍を弾こうとしていたのだ。
[Tutankhamen]は直ぐにまた突進の構えをし、もっちゃんへと突撃する。
ノエルがやられていたのを見ていたもっちゃんは直ぐに横へと翔ぶが、[Tutankhamen]はもっちゃんを少し通り過ぎた所でピタリと止まり、十字槍を横にぶん回す。
槍故にリーチが長く、回避したもっちゃんを容赦なく切りつけた。
507の数字と、HPバーが残り2割へと一気に減っていく様子を見、涙を一雫零すも、もっちゃんはまた銃を構え、[Tutankhamen]に銃口を向ける。
だがその時には[Tutankhamen]は突撃の構えを取っていた。
そしてもっちゃんが引き金を引く前に[Tutankhamen]はもっちゃんを貫き、3981と数字を吐き出させ、殺した。
[Tutankhamen]が出現してからたったの3分。
死者は朝比奈、ノエル、NONO、オクトバ、もっちゃん、アレコスの6人。
騒ぎを聞いて途中から様子を見ていた魔法職のジャックキャットと舞戦、アルカヴィールは口を開けて呆然としていた。
それもそうだ。なぜなら朝比奈と蓮を除いて他全てのメンバーは世界でも上位の接続者達。フリーランスなのだ。
そのフリーランスがたかだか一体の敵にあっさりと殺されているのだ。
普通なら信じられない光景なのだ。
それに魔法職達の頭にはそれ以外で信じられないものがあった。
それは[Tutankhamen]の持つ武器だ。
このBHOには槍を持つモンスターはこれまで一度も存在していなかった。
それもそのはず、モンスターに槍を持たせられるのであればプレイヤーも持つことが出来る故だ。
BHOには剣以外の近接武器は存在しない。
つまりこの[Tutankhamen]は完全な新種モンスター。
[meatspider]と同じように彼らフリーランスでも知らないモンスターだ。
もしもこれが通常のモンスターと変わりなく、通常通りの攻略法が適用するならば[meatspider]の様に問題なく倒すことは可能だった。
防御力はかなり低いようだが、フリーランスのオクトバでも見切れない速さ、フリーランスのアレコスでも防ぎきれない程の攻撃力を持っているこの[Tutankhamen]は通常通りの攻略法は通用しない。
本来ならば綿密に作戦を練り、挑むべき敵だが、この[Tutankhamen]が出現したのは恐らく今回が初めて。
元から出てこないと思っていた故、作戦も無ければ[Sphinx]を倒したことで気が抜け、警戒も無かった。
アルカ「くっそぉ!!!」
直ぐにアルカヴィールは攻撃魔法を発動させる。
火属性魔法[ファイアボール]。攻撃力は少ないが速度とホーミング効果が付いている火球を飛ばす魔法。
アルカヴィールが放った[ファイアボール]は一直線に[Tutankhamen]へと向かっていく。
だがそれに気付いた[Tutankhamen]は槍をぶん回し、[ファイアボール]を弾き飛ばす。
小さな爆発と共に消え去った[ファイアボール]だが、その後ろにもう一つの[ファイアボール]が出現し、[Tutankhamen]に小さな爆発を伴い直撃し、203の数字を出した。
[ファイアボール]は数多く存在する火皿のスキルで恐らく一番最初に会得するスキルで、クールタイムがかなり少なく、連射が可能なスキルだ。
[ファイアボール]を食らった[Tutankhamen]はアルカヴィールにタゲを移したのか、アルカヴィールの方向に体を向け、あの突撃の構えを取る。
アルカヴィールはそれを見、直ぐに[オイルプール]を発動させる。
恐らく[オイルプール]の効果で突撃の速度を殺し、その隙に避けるもしくは攻撃するつもりなのだ。
だが[Tutankhamen]が突撃の攻撃を放つと、[オイルプール]の上を飛び越え、そのまま槍はアルカヴィールに突き刺さり、5456の数字を出し、アルカヴィールは倒れ、数字の羅列を出した。
[Tutankhamen]の突撃が終了し、着地した先は魔法職陣の中心。[Tutankhamen]の前にはジャックキャットと舞戦が立っていた。
[Tutankhamen]は二人のどちらかにタゲを移したのか、2人に向かって歩き始める。
舞戦「ひっ!?」
あっという間にフリーランス達が死んでいったことを目の当たりにした二人は恐怖に捕われていた。
戦いにおいて恐怖による硬直は一番注意しなければならない現象だ。
だがこの状況下では無理もない。
これまで一体のモンスターにフリーランスがこれほど死亡したケースは全く存在しなかった。
[Tutankhamen]のHPは残り4割を切っているが、攻撃をすればあの即死並の攻撃力を持つ突撃がくる。
それを避けたとしても攻撃範囲の大きい槍のぶん回しも来る。
どうあがいても死ぬことはかなりの確率だ。
ジャック「馬鹿…やめろ…来るな…!俺はまだ…死にたくない…死にたくない!!!」
あまりの恐怖にジャックキャットは未だ閉まっているボス部屋の出口に向かって走り出す。
それに対し[Tutankhamen]全く反応を見せない。タゲはどうやら舞戦に写っている様だ。
その舞戦は迫ってくる[Tutankhamen]をただ見ることしか出来なかった。
足はすくみ、口からはかすれた声しか出ていない。
[Tutankhamen]は舞戦まで2mまで迫り、槍を後ろに回して、ぶん回し攻撃の準備をする。
舞戦は目を瞑り、頭を抱えて縮こまった。
だが1秒、2秒と時間は経つが、攻撃は一向に来る気配がない。
恐る恐る舞戦は目を開けると、そこには蓮と、蓮に向かって突撃の構えをする[Tutankhamen]の姿があった。
蓮は呆然とノエルを貫き、少し離れた場所まで移動した[Tutankhamen]を眺めていた
突撃の終えた[Tutankhamen]にもっちゃんとオクトバが驚き、その隙にオクトバが攻撃され、倒れ込んでいた。
それを見た蓮はようやく目の前で起こっている事を正常に把握した。
[Sphinx]を倒した後、この[Tutankhamen]はpopした。
そして一番近くにいたNONOを音もなく殺し、次に近くにいた朝比奈を殺した。
それに怒りを覚え、突撃した蓮だが動揺のせいか[Tutankhamen]が攻撃モーションを取っていることに気づいていなかった。
[Tutankhamen]はモーション通り突撃の攻撃を放つが、アレコスがそれをガードし、反撃にスキル攻撃を放った。
スキルの攻撃を受けたにも拘わらず[Tutankhamen]は直ぐに武器をぶん回し、攻撃を放つ。
アレコスは後ろに居た蓮を確認し、自分が避けると蓮に攻撃が当たってしまうと判断したのか、避ける時間はあったにも関わらず、ガードを選択し、削りダメージにより死亡した。
そのまま[Tutankhamen]は一番近くにいた蓮にタゲを移したが、騒ぎを聞きつけたノエルが蓮を助けるように[Tutankhamen]に攻撃、タゲが蓮からノエルへと移動した。
その後直ぐに突進による攻撃によりノエルは一瞬で死亡した。
そして今、オクトバの次にもっちゃんにタゲが写っている。
今[Tutankhamen]は蓮にタゲをとっていない為何の問題も近づける。
蓮はすぐに[Tutankhamen]に向かって走り出した。
[Tutankhamen]のHPは残り少ない。アレコスの攻撃で4割も削れたのだから蓮のスキル攻撃でも十分に倒せるはずだ。
[Tutankhamen]への距離は少し遠く、走り出した時点でもっちゃんは死に、アルカヴィールが攻撃を放っていた。
だがそれも虚しく、アルカヴィールは攻撃を受け倒れこんでいた。
[Tutankhamen]が舞戦に近づいていく。
蓮はもう少しで攻撃が届く範囲と予測し、覚えている中で一番威力が高いスキル[ヒット]を発動させる。
そして、[Tutankhamen]が舞戦に攻撃を放とうとしている所で蓮は[Tutankhamen]に[ヒット]打ち込んだ。
427の数字が飛びだし、[Tutankhamen]のHPは残り2割まで減った。
[Tutankhamen]は攻撃を受け、ぶん回しの攻撃を中断し、蓮に向かって直ぐに突撃の構えを取った。
蓮はそれを見た瞬間、直ぐに[シンク]を発動させた。
[シンク]を発動させ、切りつけるとその切った軌道をなぞるように斬撃が出現し、[Tutankhamen]へと高速で向かっていった。
未だ構えを取っていた[Tutankhamen]に[シンク]は直撃、313と数字を出したが。HPがミリ単位で残ってしまった。
[Tutankhamen]の突撃の攻撃はもうすぐに来る。
蓮はどうするか考えるが、状況が状況なだけに全く頭が回らない。
そうしているうちに[Tutankhamen]は突撃モーションを取り終え、突撃の攻撃を放つ。
凄ましいスピードで迫ってくる[Tutankhamen]。
蓮はそれに向けてすぐに剣先を[Tutankhamen」に向け、踏ん張るように構えた。
すると[Tutankhamen]はその剣先に吸い込まれるようにして突撃し、速度も重なり756と数字を吐き出し、蓮を透け通りながら溶け弾けた。
しばらく静寂が辺りを包み込んだ後、ボス部屋の出入り口が重々しい音とともに開き、蓮の視界でレベルアップ表示が出現した。
蓮は手に持っていた[unknown]を落とし、呆然と天井を見つめた。
蓮が見つめていた天井に、突如一筋の光が差したかと思うと、その光は広がっていき、最後には蓮達が住んでいる街の姿が出現した。
街の中心部に立つビルの屋上に3人と7体の死体が合った。
その様子を呆然と見つめていた3人はシナリオダンジョン、ピラミッドを攻略した事を把握した。
進行率100% 死者:ノエル、pinkrabbit、NONO、アレコス、アルカヴィール、もっちゃん、オクトバ、合計7人。
フリーランスの大量な減少を確認。
フリーランス補填としてRein、朝倉蓮のレベル、身体能力、判断能力からフリーランスに適すると判断。
よってRein、朝倉蓮をフリーランスに任命す。
朝倉蓮がピラミッドを攻略してから約1時間後。
日本から遠く離れた砂漠のある一帯にて巨大な出現フィールドの発生を確認。
近くにいた接続者を直ぐに向かわせたが、向かった接続者から報告が入る。
「今まで発生しなかった。するはずの無かった[街]が出現しています。クエストを確認してもクリア条件が出ず、このままロストグラウンドになるのを待つしかないかと思われます。一応こちらで探索をしておきます。」
だが、その3日後。
その街はロストグラウンドにはならずに健在。
この街の出現による被害者は居らず、その街ではゲーム内で使うことが出来る回復薬なども売っているとの報告が合った。
街の第一発見接続者の報告によればこの街はゲーム内で最初の街、[プリドス]と全く同じとのこと。
よって、この出現した街を[プリドス]と名付け、全世界に配布している回復薬の第二補給場所とする。
また、ゲーム内での移動用アイテム、ワープクリスタルを発現フィールド内で使用し、この町に転移することがなんと可能なことが判明。
一般接続者はワープクリスタルを近くに居るフリーランスに提供すること、ワープクリスタルを一つに付き一般接続者には報酬が配布される。
フリーランス諸君は9月1日に[プリドス]に集合し、シナリオダンジョン[ピラミッド]にて新種モンスター出現、および[槍]を持ったモンスターの出現についての会議を開催する。
次回からはそれぞれに題名が付きます。